yamikumodays | ナノ
 朝起きると隣にマサキが寝ていて一瞬何事かと思ったが、ああそうかマサキの家に泊まりに来たんだった。
(マサキ、まだ寝てる…)その寝顔があまりにも幼かったから何かむずむずして、不覚にも可愛いだなんて思ってしまう。
ついついマサキの柔らかい頬に手を伸ばして、そっと撫でてみるとマサキは「ん…」とだらしない声を漏らしてから寝返りをうった。

「マサキ」
「……」
「マサキ、起きろよー」
「……」
「マサキー…」

(爆睡かよ…)
どんなに肩を揺すっても起きないマサキに殺気すら感じたが、コイツもコイツで疲れてるんだろう。サッカー部の練習だって、きっとハードなんだろうし。プライド高いし色々と悩み込みすぎる性格も考えると、普段の疲労はこうして休みの日にガンガン寝て発散するしかないんだろうな。

「…あとちょっとだけだからなー」

 そうしたらちゃんと起きて、俺のこと構ってよ。





「…んー……」
「あ」

そこら辺に置いてあった漫画を手に取り読んでいると、マサキの小さな唸り声が聞こえた。うっすらと目を開けて俺を見るマサキに無表情で「おはよ」とだけ声を掛けるとマサキは一瞬びっくりしたように目を見開いて身体を起こす。がばっと布団で口元を隠してからマサキは言った。

「名前!?」
「うん、そうだけど」

(俺が泊まったこと、こいつも忘れてたのかよ)先ほど自分が体験した驚きを今まさにマサキが体験してると思うと笑えたが、さすがのマサキもすぐ思い出したようだ。

「そ、そうだった…」
ぽつりと独り言を零してからまた布団に潜り込もうとするマサキの腕を掴んでそれを阻止する。

「なに、また寝んの?」
「…だって眠いし…」
「もう10時だぞ」
「まだ10時じゃん…」

だんだんとマサキの声が小さくなる。ぼふんと枕に落ちたマサキの頭を見て、俺は溜め息を吐いた。(せっかく起きたのに)そんな不満は口に出さず、俺はまた漫画に視線を戻す。多分この漫画、マサキは好きなんだろうけど。俺にしてみれば、ちっとも面白くない。まあ好みは人それぞれだと言うが、それにしても面白くない。
(…つまんね)

「なあマサキ」
「…なに…」
「やっぱ起きろよ」
「…いやだ」
「……あっそ」

さすがの俺もここまで放置されると何か悔しくて、漫画を適当な場所に置いてからマサキを見つめた。

「…マサキさぁ」
「…んだよ」
「マジで、俺のこと好きなの?」
「! はぁ…!?」

その瞬間がばっと頭を上げて俺を見つめるマサキ。(あ、目合った)マサキの顔が真っ赤になる。俺はただ真顔でマサキを見つめて、マサキの言葉を待った。

「き、昨日あんなに、俺、言ったのに…!!」

(やべ、怒った)真っ赤な顔でぶるぶると震えて俺を睨みつけるマサキが、なんか、言っちゃ悪いけどスゲー可愛い。こいつ別に怒っても怖くないし、むしろそういう顔見せられても可愛いだけで、こいつ損してんなー、って思った。

「好きって、言ってんだろ!」
ぼふん。枕を投げられて息が止まる。

「っ悪かったって、だからそんな怒んなって…――、!!」


 いきなり暗くなる視界と、あぐらをかいた足に掛かる体重。マサキの匂いがやけに強くなって、俺の唇に生温かい何かが振れた。


「……、え…」

ただ唖然と固まって、気付けば目の前にきていたマサキの顔を見つめる。

「お、まえ…」

うまく言葉が言えなくて(あれ…?なんか、おかしい)頭がいっぱいいっぱいになる。マサキの顔が少しだけ離れて、そして次の瞬間、ああマサキにキスをされたのだと気付いた。

「大好き」

寝起きだからだろうか、マサキの声はいつもより低くて掠れている。そんな声で大好きだなんて、反則すぎやしないか?
不覚にも心臓が大きな音を立てた。ドキドキと、静かに加速していく。(やばい、やばい、)俺はいつからこんなに、おかしくなった。(こんな、こんなに…)マサキのこと、好きだとか。こいつも俺も男なのに、そんなの関係ないってくらいこいつのことが好きで愛おしくて。

「…ありがとな」
俺はマサキの肩に顔をうずめて、そう言った。



これで分かったよ
(本気でお前のこと好きになって良いって)


 20131103
ほんっっっとうにお久しぶりです!!
ほぼ凍結状態になっていたのですが、急に書きたくなりました。ちょっと時間が開きすぎたので小説の雰囲気が変わってしまっていたら申しわけないです。