私の数学のジャイアンは本名を跡部景吾というそうな。
いつも一緒にいる2年生の樺地くんは分かるけど。
跡部くんの名前を知る4日前くらいに榊先生の所にいったら、樺地くんがいて『ジャイアンといつも一緒にいる子だ』ってなって、色々お話ししたし。すごく良い子だったなあ。
「あんたバカぁ?」
「アスカ!」
「正解……って違うわよ」
クールビューティーな友人がノリツッコミしてくれた。
エヴァネタになるとテンション上がっちゃうのね。
「あんた、跡部景吾を氷帝学園で知らない人なんていないわよ。氷帝生ですらないわ」
「もしかして私山吹中?いや不動峰中かも……」
「なぜそうなる」
「獅子楽中?」
「知らない中学校を出すのはやめて」
山吹と不動峰は東京だからともかく、獅子楽は熊本だ。東京生まれ東京育ちの友人は流石に知らなかった。反省反省。
「それで?跡部くんってそんなにすごいの?」
「自分の学校の生徒会長じゃないの」
「まじかよ。じゃあこの前逃げ込んだの生徒会室だったってこと?」
「そういうこと。……なまえって、最近テニス部と仲良いわね」
友人は手元のアニメ雑誌を捲りながら言う。大体、私が遊びに来た(というか美術の絵を手伝ってもらうためだけど)のに、こうマイペースに18禁同人誌を読むのはすごいと思う。肝が据わっているよ。
「テニス部?男子テニス部なんて200人くらいいるじゃん。一人や二人知り合いがいたっておかしくないよ」
「あんたの場合全員人気のレギュラーばっかりなのよ」
「……じゃあチョタくんもがっくんも宍戸くんもジローくんも跡部くんも樺地くんも忍足くんも日吉くんもレギュラーなの?」
「そう……ん?」
友人が怪訝そうに私をアニメ雑誌から目を離して私を見る。何か変なこと言ったかしら?
「岳人はともかく……今までに出てない奴の名前があったわ」
「そう?」
「まあいいけど……それより手を動かしなさい」
「あ、ごめんごめん」
そろそろ目の前の絵に集中せねばなるまい。
鉛筆を握った瞬間スマホが鳴った。
ちゃっちゃちゃーん♪ちゃちゃちゃちゃっちゃちゃーん♪
「良い加減その軍歌みたいな着メロやめなよ」
「いいじゃん、ウルト○マンA。今だっ!変身!北斗とみーなーみ〜」
「はいはい」
スマホのメールを見ると、ただの迷惑メールだった。
……迷惑メールは先日から、全て忍足くんに転送することにしている。だってこの前教えたメアド勝手に悪用してそう(イメージ)。
迷惑メールを忍足くんに転送して、また絵に向かったとき。
タ○ウ!ウル○ラマンNo.6!
「もうしつこいなぁ!」
「あんたのしつこいウルト○マン推しは何なのよ。ちょっとアイス取ってくる」
次は電話だ。
画面にはでかでかと「がっくん」と表示されている。
「あれ、がっくん」
ムーンサルトボーイがっくんは、このお家の友人の幼馴染…ご近所さんである。友人を介して、去年ごろ私も仲良くなった同級生。因みにやっぱり名前を覚えられなくて当初ブチャラティと呼んでた。
「もしもし」
『くそくそ!おいなまえ!てめー、変なメール送りつけてきやがって!』
「変なメール?」
『とぼけるな!《件名:夜寂しい貴方に…はぁと》って何だよ!開いたらただの迷惑メールじゃん!』
「堀北○希似の40代がお待ちしてます」
『内容言うな!ぞっとする!』
忍足くんに送ったはずが、がっくんに送ってしまったらしい。
『くそくそ!絶対許さねえ!』
「ごめんごめん」
「ちょっと、なまえ。何騒いでるの?」
『ん?今声がした?』
「そんなわけないじゃん」
『いや、ぜってーした!あいつの家にいるのか!?』
「だからいないっ……切れた」
……がっくんは人の話を聞かない。
「がっくんだよ。全然人の話聞かないんだけど」
「人のこと言えないよ。寧ろあんたの方がひどい」
「えー」
2016.08.27修正
長かったので無理やり切りました。
友人に名前変換を入れるか悩む。
後編すぐあがります。
樺地はボトルシップ作りが趣味なんだよね。めっちゃ楽しいよね!
赤城を作ったことがありますが、何分不器用なので時間と労力がかかりました。
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