yasumonoNIHAgotyuiwo | ナノ

 翌日、私はソファの横で目を覚ました。少しボーッとしてから、昨日のことを思い出す。(そっか…赤也と一緒に寝たんだった…)
ソファには、すやすやと眠る赤也の姿があった。私はそんな赤也を見て、小さく微笑む。いつもこんな風に静かだったら良いのに。

「…赤也、朝だよ」
「…ん、んー…」
「おはよう」
「あ……、はよ」
「調子はどう?熱下がった?」
「…たぶん、下がったっぽい」
「そっか、よかった」

私が安心の息を吐くと、赤也はそのまま私にキスをした。触れるだけのキスはすぐに離れていき、赤也は優しい笑顔で「ありがとな」と囁く。顔に熱が集まっていくのが分かる。私は赤くなった顔を隠して、立ち上がる。

「早く支度して、朝練行かなきゃ」
「あー…俺、朝練休むわ」
「うん、分かった」

 自室へ行き、新しいシャツに着替える。髪型もセットして、鞄を持つ。またリビングへ戻ると、赤也は朝食の準備をしていた。

「それじゃあ、先に行ってるね」
「ああ、行ってらっしゃい」
「うん」

靴を履いて玄関を出ると、登校中の水野君に会った。

「!あ…」
「苗字、おはよ!」
「お、おはよう」
「これから朝練?」
「うん、水野君も?」
「ああ。良かったら一緒に行くか?」
「良いの?」
「っていうか、俺が一緒に行きたい」
「!」

あまりにも自然な流れだったせいで忘れていたが私は昨日、水野君に告白されたんだった…。水野君の言葉に、思わず赤面してしまう。

「あ…じゃ、じゃあ一緒に行こっか…」
「おう、ありがとな!」

しばらく歩くと、水野君が「苗字の家って、さっきのアパートか?」と問うてきた。「うん、そうだよ」「今日、遊びに行って良いか?」「……え?」突然のことに、思わず聞き返してしまう。っていうか、いきなりすぎる。

「え、あの、」
「そこで、答えを聞きたいんだ」
「!……わ、分かった」

答えっていうのは、きっと告白の答えのことだ。私は俯きつつも、了承した。すると水野君は嬉しそうに笑って「ありがとな!」と言ってくる。心の中で迷いはあったが、水野君の笑顔を見るとそんな迷いも忘れてしまいそうだった。


〜(赤也視点)
 それは俺が英語の担当に呼び出された時のこと。またテストで0点を取り、怒った担当の顔を見るのにも慣れていた。職員室に来いと言われていたものだから、俺はスタスタと廊下を歩いていく。すると名前のクラス、B組の前を通り過ぎた時だった。

「あ、それ知ってる!苗字さんでしょ?」
「ちょっ声でかいよ」
「…!」

足が止まった。今聞こえたのは、明らかに名前の話題だろう。盗み聞きは良くないが、そんな事は気にせず聞き耳を立てた。

「水野君って、ずっと前から苗字さんのこと狙ってたじゃん。あれ何か身体目当てらしいよ」
「え、まじで?私さ、今朝水野が苗字さんの家に遊びに行きたいってお願いしてたの見たんだけどさ…それって、苗字さんヤバくない?」
「なにそれ、下心丸出しじゃん」
「ね。苗字さん無事なら良いけど…」

 聞き間違いだと信じたかった。(水野って確かA組の…)
俺は止めていた足を動かし、教室に戻る。英語の担当なんてどうでも良い。行っても行かなくてもどうせ説教をくらうなら、今の話を信じて急いで家に帰る方がマシだった。教室に置いてある鞄を手に取り、走って学校を出る。いつもの通学路を走り、全速力で家へと向かった。

「さっきの話が本当なら…!」
名前は今、かなりヤバい状況。

 20120806