sketch | ナノ
 今日の練習見に来ない?って、水谷君に誘われた。野球部とはマネージャーの件があってから何となく気まずい感じだったけど、花井君に聞いたら是非来いよって言われてしまった。断るに断れなくて、放課後なんとなく、グラウンドへと向かう。もう集まっていた西浦野球部メンバーが私を見て笑顔で歓迎してくれた。

「名前!俺差し入れは名前のハグが良い!」
「おいこら田島!練習に集中しろ!」

田島君とも久しぶりに喋ったような感じがして嬉しかったし、千代ちゃんのお手伝いもできて何となく幸せだった。ベンチで千代ちゃんと話をしていると、「名前ちゃんもマネージャーやればいいのに」と笑顔で言われたが断った

「そういえば千代ちゃんって、阿部君と栄口君と同じ中学だったんだよね?」
「うん、そうだよ」
「阿部君とかと仲良いの?」
「!!」
「へ?」

 ぼふん。千代ちゃんの顔が真っ赤になった。(こ、これはまさか…)

「千代ちゃん?」
「な、何でもない!何でもないよ!」
「もしかして千代ちゃんって、阿部君の事好き?」
「…!!」

そ、そうだったんだ…。千代ちゃんは真っ赤になって頷いた。阿部君のどこが良いんだろう、あんなに性格悪いのに。(も、もしかして阿部君があんな態度取るのって私の前でだけなのかな?)やっぱり千代ちゃんは可愛いし優しいから、チームメイトにも大切にされてるんだろうな、とか思ってみたりした

「でも阿部君は…私のこと、見てくれないから…」
「! そうなの?」
「う、うん。なんていうか、阿部君って野球大好きで、恋愛とかそういうの興味ないみたいだから…。私が無理にアピールしても、叶わない恋って分かってるから、」
「そ、そんな事ないと思うよ!」
「えっ?」

私は千代ちゃんの手をがっしりと握って、必死に叫んだ。

「私、応援する!協力もする!千代ちゃんの恋、ぜったい叶えよう!」
「…名前ちゃん…!」

千代ちゃんは涙ぐんだ声で、ありがとう、と言って笑ってくれた。千代ちゃんは良い子だ。阿部君にはもったいないくらい、良い子で可愛くて、きっと千代ちゃんなら恋を叶える事ができるだろうな

「名前ちゃんは、好きな人とかいないの?」
「えっ!?」
「あ、いるんだ?」

ニコニコしながら聞いてくる千代ちゃんに、私は「いないよ」とできるだけ平然とした顔で言った。どうやら信じてくれたみたいで良かった


(好きな人できたら教えてね!私も名前ちゃんの恋を応援したいから!)
(あ、ありがとう千代ちゃん)

 20120409
 千代ちゃんと仲良し