sketch | ナノ
※17話ばぴゅんと書き直しますごめんなさい。話が丸々変わってます。水谷君との件は消え去りました事にして下さい。


 私が三橋君を好きになってから、もう長い時間が経っていた。三橋君とメアドを交換してから、私はメールでも三橋君と話せるようになって。だけど、いつも私からメールを送る日々。どんな些細なことだったとしても、三橋君は必ずメールを返してくれた。良かったねとか、うらやましいなとか、ありがとうとか、すごいとか、色んな言葉を私にくれて、その度に私はすごく嬉しい気持ちに包まれた。
だけど、最近何かおかしかった。

「はよ、苗字」
「あ…花井君おはよう」

花井君と普通に挨拶をして、水谷君とも普通に挨拶して、そして私は自分の席に座る。千代ちゃんは昨日、阿部君に告白した…んだと思う。放課後の件があって、なんとなく阿部君に対して気まずい気持ちを抱いてしまっている。阿部君とは、よく気まずくなるけどそれは多分お互いに嫌い合ってるからなのかな。そう考えると少しだけ息が詰まった。

 千代ちゃんはまだ来ていなかった。朝練の後片付けとかしてるのかな。マネージャー頑張ってるし…そういえば昨日、千代ちゃんにメールしてあげれば良かったな。そんな事を考えながら鞄からノートやら教科書やらを取り出していると、急に声を掛けられた。

「おい」
「!、あ……」
(阿部、君)
「おはよ」
「え?あ、お、おはよう」
「昨日さ」
「へ?」
「篠岡に告られた」
「、」

阿部君は平然とした顔でそう言った。私は思わず息を止める。ぐるぐると思考が回転して、何て返したら良いのか分からなくなる。(き、気まずいってば…!)

「お前さ、知ってたの?」
「え、あ」

強い力で手を掴まれる。(な、何で)ざわざわとうるさくなる教室の窓際。私と阿部君だけの世界。外からは見えなくて、私達からも外が見えない。そんなファンタジックな空間だった。実際はそんなわけないけど。
 千代ちゃんは、フラれ…たの、かな。それとも、もう二人は付き合ってる、の、かな…。わ、分かんないから、逆に気まずい…。私は思わず阿部君を直視して小さく呟いた。

「二人は…付き合った、の?」
「は?」

阿部君の拍子抜けした顔。(あ、)

「お前、何言ってんだよ。そんなわけねーだろ」
「……そっか」
「随分あっさりだな」
「え?あ、う、うん…だって、」

(阿部君、なんて。興味無いし)

「何だよ?」
「……な、何でもないよ」

 無理して笑った。阿部君の前では、すごく無理してる自分がいる。阿部君といるのが楽しくないわけじゃない。っていうか、そもそも私は阿部君のことが嫌いなんだから無理なんてしなくて良いじゃん。それなのに、何ていうか…阿部君といると、苦しい。

「安心しないのかよ」
「え?」
「別に。何でもねえ」
「あ、あべく、」
「苗字!ちょっといいか?」
「!」

不機嫌な顔をして去っていこうとする阿部君を、追いかけようとした。だけど花井君に呼び止められて、私は阿部君の後ろ姿を見つめた。花井君は頭にクエスチョンマークをうかべて「苗字?」と私に問いかけてくる。私はハッと花井君を見て、笑って言った。

「あ、うん。何か用事?」
「ああ。別に大した用じゃないんだけどさ。クラスでアンケートとってるみたいで、それに協力してくれって頼まれたんだ。良かったら苗字の意見も聞こうと思って…」

 それからずっと、花井君は一生懸命私に説明してくれた。だけどアンケートの内容も、花井君の言葉も、私の耳には入らなくて。ただ阿部君が出て行った教室の入り口を見つめて、思い返す。(なんで、私…こんなに阿部君のこと気にしてるんだろ)阿部君の事が嫌いなら、構わなければ良い事なのに。そうは思ったけれど、それほど気には留めなかった。だけどそれ以上に、さっき阿部君が零した言葉が気になった。

「安心しないのかよ」

「………、安心って何よ」
「苗字、どうかしたのか?」
「あ、ううん!何でもないよ、それよりアンケートのこと、」

「別に。何でもねえ」

「じゃあ放課後までによろしくな、協力サンキュー」
「うん、分かった」

花井君が自分の席に戻ると、チャイムが鳴った。阿部君は教室には戻ってこなかった。


 20120708
 書き直し本当に申し訳ないです