ちびたか! 6


「高尾、ちょっとこい」

紙の上を歩いて必死にジャ〇プを読んでいた高尾に、宮地さんは声をかけました。

丁度内容が盛り上がってきた所で呼ばれた高尾は、後ろ髪を引かれながらも宮地さんの元へ走ります。

「なんすかー?」

若干返事がおざなりになりながらも、ちゃんと自分の所へきた高尾に、宮地さんは満足そうに笑いました。

「バンザーイ」

そんな高尾の前に千切ったハンカチを見せると、宮地さんは高尾を着替えさせようと、子供に対する口調で言います。

その口調は気にせず、宮地さんの言うとおりにバンザイをした高尾は、着ていたティッシュを乱暴に脱がされてしまいました。

「キャー! 宮地さんのエッチ!」

「黙れ。潰すぞ」

手の平で恥ずかしい所を隠しながら、高尾は楽しそうに冗談を言います。

そんな高尾に馴れっこな宮地さんは、口では物騒な事を言いながらも、気にせずハンカチを高尾に巻き付けました。

「わーお! 俺初めてティッシュ以外着ましたよ」

「ま、こんなもんだろ」

ハンカチを巻き付け終わった宮地さんは最後に紐を腰に巻き付け、満足そうに高尾を見ました。

「で? なんすかこれ」

部屋にある全身鏡を見ながら、高尾は頭にクエスチョンマークを浮かべます。

「は? どうみても浴衣だろ」

相当自信があるのか、宮地さんは意味が分からないという口調で高尾の質問に答えました。

「あ、あー……なるほどー」

高尾は若干引きつりながらも、宮地さんが自分の事を考えてしてくれた事に、素直に嬉しいと思いました。

「んじゃ行くか」

宮地さんは浴衣を着た高尾を持ち上げると手の平に乗せ、高尾をどこに乗せるか考えます。

「宮地さんは甚平なんすね」

宮地さんが悩んでいる間に、ずっと気付いていながらなかなか言えなかった事を高尾は口にしました。

「まーなー楽だし」

宮地さんは考えた末、甚平のあわせに高尾を入れると、ゆっくりと立ち上がります。

宮地さんが甚平を着ていた時に高尾は気付いていましたが、どうやら夏祭りに連れて行ってくれるみたいです。

夏休みに入ったといっても、毎日宮地さんは部活があるため、高尾と一緒にはいられません。

高尾は寂しさを言葉や態度に決して出してはいなかったのですが、宮地さんにはバレバレだったみたいです。

「宮地さーん、俺わたあめとリンゴ飴とかき氷とたこやきと……――」

「お前自分のサイズ考えてから言えよ」

高尾は宮地さんの気遣いが嬉しく、いつの間にか上がったテンションを抑える事なく、宮地さんに話しかけました。

宮地さんも心なしテンションが高いのか、いつもより声のトーンが上がり気味です。

そんな宮地さんを高尾は見上げ、そして宮地さんも高尾を見ました。

「迷子になんなよ」

お互い目が合い笑い合います。

「迷子になったら探してくださいね」

宮地さんと高尾は笑いながら夏祭りへと向かいました。




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