bookshelf | ナノ
※性描写有り。アラタが最低な男です。アラユノ表現あります。本当にアラタが最低なので注意。





 私は全部知っていた。
アラタがユノや他の女の子にも同じことをしてるってこと。アラタは私のことが好きなんじゃない、私の身体が好きだってこと。アラタは、最低な男だってこと。そんなの全部知ってる。それでも私はアラタが好きだった。

「っう、ンん、あ、っあら、た…!」

身体を重ねる時はいつも目隠しをされているから、アラタの顔は見えない。そんなもどかしさから苦し紛れにアラタの声を呼ぶと、噛み付くような荒々しいキスをされた。愛なんてこれっぽっちも感じない。気持ち良くもない。それなのに、どうしてこんなキスに答えてしまうのだろう。どうして、「もっと」だなんて思ってしまうのだろう。

 雑に突っ込まれた指がぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てながら私の膣内を解していく。いつも皆の前ではニコニコしているアラタからは想像もできないような"上手さ"に驚いたのは、きっと私だけではないんだろう。いつもアラタはこんな感じなのだろうか。私にするみたいに巧妙に誘惑して、そういう流れにして、こうやって乱暴に犯してるのかな。(ああ、なんか、やだ)やだよ。アラタが触るのは、私だけの肌でいい。そんな独占欲はいくらでも溢れてくるのに、涙は一滴も溢れてこなかった。

「あ、らた、アラタ…っ」
「なまえ、黙って」
「っんんう、あっぁあ、あ!」

ガチャガチャと雑な金属音が耳に入って、私の身体はびくびくと震えた。(ほしい、ほしいよ、アラタ)今どんな顔をしているのかも分からないアラタを抱き締めたくて手を伸ばせば、その手はあっさりと振り払われてしまう。

「っす、き…だい、すき、あらた、」
「俺も好き」
「〜〜っふぁあ!あ!あっ、や、ンんうッ」

感情のない言葉を浴びせられたと同時に、アラタの熱く反り返った自身が膣内に突っ込まれた。びくんと身体が大きく跳ねて、私は思わずアラタに抱きつく。拒絶はされなかったけど、きっとアラタは鬱陶しそうな顔をしてるんだろうな。(でも、それでも…っ)
「あら、た、ッあ、うあっんうう!!」
繋がっているというその快感が、私の独占欲を更に強くさせる。(もうこんなの、やめにしたいのに)思うだけで、口にできない自分が恨めしい。アラタに一途に愛されたい。他の女の子なんて抱かないでほしい。

「、っねえ、あら、た…」
「ッなん、だよ」
「やだ、よ、私っ…いくらでも、あいてに、なるから…!っんう、うぁ、だか、らっ…ほかの女の子と、ッ」
「するよ」
「っえ、…?」

 ぴたりと止まったアラタの腰。それと同時に私も止まって、アラタを見つめるようにして閉じていた目を開ける。目隠しのせいでアラタは見えないけど、それでも何となく、どんな顔をしているのか分かった気がした。アラタの冷たい声が私に降り注ぐ。

「俺、なまえとヤり終わったら、ユノのとこ行って抱くぜ」
「、」

今の今まで火傷しそうなくらいの熱を持っていた身体は、アラタの言葉により一気に冷めきっていく。アラタは淡々とした口調で続けた。

「明日も明後日も、別に毎日じゃなくても抱きたくなったら誰かとヤる」
「アラ、タ…」

初めて、アラタと身体を重ねている時に私の頬が涙で濡れた。アラタはそれに気付いたのは薄く息を吐いて、優しく私の頭を撫でた。そして少しばかり掠れた声で言う。

「なまえ、俺が他の奴を抱く度に、そうやって泣くのかよ」

アラタの言葉がひどく胸に刺さる。アラタの冷え切った声を聞きすぎて、もう今の声が冷え切ったものなのかそうではないのか判断ができなくなってしまった。私が黙ったままどうすることもできずにいると、再び腰が動かされ甲高い声が漏れる。(こんな、こんなの、)ひどく残酷だと思った。それはアラタではなくて、アラタを本気で好きになってしまった自分が。

「ッん!あっあぁあ、っ!」

繋がったまま腰を掴まれて、そのまま深く押し込まれる。子宮口まで達したアラタの自身が、そのままぐりぐりと最奥を責め続けた。いよいよ限界が近づいてきたところで、アラタが苦しそうな息を漏らしながら言う。

「っなまえが嫌なら、やめるけど、」
「!」
「べつに、っ…代わりなら、いるし」
「、や、やだ、やっやだ、やだよ、あ、っあらた、アラタ、すき、ンう、っす、好き…!!」
「それで、いいよ、ッ」

(離したく、ない)
深く醜い私の愛は、きっとどこまでも沈んでいく。それに比べてアラタの"愛"なんて、きっと水の上に浮かぶ泡に過ぎないのだろう。小さな反動ですぐに消えてしまう。だから私はそれを必死に引き止めて、少しでも長く、少しでも多く、愛されたいと欲張るのだ。

「俺、っそういうなまえが好きだから、」

アラタが都合の良い女の子を好きなことも、知ってる。アラタは私と同じくらい欲張りで、強欲で。そんな欲張りな私たちの愛は決して交わることはないけれど、せめて身体だけは、いつまでも交わっていたかった。本当の愛なんていらないから。


欲張り少年/少女
(欲張りな私がひとつだけ我慢できるもの)
(それは、"真実の愛")



 20141013