yamikumodays | ナノ
「一番仲良いのはマサキだよ」



 名前の心地いい声は、すごい好きだ。
クールで冷たい表情をすることが多いけど、名前のあの顔だって好きだし、むしろ、そういうのが好きだったりもする。
だけど俺は、俺以外の奴に向けてる名前の表情は全部嫌いだ。名前が俺以外の奴に笑いかけてるのを見るとなんか死にたくなってくるし、心臓が痛い。
(でも、こんなの、)名前に言ったって、きっと引かれるだけだろう。独占欲が強いのとか、そんな理由で名前に嫌われたくない。

「狩屋、ちょっと良いか?」
「!」

一人でボーっとしていたら天馬君が声を掛けてきて俺は現実に引き戻される。

「ああ、何?」
「信助見なかった?さっきトイレから戻ってきてから見てないんだけど…」
「え?あ、いや…俺は見てないぞ」
「そっか!ありがとな、狩屋!」
「おう…」

少し小さな声で返すと、天馬君は首を傾げた。
「狩屋、具合でも悪いの?」
「え?」

思わぬ質問に驚いて「いや、全然」と言うと天馬君は心配そうに言う。

「でも最近、何かボーっとしてること多いからさ」
「そうか?そんなことないと思うけど…」
「疲れてる時は無理しなくて良いからな!」
「! …あ、ああ…ありがとな、天馬君」

すると天馬君は俺の手を握って、にっこりと明るく笑う。

「狩屋は大切な仲間だから、無理されちゃ困るよ!」

天馬君の無邪気な笑顔と気遣いに俺は笑って「ありがとな」とお礼を言った。天馬君に余計な心配をかけないように、俺はしっかりしないといけない。(名前に振り回されてばっかりじゃ駄目だ!)そう決心し、天馬君と別れてトイレに向かう。
教室を出ようとすると廊下から教室に入ってきた誰かとぶつかってしまい、俺は謝ろうとぶつかった相手を見上げる。すると、

「!名前…」

やけに、冷たい顔をした名前が立っていた。



やきもちの話
(なんか、やばい感じ)


 20140103