☆大人日吉くんと温泉旅行
「若くん卓球強すぎだよ、全然勝てなかった…」
「俺一応テニス部でしたからね」
「跡部くんの後継者だもんね…お見逸れしました」
「あとなまえさんは弱すぎ」
卓球やりたいとか言って俺を引っ張っていったくせに、この女はサーブすらままならずあっという間に試合が終了した。何とか人並みよりちょっと下くらいになったのは、なまえさんよりも俺の指導のおかげと褒めたい。
「疲れたー。お布団ダイブしたいー」
「もう敷いてあるんじゃないか?」
「お布団よ!またせたな!私だ!」
部屋の襖を勢い良く開けたなまえさんは、そのまま宣言通り布団にダイブする。
そこで俺は初めて気付いた。
「…何で布団が1組しか出てない」
「そういえばそうだね」
忘れていたのか?いやまさかな。
わざとなのか?いやわざとだろ。変な気を利かせるなとか何でこんなことするのかとフロントに行って小一時間ほど問い詰めたい。俺は何の疑問も持たず『この布団は自分の分です』と言わんばかりに布団の上で足をバタつかせているなまえさんにも文句を言いたい…って枕元にティッシュ箱だと?ふざけるな、確信犯か。
「ねー若くん」
「何ですか!?俺は今からフロントに」
「お布団もう1つ出すのめんどいから、一緒でいいよね?」
「は?」
枕を抱いてアンニュイな表情をしているなまえさんはこういう時に限って色気がある。いつもは一欠片も出さないくせにこの女は本当に…!
「それ…俺に何されても良いってことですよね?」
「…はっ!違う!いや、違くないけど!別にそういう意味でいったわけじゃあないんですよ!マジで!」
近付いて来る俺に温泉から上がったばかりのような真っ赤な顔しながら、見られないように枕を押し付けてくる。
「その割には期待してるみたいな顔だけど」
「期待してるわけじゃない!かもしれないわけじゃない…かも…」
「へぇ」
「…」
なまえさんは実は押しに滅法弱い。そのまま押し倒すと、『うへぇ』なんて情けない声を出す。でもそれも可愛いから許す。
「なまえ」
「うわっそういうの本当ずるいよ若くん」
「強引でずるいのが好きだろ?」
「そういうの好きっていうか……いいや、やめとこ」
「最後まで言ってくださいよ」
「恥ずかしいから絶対言わない」
「言っても言わなくても俺のしたいことはするから変わらない」
「ほら!結局変わらないじゃん!」
「だったら別に言っても構わないだろ?」
なまえさんは目を泳がせて色々考えて、最後に腹を決めたらしい。それでもギリギリ聞こえるくらいのか細い声で言った。
「…強引でずるいのが好きなんじゃなくて若くんが好きです…」
「…」
「ああめっちゃ恥ずかしいバカだ私…」
「今日寝かしませんから」
「ぎゃあああ変な方に傾いた!」
ぎゃあぎゃあ色気もなく喚き散らしているがそれもチャラになるぐらい今の発言は可愛かった。寧ろお釣りも来る。
「今20時だよ!」
「関係ない」
「関係あるよ!
あ、そういえば今日20時から心霊番組が」
「それを早く言え!」
「あっさり…」
何だかんだお預けにされたのが残念な私は結構若くんに毒されてるな……。
若くんはリモコンを取るとすぐに心霊番組のテレビ局を探し当てる。私のことはどうしてくれるんだぁ!
「なまえさん、こっち」
「あ、うん…」
若くんに手を引かれて、すっかり若くんの腕に収まった。若くんの興味は完全に心霊番組に移っている。だから私のことは無視か!
「…」
「えらく不満そうですね」
「当たり前じゃん」
「まあ後でするけど」
耳元で囁かれて、お腹の底と背中からぞくぞくしてしまう。目の前に心霊動画が写っているのに全然頭に入ってこない。
「若くんのバカ!心霊番組集中できなくなるじゃん!怖くなくなるじゃん!」
「アンタもともと怖くないでしょ」
2016.05.03
唐突に始まり唐突に終わる。
日吉くんは敬語とタメ口を使い分けて欲しい。私の妄想が全開だぁ
書いたときサティ主だった気がする。
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