ちびたか! 4「…………」
「宮地さーん!」
高尾がテーブルでテレビを観ていると、後ろで宮地さんがゴソゴソと何かを作っていました。
「何作ってるんすかー?」
先程から細いワイヤーにティッシュを巻き付けては捨てるを繰り返している宮地さんを見て、高尾は聞きます。
「………………」
高尾が聞いても、宮地さんは真剣なのか返事をしません。
高尾は仕方なく愛用のスーパーボールを取り出すと、テーブルの上でドリブルの練習をしました。
「高尾、大人しくしてろ」
スーパーボールの小さな振動でも手先がぶれるのか、宮地さんは何時もより少し低めの声でピシャリと言い放ちました。
「……はーい」
高尾は初めて聞いた宮地さんの声にビビると、スーパーボールを置いて大人しく宮地さんを見つめます。
「でーきた」
漸く完成したのか、宮地さんは首を鳴らして、少し肩を揉みました。
「ちょっとこっち来い」
宮地さんは高尾を自分の傍へ呼びます。
高尾はトテトテと宮地さんに近付くと、宮地さんの言葉を待ちました。
「ほら」
宮地さんは高尾が傍へ来ると、高尾の頭に何かを乗せます。
「お前、前髪邪魔そうにしてただろ」
「……え?」
高尾はわけが分からず、自分の頭に乗っているものを手で確認しました。
「もしかして……カチューシャ的な?」
「不器用で悪かったな。潰すぞ」
宮地さんは高尾から目を逸らしてしまいます。
宮地さんは小さくなった高尾の為に、カチューシャを作ってあげていました。
ワイヤーとティッシュで作られたカチューシャ擬きは、見ただけではカチューシャとは思えません。
それでも高尾は、宮地さんが自分の為に作ってくれた事が嬉しく、何度もカチューシャを撫でました。
「俺、ちょー嬉しいです」
高尾が本当に嬉しそうに言ったので、宮地さんもほっとしました。
「(しっかし何で俺の装備ティッシュばっか……)」
高尾はそう思いましたが、口には出しませんでした。
高尾はカチューシャをそっと外すと、枕の横に置きます。
明日からティッシュカチューシャも仲間入りです。
高尾は緩む頬をそのままに、宮地さんにダイブしました。