ちびたか! クリスマス


静かな寝息が聞こえ始めた深夜。

高尾は宮地さんが寝ているのを確認すると、布団から這い出ます。

暖房を点けていても少し寒い部屋に高尾は身震いを一つすると、自分の布団の中から宮地さんのくるぶしソックスを取り出しました。

数日前洗濯から返ってきた宮地さんの靴下の中から、くるぶしソックスの片方だけを盗み、ずっとバレないよう布団の中に隠しておいたのです。

その靴下を高尾はずるずると引き摺りながら、宮地さんを起こさないようベッドに侵入します。

高尾はなんだか泥棒になったようで楽しくなってきました。

しかしここで笑ってしまえば宮地さんが起きてしまいます。

高尾は口許だけで笑いながら、宮地さんの枕に登りました。

「(俺がプレゼントー……なんてな)」

高尾は枕にくるぶしソックスをおくと、その中に潜り込みます。

本当はクリスマスに用意する、あの定番である形の靴下の中に入りたかったのですが、あの靴下を宮地さんが持っているわけがありません。

なので高尾は仕方なくくるぶしソックスの中で朝を待つことにしました。

くるぶしの中は思ったより暖かく、高尾は目を瞑ると直ぐに寝息をたて始めます。

高尾が本格的に寝始めた頃、実は起きていた宮地さんが、そっと起き上がりました。

「(……可愛いことしてくれちゃって)」

宮地さんは隣で寝ている高尾を見て頭をガシガシと掻くと、ベッドと壁の間に手を入れ、一つの袋を取り出します。

高尾がいつも寒い寒いとぶるぶる震えているのを見て、宮地さんは高尾の為にマフラーを編んだのです。

マフラー編みの師匠大坪さんに教えて貰いながら、何日も前から高尾に内緒でマフラーを少しずつ編んできました。

毛糸を買う恥ずかしさも、慣れない作業で目が痛くなっても、高尾が喜んでくれるならばと、宮地さんは高尾サイズに毛糸を編みます。

決して大きいマフラーではないですが、今までこんな事をした事が無かった宮地さんにとって、一本の毛糸からマフラーを編む事は容易いことではありませんでした。

しかし、実はイベント事が嫌いじゃない宮地さんは、何度も解いたり編んだりを繰り返して、何とかクリスマス前にマフラーを編み終えたのです。

朝高尾が起きて、ゲラゲラと腹を抱えながら似合わねー! と笑われるの覚悟で、宮地さんは高尾の側にマフラーが入っている袋を置きました。

そしてもう一度ベッドに潜り込むと、高尾が寒くないように布団を引っ張り上げ、くるぶしソックスの上からかけてあげます。

高尾が笑いながらも、マフラーを毎日つけてくれる姿を想像して、宮地さんも眠りにつきました。





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