ちびたか!7「宮地さーん!」
夏も近付き、梅雨に入った今日この頃。
スクールバッグの外ポケットに入り、宮地さんと登校していた高尾が顔を出しました。
「あー?」
雨は降っていないものの、湿度が高いせいかいつもよりクリクリしている髪の毛を気にしながら、宮地さんは高尾に返事をします。
「なんでベストなんすかー?」
学ランもカーディガンもいらない季節に入り、宮地さんは長袖のシャツにベストという格好に最近衣替えしました。
「ベスト男子って珍しくないですか?」
長袖シャツ一枚か、中にTシャツを着る男子が多い秀徳高校で、宮地さんはラインの入った白のベストを着て登校です。
ただでさえ目立つ外見をしているのに、更に目立とうとしている宮地さんに、高尾は頭上に疑問符を浮かべながら質問しました。
「Tシャツ乾いてなかったんだよ」
宮地さんによると、部活で着るTシャツを確保したら着れるTシャツがなかったそうです。
最近雨の日が続いたため大量のTシャツはまだ乾いていなく、宮地さんは梅雨があけるまでベスト男子になると決めたみたいです。
「えー? あるじゃないですかTシャツ!」
バッグから顔を出したままの高尾はにやっと口角をあげます。
「まみみのTシャツが!!」
高尾は宮地さんがアイドルTシャツをクローゼットの中に隠し持っている事を知っていました。
宮地さんはその名前を耳にした途端、高尾を握り潰す勢いで持ち上げます。
「ははー、お前バカじゃねぇの? あれは見て楽しむもんだろ」
ギリギリと握り潰され、高尾は苦しさから身を捩ろうとしましたが、宮地さんの眼力が凄まじく大人しく握られる事にしました。
「ははは……そうっすよね」
「つかシャツからアイドルTシャツ透けてたら俺もう学校来れねーだろ!」
高尾が大人しくなったからか宮地さんは手の力を少し抜くと、高尾に言い放ちます。
「…………ぷっ!」
アイドルTシャツが透けている宮地さんを想像してしまい、高尾はついに吹き出してしまいました。
「お前ぜってー捨てる! まじ捨てる!」
再び力を込め始めた宮地さんの手を、高尾は笑いながらぺろっと舐めます。
「!? なんだよ」
「いやー、俺宮地さんのベスト姿かなり好きです」
前触れなく言われた高尾の言葉に、宮地さんは気温のせいではなく、体温が上がったような気がしました。