yamikumodays | ナノ
 それは実に優雅な昼休みだった。俺は購買でパンを買ってから屋上へと向かう。一人は好きだ。別に寂しくないし、別に……寂しくなんて、な、ない…(ああもう!) 屋上へと続く階段がやけに静かに感じた。俺はそんな静かな空間に乗せられて、なるべく足音を立てないようにして階段を昇った。

しかし古びたドアノブを回そうと手を伸ばした時、衝撃の言葉が俺の動きを止めたのだ

「好きです、付き合って下さい」

時間が止まったかと思った。俺はピタリと手を止めて、ドアと耳の距離をゼロにする。盗み聞きは内容が過激な程、聞き甲斐があるというのはまさにこういう事だ。俺の中にいる悪魔がクスクスと笑った

「ずっと好きだったんです」

さて相手は誰なのだろうか。女の必死な声が聞こえるだけで相手の声は聞こえない。だけどすぐに、また別の声が聞こえた

「ごめん。そういうの考えた事ないし、俺って君の事全く何も知らない。だから無理」
「!!」

その言葉にビックリしたのは、きっと女よりも俺の方だと思う。いや、言葉というよりは声だった。その声の主は、きっと、いや間違いなく、俺の知っている人物、……苗字だ。

「マジ…かよ」

アイツって女にモテんの?あんなダルそうな表情なのに?無愛想なのに、何でだよ。まじで意味分かんねえアイツ。何なんだよ苗字ってマジでムカつく奴だな
俺はそのまま屋上には入らず、足音を立てないようにして教室に戻った。


何か、ありえねえ
(盗み聞きなんてするんじゃなかった)


 20120129
 あれっ短いぞ