ちびたか! 1今日は高尾がどうしても! と言うので、宮地さんは部活に高尾を連れてきました。
いつもは宮地さんのエナメルでお留守番なのですが、今日は宮地さんと一緒です。
高尾は宮地さんのタオルの隙間から顔を覗かせて、部活を見学しました。
「…………」
そんなに日は経っていないというのに、高尾はこの体育館を見て、懐かしい気がしました。
暑苦しい熱気、ボールが弾む音、緑間のスッキリとするシュートの音……。
全て懐かしい感じがします。
「バスケしてーなー……」
高尾は少し寂しそうに呟きました。
家に帰ってもバスケの事が頭を離れず、高尾は大人しく観たくもないテレビを観ていました。
「……高尾?」
珍しく大人しい高尾に、宮地さんは具合でも悪いのかと思い声をかけます。
「……ん? あ、なんすか?」
少し間があいてから、高尾は返事をしました。
「ちょっと待ってろ」
宮地さんはじっ……と高尾の顔を見てから、ごそごそと机の引き出しを漁り始めます。
高尾はその様子を大人しく見守っていました。
「……ほら」
宮地さんは目的の物が見つかったのか、高尾に両手を出すよう促します。
高尾が慌てて両手を出すと、宮地さんはその上にキラキラした物を置きました。
「スーパーボール?」
高尾は無駄にキラキラとしているスーパーボールを見て、きょとんとします。
「ほら、バスケやんぞ」
宮地さんはそう言うと、人差し指でスーパーボールをつき始めました。
「……宮地さん」
高尾は無意識に宮地さんの名前を呼ぶと、パッと笑顔になります。
「今度ゴール作って下さいね〜」
「調子乗んな。潰すぞ」
いつもの高尾に戻り、宮地さんはほっとします。
こうして宮地さんの人差し指相手に、高尾は一生懸命スーパーボールを追い掛けました。