yasumonoNIHAgotyuiwo | ナノ
 帰宅すると、シチューの良い匂いがしたから驚いた。思わず靴を揃えるのを忘れてリビングに行く。

「…赤也?」
そこにはエプロン姿でシチューを作る赤也の姿があった。鞄をその場に置いて赤也に近づく。ちょうど今、シチューが完成したようだ。お皿を取ろうと振り向いた赤也と目が合った。

「げっ、名前…!」
「どうしたの、夕飯なんて作って…というか赤也、料理できたの?」
「い、いやそれは…」

私は赤也の手元にあった本を手に取った。(あ、これもしかして…)

「ねえ、これってもしかして前に赤也が隠した本…?」
「っちょ、勝手に見んなって!」

私の手からバッと本を奪って、また隠した赤也を見つめてやると真っ赤になった。(どうしたのこの子)すると私から視線を逸らすようにして、ボソリと呟く。

「…いつも作ってもらってんだし…つーかお前、いつもバスケ部の練習で疲れてても夕飯作ってくれるし…何つーか…と、とにかくありがたいとは思ってるんだよっ」
「!!」
ぱちくり。信じられない物でも見るかのように目を見開いた。赤也が、私に夕飯を作ってくれた。それはとても簡単なクリームシチューだけど、それでも、何か。すごく嬉しくて。気付けば涙ぐんでいる自分がいた。

「おっお前、何泣いて…!?」
「ち、違うってば…ちょっと…ちょっとだけ、」

嬉しくて。そう呟けば赤也は私をぎゅうっと優しく抱きしめて、言った。

「泣き虫」
それはいつもより、どこか優しい声な気がして。でもやっぱり恥ずかしいから赤也から離れれば赤也はお皿にシチューを盛り付けた。
 ふわふわと香るシチューを見つめながら、なんとなく先ほどの仁王先輩との事を思いだす。赤也はこんなに美味しそうなシチューを作っていてくれてたっていうのに、私は仁王先輩とキスなんかして。…何だか、とても申し訳ない。

「…赤也、ごめん」
できるだけ赤也を見ないようにして、そう呟いた。
「は?何でだよ?」
「、何でもない」
不思議そうにこちらを見る赤也を無視して、その美味しそうなシチューを頬張った。

 20120911
 関係ないけどユウ君おめ!
 しかし短い…前の話が少し
 長めだったので見逃して下さい(