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「やっぱお前かよ、西条」
ブン太先輩の声が響く。ぼやけた視界に移ったのは、西条先輩を押さえてひどく怒った表情をしているブン太先輩だった。声が出ない。やけに冷たく感じる涙が私の頬を伝った。
「ま、丸井…!何で貴方がここにいるのよ!?」
「そんなのお前なんかに言う必要ねえっつの。それより殴られる覚悟はできてんだろうな?」
「っ!な、何よ!男のくせに女を殴るつもり!?ありえない!」
「ありえねえのはお前の方だろい」
パンッ。乾いた音が私の耳までしっかりと届く。ブン太先輩が、西条先輩を殴った。しかしその手がグーじゃなくてパーなのは、あくまで西条先輩が女だということに対するブン太先輩の気遣いだろう。
叩かれた衝撃で、カッターが床に落ちた。そのカッターにはしっかりとブン太先輩の血が付いている。それを見た途端、私は頭がパンクしそうになった。
「っ、ぁ…」
「二度と名前に近づくな。分かったな?糞女」
「…ッ覚えてなさいよ!!」
大きな足音を立てて西条先輩が去って行く。深く溜め息を吐いたブン太先輩は、私を強く抱きしめた。
「…!」
「大丈夫か?」
ブン太先輩の身体を抱きしめ返す事ができない。助けてくれて嬉しいのに、涙が止まらない。先ほどの自分の言葉は、きっとブン太先輩にも聞こえていた。
「殺して」
私は、なんて馬鹿なことを言ったんだろう。ブン太先輩に怪我までさせて、私は、どうして死のうとしたんだろう。
悔しくて涙が止まらなかった。
「ごめん、名前…気付いてやれなくて」
「…え?」
「名前がそんなに傷ついてたなんて知らなくて。俺達、自分が良ければ良いと思ってずっとお前のこと奪い合って…ほんとに、ごめん」
ブン太先輩の目に涙が滲んだ。それを見て、ようやく視界がはっきりとしてくる。それと同時にブン太先輩に強く抱き着いた。
「っこわ、怖かった…!ほんとに、死ぬかと思って、わた、しっ…!!」
「…もう大丈夫だ。俺がついてるから、だから「ブン太先輩…」っ、何だよぃ?」
私は涙が止まらないぐちゃぐちゃの顔で、笑った。
「ありがとう…ございましたっ…」
するとブン太先輩も笑って、答える。気付けば午後の授業はとっくに始まっていて、私達はそのままサボった。ブン太先輩は私を元気づけようと、必死そうに楽しい話題をたくさん振ってくれた。それが嬉しくて、沈んだ心も壊れかけた心も、全部元通りになった気がして。その日はブン太先輩が家まで送ってくれた。
20120903
何か危ない描写があって
申し訳ないです…
病みネタはやめようか悩んだんですが
どういうわけか入れてしまった…
あれ?ブンちゃん出しゃばりすぎ?