それぞれのファーストキス-白雲朧の場合-

 放課後、白雲と近所の公園で、ブランコを漕ぎながらアイスを食べる。これは白雲曰く、青春の醍醐味の放課後制服デートというやつらしい。他愛無い話をしながら齧るアイスの、なんて甘い。
「あ! やば! そろそろ、帰らなきゃ」
 今日、晩ご飯作るの頼まれてたんだった、と突然思い出して、ブランコから飛び降りる。ガチャンと派手に鳴くチェーンが、二つ輪唱する。
 まだ夕日にもなっていないけど、帰らなくては。買い物のメモが確かカバンに……。
 芝生に放り投げていたカバンを拾いにしゃがみ込むと、私を大きな影が覆った。
「なー、あのさ、帰る前に一個お願いが……」
「え?」
 ソワソワと頬をかきながら、不自然にキョロキョロして、長身の男がずいぶんと愛らしい挙動をするミスマッチにキュンとする。
「いやその、なんて言うかさぁ、俺らって、付き合ってもう1か月すぎただろ?」
「そうだね」
「だからそのー、つまり、俺、お前と、」
「あー、うん」
 言いたい事はなんとなく察した。トクンと脈が振れて、その、青い空と瞳を見上げる。
「お、大人の階段登りたいんだけどぉ」
「ぶっ」
「な、何でそこで笑うんだよ!」
「大人の階段って」
「いや、だからさぁ、き、き」
「キスしたいの?」
「みなまでいうなぁ!」
 言おうとしてたじゃん、とかはもう、爆笑に呑まれて言葉にならない。赤くなって焦ってる白雲と、ヒィヒィ泣き笑う私の、コントラストが夏らしい。
「はぁー。ふふ、は、初めてだから、よく分かんないけど、いいよ」
 笑いすぎの私に、ついにむっとしていた白雲は、ひまわりみたいな笑顔に切り替わって、私と同じ高さにしゃがみ込んだ。
「俺もなので、では、交換ということで」
「こ、交換って!」
 また爆笑し始めた私に、笑うなぁ、と両手で頬を挟み込まれる。
 バランスを崩して芝生に転がった私に白い雲がかかる。
 バニラとソーダの香りが混ざる、そんなファーストキスだった。



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相澤消太の場合
山田ひざしの場合

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