私はせっせと歯磨きされている。
だが母親が年端もいかない子どもを膝にのせてしているそれとは随分かけ離れている。
歯磨きのくせして過激な性行為みたいだ。
私は苦しくて、でも迫ってくる甘い快楽に耐えられなくて、のたうち咳き込み苦しむ。
やがて口から歯ブラシが抜き取られれば、とめどなく白い泡が溢れ出す。頭も真っ白に塗り替えられる。それはまるっきり性感的な気だるさと一緒。
つーか何で歯磨きでイッちゃってんの私。
私を離した手は殊の外満足そうに私の口元の泡を拭った。
そこで手の主が自分の恋人だと知った。いつもそうするから。
性行為みたい、じゃない。
本当に性行為だった。
「…どうやら変態性癖が開花したようだ」
起きたら白い天井だった。
その驚きの白さといったら夢で出てきた白い泡のようだ。突然の変態性癖の方が驚きだけ
ども。
「…何じゃもう目覚めたんか…」
隣でピッタリくっついて寝ていた仁王がそう言った。目は開いていないし、もうちょっと寝るつもりなのだろう。
「うん。私の中の何かも目覚めた」
「…俺もうちょっと寝る」
ほらやっぱりね。
また寝息をたてはじめた仁王をそのままにしてベッドを出る。
適当に放置してた服を着て、洗面台に向かう。
口の中が…こう気持ち悪い。
早く歯磨きしたかった。
洗面台にはいつも私と仁王の歯ブラシが2本分。仁王がブルーで私がピンク。あとスペアミントの歯磨き粉。
歯磨き粉をチューブから出して丹念に磨く。
夢…悪夢の中とは大違いで、ただの日常的な行為だ。ちょっと激しく磨いたりしてみるけど、別に感じたりしないし…ましてやイッちゃったりしないし。
あの夢は何だったんだろうと考えながら、目を落とすと、コップに立てられた歯ブラシが目に入った。
仁王のブルーの歯ブラシ。
そういえば、夢の中で出てきた歯ブラシって仁王のだったっけ。
口の中を蹂躙しつづけたアレ。
手の動きが止まって口の端から泡が伝い、
落ちた。
ぞわり、と際限無い欲望が押し寄せる。
歯磨き欲?
うがいをして、私は歯ブラシを持ってそのまま仁王の元に戻った。
まだ寝ている仁王に跨って、声をかける。
「仁王おはよう」
「なまえ…跨って何しとるんじゃ…」
「仁王に歯磨きしてやろうと思って」
「後で自分で…!?」
仁王の言葉を遮るように歯ブラシを口の中に突っ込んでやった。
いつもはお澄まし顔の仁王も流石にこれにはびっくりしたらしい。
激しく奥歯を磨くと泡立つ。白い泡が。
「…んがっ、げほっ」
咳き込んで私の腕を掴む仁王。寝起きだからそんなに力は強くない。
仁王を組み伏せて、言葉は悪いが犯してるみたいで…背中の毛が逆立って、喉が渇く位に、昨日の夜を思い出す位に興奮してる。
仁王が窒息しない程度にピンクの歯ブラシを抜き取ると、仁王が咳き込んで私を睨み付けてきた。
白い泡が口から溢れ出している。
「…っ…は…なまえ…突然何じゃ…」
「変態性癖に目覚めてしまった」
「突然すぎるぜよ」
「俺のスペアミント美味いじゃろ?」
「あぁ…お前さん。それ変態性癖じゃのーて」
復讐じゃ。
私は呆れ顔の仁王を見て初めて満足した。
2014.09.25
まあ…お察し下さい。
私は戦国BSRの三成くんに歯磨きしてる夢を見ました。いま思えば男性的な欲望を吐き出してたんだろうな、と。うわ私変態性癖。
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