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※性描写有り




「なまえ」

いつもより低くて甘いヒカルの声が耳元で響く。ぞくりと背筋が震えて、私はそっと目を閉じた。頬が熱い。ヒカルの指先が私の肌をなぞって、だんだん下へと降りていく。ちょうどおへその辺りで、ヒカルの手が止まった。

「っひ、う」
「声は抑えるな」
「で、でも、ッんんう!」
「そっちの方が、すごく興奮するから」

ヒカルはいつもは少し冷たいけど、こういう時は本当にびっくりするくらい素直で何でも隠さずに言うからすごく恥ずかしい。初めて体を重ねた時はもう少しぎこちなかった気がするんだけど、いつの間にヒカルはこんなに変態になってしまったのだろう。そんな事を考えていたらヒカルに耳をかじられて体がびくりと跳ね上がる。
「っや、や、ぁあ!」
「可愛い」
「ヒっ、ヒカル…」

正直、私からしてみればヒカルの方が可愛いしヒカルの方がずっと綺麗だ。だけどそれを言うとヒカルは機嫌を悪くするから言わないようにしているのだが、やはりそんなヒカルに「可愛い」と言われても疑ってしまう。本当にそう思っているのかと。(まあ、思ってるから言うんだろうけど)
 ヒカルはねっとりとしたキスが好きらしい。口の中でぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てられるのは恥ずかしいからあまり好きではないが、ヒカルがそれを好きなら私もそれに答えようと思ってしまう。恋の力は本当にすごい。

「んっ、ふぅ、あ」
「っ…なまえ、こっち」

ヒカルに手を掴まれて、そのままヒカルの下半身へと持って行かれる。もうすでに大きく増量したその自身に、私は体の奥がじんじんと熱く痺れるのを感じた。(早く、早く欲しい、)だけどそんなことをサラリと言えるほど私はこの行為に慣れていない。

「っヒカル……」
「直接が良い」
「!」

 今日のヒカルはいつもより切羽詰まっている気がした。
いつもならじわじわと私をいじめ倒すのに、今日はいきなり直接だなんて。羞恥から顔が真っ赤になるのが自分でも分かる。(恥ずかしい、恥ずかしい…!)私は真っ赤な顔をなるべく見られないように俯きながらヒカルのベルトを取り、直接その熱く反り返った自身に触れた。(っ、こ、こんな、)
まるで溶けてしまいそうなほどに熱いそれに私は更に顔を赤くする。そんな私を見て、ヒカルが薄く笑ってみせた。

「もう、欲しいのか?」
「っそ…そんなこと…!」
「いいよ」
「へ、」

思わぬ返事に私が唖然としている間に、ヒカルは力強く私の腰を引き寄せて私のスカートに手を突っ込む。下着だけを器用に取り上げ、にやりと笑うヒカルはとても官能的だった。また、ぞくりと背筋が震える。
 私が心の準備をする暇すら与えられずに、ヒカルはスカートをめくり上げて私の秘所に自身を擦り付けた。ぐちゅりと卑猥な音が聞こえる。パニックと羞恥で死んでしまいそうだった。

「や、ひぃあ、っ…」
「入れるぞ」
「!! ッ――んンあぁっ!!ひ、っや、あ、あ!」

膣内に自身が入り込んできたと同時に、激しく下から突き上げられる。ゆさゆさと揺れる汗ばんだ体からほのかに汗の匂いがして、すごく卑猥な気分になった。
 ヒカルの亀頭が私の膣内のあるところを擦り、私の意識は一気に飛びそうになる。

「ふッやぁああ、あ、あっひぁあ!!」
「! ここ、かッ」
「や、やだ、っそこ、や…んん!」
「っく、う…」

ヒカルの苦しそうな声も聞こえて、もうお互いに限界が近いと知る。
 ぐちゅぐちゅと何度も何度も厭らしい水音が部屋に響いて、私たちをどんどん絶頂へと誘っていく。私がイキそうになったと同時に、ヒカルが私の耳を噛んだ。

「っ〜〜〜!!!!」


 頭が、真っ白になった。
どくんどくんと心臓が音を立てて、私はそのままぐったりとヒカルの上に倒れ込む。そんな私の頭をヒカルは優しく撫でながら、小さな声で「大好きだ」と言ってくれた。私の耳がヒカルの心臓部分に当たって、ヒカルの鼓動も聞こえてくる。どくどくと、私よりも少し早い心音だった。
(ヒカル、ヒカル)これでもかというくらいヒカルに抱きついて、私はそのまま意識を手放そうとした。が、その時、

「なまえ」

まるでさっきの切羽詰まった声とは違う、いつもの余裕たっぷりのヒカルの声だった。

「ヒ、ヒカル…?」

恐る恐るヒカルを見上げると、ヒカルは「もう一回やるぞ」と言わんばかりの顔で私にキスをする。(ヒカルは、本当に、ずるい)私が断れないのも、私がヒカルのことを大好きなのも溺愛してるのも全部知っていて、わがままを言うのだ。だけどそんなヒカルのことが大好きな私も、きっと、ずるいんだろうな。

「今度は、優しくするから」

(優しくしなくても良いよ)
そう言おうと口を開いたけど、それはまたヒカルにキスされたことによりかき消されてしまった。


そのずっと奥まで
(羞恥まで全部、かき消して)



 20140110