yasumonoNIHAgotyuiwo | ナノ
 休日の朝は清々しいほどに太陽が地球を照らしていた。カーテンから零れる日差しは何とも平和で、私は肩をおろす。
昨日の一件のあと。私は赤也と身体を重ねてしまった。後悔をしているかというと、そうでもない。水野君に無理矢理犯された身体が赤也によって上書きされたことで、どこか落ち着くような気もする。

「…あ、」
赤也に、もう一度お礼を言っておかないと。私はパジャマ姿のままリビングへ向かう。赤也はまだ起きていないようだった。そのまま赤也の部屋に向かい、ノックはせずにドアを開ける。ぐっすりとベッドの上で眠る赤也の姿があった。

「赤也…もう朝だよ、学校…っ、え!」
ぎゅう。いきなり赤也に腕を掴まれてそのまま抱き締められた。寝ぼけているのか分からなくて、赤也に何度も呼び掛ける。

「…あか、赤也…?」
「ん、んー…名前、おはよ…」
「おはよう赤也、寝ぼけてない?」
「…ああ、平気。…腰とか、痛くねえか?」
「え?」

もしかして、心配してくれてる?
私は少し痛む腰を無視して、大丈夫だよと返した。柄でもなく笑顔を見せると、赤也も薄く笑った。

「…もうすぐ学校だから、起きよ?」
「もー、ちょい…」
「っわ!…もう、あと少しだけだよ?」
「おう…」

私を抱き締めた体勢のまま眠りに入る赤也の寝顔に、私は小さくありがとうと伝えた。私を下僕だの言っておいて、こんなに優しいのは反則だ。赤也が寝息を立てたのを確認して、私は赤也を起こさないように離れる。やけに落ち着いた朝だった。


 息を切らして教室に入る。時間はギリギリだった。どうしてこんな事になったかと言うと、赤也があの後なかなか起きてくれなくて最終的に襲われそうになったり何やらで遅刻しそうになったのだ。鞄を机に置くと、友達が話し掛けてくる。

「名前どしたの?そんな息切らして…」
「あ、ああ…ううんちょっと、遅刻しそうになっちゃって…はあ…」
「ふーん…名前が遅刻しそうになったなんて珍しいじゃん」
「それはまあ、色々ありまして…」

私が友達の視線から逃げる様に顔を逸らすと、友達は何かを思い出したような表情でこちらを見る。

「そうだ!最近名前さ、切原と仲良いでしょ!」
「え!?ちょ、別に仲が良いわけじゃ…」
「はいはい、隠さないの。それでね、何かヤバいらしいよ」
「…何が?」
「名前が」
「え、私…?」
「そう。いや噂だからマジかは分からないんだけど…ちょっと前に切原に告白してフラれたっていう先輩いたじゃない…えーっと、名前は忘れたけど三年の先輩。その先輩がさ、最近名前と切原の仲が良いっていうのに嫉妬してるらしいよー」
「し、嫉妬って…そもそも私、あか…切原と仲良くないってば」
「まあ名前がそう言ってても傍から見たら随分仲良いでしょ。切原だって、名前といる時は楽しそうだし…そういえば最近一緒に登校してるでしょ!切原と名前が付き合ってるって噂もあるみたいだし、とにかく三年の先輩には注意した方が良いよ…あの先輩、噂で聞く限り性格悪いみたいだから…」
「そ、そっか…うん、分かった。気を付けるね、ありがとう」

 私が鞄を片付けると先生が教室に入ってきた。私はさっきの友達のセリフなどあまり気にせずホームルームに集中した。後であんな事になるなんて知りもせずに。


 20120813