ああ、確かに私の完敗でございますよ。
容姿からして向こうに軍配が上がりますね。
沈魚落雁、羞月閉花の美人ですよ。
そりゃ私みたいな可もなく不可もない見た目の(ブサイクとは認めたくないものだな)人間には勝ち目はないでしょうよ。
だからこそ戦略的に行こうとしたんです。小細工大細工、何だってしようとしたよ?でもね、結局ダメだった。何で?理由は簡単。私が思いとどまっちゃったから。
そこまで考えたら根本的な問題に気付きました。
大体、私たち似すぎてません?
何してもくっ付かないじゃん。
「そういうわけで失恋しましたよ、貴方のお友達に」
「謙也に告白したん?」
渦中の人物の親友もとい白石をひと気のない空き教室に呼び出した。
こうなると簡易懺悔室みたいだ。やってるのは懺悔のような見た目だけでも綺麗に整えたものじゃない。
見た目も醜悪、中身もだいぶ腐ってると思う。
「してない」
「してないのに何で諦めるん?」
「だって…謙也、隣のクラスの沢木さんと付き合ってるって言ってた」
「おん。そうやな」
「知ってるなら聞くな!このイケメン野郎!」
「褒めてくれておおきに」
…キラキラオーラの絶えない懺悔室なんてあってたまるか。
謙也が私が知らない女の子と付き合ってることがとにかく悔しいせいか、ここまで来ると関係ない白石にも腹が立ってくる。
くそ、なんでコイツはイケメンなんだ!
なんで謙也にもっと早く告白できなかったんだ!振られてればこんなに悔しい思いは薄らいだかもしれないのに。
「んな泣かんでもええやん」
「私が男だったらこんな時女の子に泣かせてやってるよ」
「せやな。なまえが言うんだったら謙也はそうしたやろーな」
「…」
白石は私の頭をくしゃくしゃと撫でた。
何が言いたいこの男。
しかし、ギロリと睨みつけたつもりが、視線がかち合ってしまってすぐに逸らしてしまった。
「なまえと謙也ってなーんか似とるんよなぁ」
「…」
「いつもボケとツッコミのタイミング一緒やし」
「…」
「ジャンケン絶対あいこになるよな。決着ついたとこなんて見たことあらへんで」
「…」
「相性抜群やと思ってたんやけど…」
「みなまで言うな!言ったら小春ちゃんに言いつけるぞ」
「謙也のこと言いつけたらどうや?」
ぐっ、と結局押し黙るを得ず。
相談する相手を間違えたかもしれない。
私の話を黙って聞いてくれる銀さんや千歳にすれば良かった。今更、答えなんて決まってるのだから。
相性抜群だと思ってたけど、
そうでもなかったんだ…ってさ。
「…白石いちいちすばずば言い過ぎなんだよ。私と謙也に相違点はないのか」
「女の子ってとこと謙也より足遅いってとこやな。あと謙也よりかは冷静かもしれへんな。でもどんぐりの背比べには変わりあらへん」
「なにそれ」
「似とる者同士て、思うてたよりうまくはいかへんな」
「おい、さっき言うなって言ったじゃん!何で言うのさ!」
白石が聖書だと?どこの誰が付けたかは知らんがこいつただの悪魔だろ!
いよいよ声を上げて泣きそうになってたら、「あっ」と態とらしく白石が声を漏らした。
「あるで。まだ相違点が」
「その結果次第では白石の電話番号及びアドレスを女子生徒に流すのを保留してやる」
「それはあかん…。まあ、そんなのさせへんで。
なまえの方が謙也よりモテる!どうや」
「…流す」
「ちょい待ち!」
もう涙も枯れたよ。苦し紛れすぎて、最早苦笑しか出ない。
「謙也は人良し顔良しなの!モテるよ!逆!私より謙也の方が数倍モテてる!」
「俺はお前が本気で好きやから数的にもお前の方が上やって」
「全力で呪うぞ白石…ん?」
聞き間違い、というわけではないらしい。
意識した時には白石の顔がえらく近かった。
…こいつ、どさくさに紛れてとんでもないこと言った。
「じょ、冗談は…」
「冗談やのーて本気やって」
白石はいつになくかっこよく見えた。これじゃあ私なんて浮気性みたいじゃないか。
現金だな、自分は。
「なまえは自分を責めんでええで。俺が弱目を狙って言うとるだけや。意識してもらいたいから」
「それ自分で言う?」
だって勝ったモン勝ちやからな。
白石は徹底してる。
「俺は謙也とちゃうで」
「そ…それは知ってる!」
「せやろ?ならうまくいくかもしれへんで」
俺となら、と付け加えた白石は、夕日の中で綺麗に微笑んでた。
でも、ふと謙也の顔が思い浮かぶ。
「なまえ!」って呼ぶ幻聴まで聞こえる始末。
なんだ、私。こんなに謙也のことが好きなんじゃない。
「なまえ…好きやで。俺と付き合うてくれん?」
謙也は断れない性格だから、白石みたいにしてれば良かった。
つまるところ、
答えは見透かされていたのだ。
2014.07.11修正
いつかちょっとしたシリーズに昇格するかもしれないものの一つ。
主人公の行動は一択かな。
BGM: NICO Touches the Walls「N極とN極」
追記
結局白石と謙也のどっち取ったの?との質問がありましたので解説的なものを作りました。
解釈は人それぞれですので、読まなくても全く構いません。
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