yamikumodays | ナノ
「なあ一緒に帰ろうぜ」
「は?」

放課後、今日は部活がないという知らせをキャプテンから聞いたから真っ先に苗字のところに行った。そして言うセリフは冒頭のセリフ。苗字はキョトンというか、解せぬといった顔で俺を見つめている

「どういう風の吹き回しだよ気味わりィ」
「う、うるさい別に良いだろ」
「……今日は天馬たちと帰るんだけど」
「!…じゃあ良いよ悪かったな!」
「なに怒ってんの」
「怒ってねーよ!」
「怒ってるだろ」
「だって苗字が、」
「……俺がなんだよ?」
「っ!」

ピシ、苗字の鋭い眼が俺を睨んだ。怒ったのは俺じゃない、苗字だ。また俺が怒らせた、ああもう

「あ!名前ー!」
「…おー天馬、」
「!」

 しばらくすると制服を着た天馬君たちが走ってきた。苗字はさっきとはまるで違う声色と表情で天馬君を見る。そんな苗字を、俺は睨む。すると苗字はチラリと俺を見てから、申し訳なさそうな声で天馬君に言った

「あのさ天馬、今日やっぱ一緒に帰れなさそうなんだ。先生に呼ばれててさ、長くなりそうだから先に帰っててくれない?」
「えっそうなの?」
「ああ。ごめんな」

え、え?なにこいつなに言ってんの?意味わかんない先生に呼ばれてるなんて嘘だろ、なんで天馬君たちとの断ってんだ

「そっか、じゃあ仕方ないね!名前、また今度一緒に帰ろう!」
「ああもちろん。ごめんな天馬」

そんな会話がやっと終わって、天馬君たちが教室から出ていく。俺はポカンとした表情で、その場に立ち尽くした。すると苗字は薄く息を吐き、俺を見る

「おい」
「っえ?」
「帰るぞ、狩屋」
「え、なんで」
「帰りたいんだろ?一緒に」

苗字は"一緒に"を強調して言いやがったから俺の心臓がばくんと跳ねる。こ、こいつ、まさか俺に気を使って、なんて柄じゃないし、え、え?
 俺は混乱状態のまま苗字に腕を引っ張られながら教室を後にする。

「明日学校休みだし、お前んち行かせろよ」
「……は?」
「嫌ならいいけど」
「え、いや、急になんで」
「あわよくば泊まらせろ」
「はああああ!?」
「まあとにかくさ、帰るぞ」
「え!?あ、ああ…」

そして結局、苗字の魂胆も分からずに二人で下校する事になった


期待しても良い理由
(俺ともっと仲良くなりたい…とか?)


 20120201