bookshelf | ナノ
なまえの苦しそうな声が部屋に響く。僕が泣きじゃくるなまえを抱くのは、初めてのことではなかった。
なまえは元々アキトやシンと同様に、僕の機体の中にあるパラサイトキーを守るために第三小隊に派遣されてきたプレイヤーだ。なまえは他の仲間達とは違い、確実な実力を持っていた。だから他の仲間が僕のために次々とロストしていく中、なまえ一人だけがその実力のおかげでずっと生き残っているのかというと、そうではない。
「ねえリクヤ、私、もうロストしたいよ」
それは、いつからかなまえがよく口にするようになった言葉。
なまえが初めてその言葉を口にした時、僕は感情に身を任せて乱暴になまえを抱いた。それが僕たちの初めての性行為だった。
「っぁ、あ、や、リクヤ…!!」
ぼたぼたと涙を零しながらなまえが僕の頬に手を伸ばす。この声も、この涙も、手の温度も、僕は嫌というほど頭の中に刻み込んだ。なまえだけは、手放したくない。好きだからこそ、愛しているからこそ一緒にいたい。なまえがロストしてここを去り、自分だけが今までと何ら変わらない生活を送るなど耐えられるはずがないから。だから「ロストしたい」だなんて口が裂けても言えないようにしてやる、そう、僕はなまえに躾をしているんだ。
しかしそんな僕の気持ちとは裏腹に、次々と消えていく仲間を見送るくらいならいっそのことロストしてしまいたいとなまえはそう言った。でも、僕は、そんなの僕が許さない。
(君がいなくなったら、僕は……)
もうこのパラサイトキーに、何の意味もないと感じてしまう。
今もこうして僕の下で泣きながら乱れているなまえは、LBXバトルは強いのに、心は一本の細い糸のように弱いんだ。あえて優しくてもどかしい快感のみを与えてやればすぐに泣きじゃくりながら決まってこう言う。
「っわた、し、まだ…がんばる、っがんばるからぁ…!!」
だからもうやめて、と。
「…っ、なまえ、」
「は、ぁあっあ、あ…!りく、や…っ!」
「まだ…ッまだ、駄目、ですよ」
僕はこの行為を、なまえを黙らせるために、もっともっと戦わせるために使っている。これからもずっと、一緒にいるために。
何故ならこれが一番効果があるから。
でも
例えばもし、僕がこれをやめたら、なまえは僕の前から消えていってしまうのだろうか。今までの仲間と同じように、ロストしてしまうのだろうか。そうして僕に残された「仲間殺し」という言葉が、またひとつ。積み重なっていくのだろうか。
「あ、ふぁあっあ、や、もう、」
「!!……なまえ…っ」
ぎゅ、と締まったなまえの膣内に攻められて、僕はゴムの中に全てを吐き出した。なまえの頬にこびり付いた涙の跡の上をまた涙が滑り落ちる。僕はまた、好きな人を泣かせてしまった。苦しめて、しまった。
「は、ぁ……はあ、っ…」
苦しそうに必死に呼吸を繰り返すなまえを見下ろしながら、僕は空っぽな笑顔を浮かべる。
「また、勝手にイっちゃいましたね、なまえ」
「ぁ…っり、リクヤ…」
涙を溜めた目が僕に向けられて、心が軋むような感覚を覚えた。僕はそっとなまえを抱き締める。この体が壊れてしまわないように、少しでも、傷が癒えるように。優しく髪を撫でてから、彼女の耳にそっと"最低な言葉"を吹き込んだ。
「もう僕にこんなことさせないで下さいよ」
きっと僕はまた明日も、その先も、同じようになまえを抱くだろう。
こんなことをしてまでなまえと一緒にいるのと、なまえの思うままにロストさせてやるのと、どちらを選べば僕たちは幸せになれるのだろうか。
(好き…好きです、愛しています、なまえ)
どちらも正解ではないと言うのなら、せめて貴女が壊れてしまうその日まで僕の隣にいてほしい。
20150122
毒の入った性行為