yasumonoNIHAgotyuiwo | ナノ

「もうすぐ学園祭だね、名前」
「え?」
昼休み、友達にそう言われて初めて気付いた。学園祭は二週間後の土曜日。私はお弁当を口に運びながら呟く。

「学園祭かー…うちのクラスは何やるんだろうね」
「なんか男子はメイド喫茶が良いって言ってるらしいよ。まあ担任もそう言ってるから、たぶん決定じゃない?」
「ええ!?な、何それ…」
「嫌なの?面白そうじゃん」
「だってそれって…メイド服着るってことでしょ?」
「うん、そうだよ」
「恥ずかしいじゃん…」
「名前がメイド服着るなら男子は喜ぶと思うけど…名前、男子に人気あるじゃん」
「ちょっと、やめてよー」

二人でふざけ合いながら昼休みを終えると、早速ホームルームで学園祭の出し物が発表された。結局メイド喫茶に決まったらしく、私は大きく肩を落とす。(最悪だ…)



水野君のことや赤也とのこと、そして精ちゃんとのことも記憶から薄れていき、だいぶ落ち着いてきた秋。学園祭へと向けて、色んなクラスが準備を始めていた。

「あ、好きな先輩の苗字先輩!」
「苗字、どうしたんだ?三年のフロアに来たりして…」
「ちょっと三年の先生に学園祭に使う道具を借りたくて…あ、すいませんいきなり話し掛けたりして…」
「え?いや、むしろ嬉しいよ。苗字のクラスは何やるんだ?」
「私のクラスはメイド喫茶です」
「はあ!?マジかよ…絶対行く」
「は、恥ずかしいから来ないで下さい!」

すると先輩は笑顔で私の頭を撫でる。「ちょ、先輩…!」「良いだろ?苗字のメイド姿は拝んでおきたいからさ、はは」「うっ…」私は反論もできずに、そのまま了承してしまう。やっぱり好きな先輩の苗字先輩には敵わなかった。

「それじゃ苗字、後でメールするぜ」
「は、はい!待ってます!」

手を振ってくれる先輩に、私も手を振り返す。先輩の後ろ姿を眺めながら、ため息をついた。(メイド喫茶…中止にならないかな)


20120811