sketch | ナノ
 あれから練習が終わって、私は皆にタオルを配った。私の横で千代ちゃんはドリンクボトルを回収する。順番にタオルを受け取る皆の中、三橋君の番が回ってきて思わず息を飲む(か、会話できるチャンスだ…!)

「み 三橋君、お疲れさま」
「あり が、とう、苗字さ ん!」

三橋君は笑ってくれた。必死に言葉を見つける三橋君がすごく可愛くて、もっと好きになる。
それから少し三橋君と話ができて、嬉しかった。何とメアドを交換する事に成功して思わずテンションが上がる。そしたら三橋君の後ろに並んでた泉君が「おいそこイチャつくなよ」と言ってきたから恥ずかしくなったけど、栄口君が「なに泉妬いてんの?」とかいうから余計に恥ずかしくなって私は俯く。

「ほら皆、名前ちゃんで遊ばないの!」

そんな千代ちゃんの声に救われたけど、三橋君となら別にからかわれても良いかな、とか思う自分が重傷だという事に気付いた。(な、何で私こんなに三橋君の事好きなんだろ?)

「名前ちゃんっ、」
「え?あ、」

 皆にタオルを配り終えて、私も帰りの支度をはじめようと思った途端、千代ちゃんに声を掛けられて振り返った。千代ちゃんは笑顔で「三橋君の事好きでしょ?」なんて言うから耳まで真っ赤になったのが自分でも分かる。ああ、せっかく「好きな人いない」って嘘付いたのに…全てパーになってしまった。しかも千代ちゃんすっごいニヤニヤしてる。うわああ恥ずかしい…!

「応援するよ!」
「あ、ありが、とう…」

まあそれはそれで、ガールズトークも悪くないかなと思ったから、否定はしないでおいた。千代ちゃんなら皆にバラさないだろうし、むしろ協力とかしてくれそう。もちろん私も千代ちゃんの恋に協力する。今までこんなガールズトーク的なものをしたことなかったから、余計に嬉しくなって千代ちゃんともっと仲良くなりたくなった

(帰ったら三橋君にメールしようかな)
(でもその前に、千代ちゃんにメールしよう!)

 20120409