yamikumodays | ナノ
 充実したのかしてないのかよく分からない休日を終えて、俺たちの関係には大きな変化があった。お互いに好き合っていることを知り、キスもして、いつも以上に色んな話をした。
(マサキが俺を好き、とか…)
なんとなく、うっすらと、ああコイツは何かホモっぽいと思ってたが本当にホモだったとは。マサキの真っ赤になったあのタコみたいな顔を思い出して、なんかやっぱりあいつは可愛いなと思う。


 教室に着いてからしばらくすると朝練を終えた天馬と信助とマサキが教室に入ってきて、俺はちらりと三人に視線をやる。しかしマサキと目が合いそうだったからすぐに読んでいた本に視線を戻した。
元気の良い天馬と信助の声が聞こえて、俺は思わずさっきのように天馬たちに視線をやる。すると俺に近づいてくるマサキと目が合って、静かに本を閉じた。

「おはよ」
「お、おはよ」
「昨日はありがとな」
「え?あ…ああ、べつに。いいよ」

マサキは照れくさそうに視線を逸らす。すると、ドアの方から俺を呼ぶ声が聞こえた。
「苗字!」
その声の主を見ると、それは隣のクラスのやつだった。そいつは最近仲良くなった藤という男子で、俺はマサキに「ちょっとごめん」とだけ言い藤の元へと足を進める。

「何だ?」
「ほら、これ。前言ってたCD、聴きたいって言ってただろ?」
「! わざわざ持ってきてくれたのか」

藤は俺とは違い、いつも明るくて楽しそうだ。いつもにこにこ笑って、色んな奴と仲が良い。そんな藤とどうして俺が仲良くなったのかは、まぁなりゆきというやつだ。
 先週、廊下ですれ違った時にぶつかって、謝りがてら少し話をしたのがきっかけ。藤とは音楽の趣味が合い、このCDもその時に俺が聴きたいと言ったものだった。

「ありがとな、藤」
「良いってことよ。そんじゃ、またな!」
「うん、また」

ひらひらと手を振って、藤が自分のクラスへと入っていく。俺はそれを見届けてからマサキの元へと戻った。律儀にその場で待ってくれていたマサキに声を掛けると、マサキは不思議そうな顔で言う。

「今の、だれ?」
「友達」
「ふーん、あっそ」
「なに?何か怒ってる?」
「別に。お前、他クラスにも友達いたんだな」
「…そりゃ、いるだろ」

俺は呆れ顔でそう返した。

「…マサキ?」
「何」
「いや、何じゃなくて…機嫌悪いだろ」
「悪くないし」
「説得力ないから」

ふくれっ面のマサキの頭に手を置いて、雑に撫でてやる。マサキは嫌そうな顔をしたけど、やめろとは言わなかった。しばらく沈黙が続いてから、俺がなんとなくマサキの機嫌が悪い理由を察して、言う。

「一番仲良いのはマサキだよ」

べつに嘘を言ったわけではないのだが、何となくこういう台詞を言うのは好きじゃなかった。(なんか、キザっぽくて嫌いだ)しかしそんな俺の台詞にマサキは少しだけ顔を赤くして、「あっそ」と呟く。


かわいいようでかわいくない
(ほら、機嫌直った?)
(……直った)



 20140102
もうちょっとだらだら続きます