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※原作の世界観無視です



「あ、おい!」

 それは、移動教室の時に友達と廊下を歩いていた時のことだった。
突然後ろから聞こえた大声に吃驚して振り向いた友達に釣られて私も後ろを見てみたらそこには見覚えのあるノートを手にしたままこちらを見つめる男の子の姿があって、彼はじっと私を見つめている。手に持っているノートをよく見てみたらそれは私のノートだった。
「あ。ノート」
「これ、落としたぞ」

差し出されたノートを受け取って「ありがとう」とお礼を言うと、彼は少し照れくさそうに笑って、教室へと入って行った。(あ…)彼が入って行ったのは隣のクラスだった。

「ねえ今のって、隣のクラスの人だよね」
一人の友達が私にそう言うと、横からもう一人の子が「今の、青島だよ」と割り込んでくる。
「青島君っていうの?」
私がそう聞いてみると友達は「うん」と頷いて、また歩き出す。私もそれを追いかけるように足を進めて、私は未だにはっきりと覚えている青島君の笑顔を頭に浮かべた。
(青島君…)初めて見る顔だった。隣のクラスなのに今まで気付かなかったなんて驚きだが、すごく良い人そうだったなぁ。
 私は青島君が拾ってくれたノートを見つめて、無意識のうちに微笑んでいた。





 昼休み。私は先ほどの友達と一緒に購買へ向かっていた。
購買に着くともうすでに数人の生徒がパンやらお菓子やらを奪い合っていて、私たちも負けじとそれに参戦する。

(やった!メロンパン…)
私の手の先にはラスト一個のメロンパンが置いてあり、私は急いでそれを手に取ろうとする。しかしそれは叶わずに、あと数センチのところでメロンパンは誰かの手によって奪われてしまった。(あーあ)
悔しいけどまあ良いか、と肩を落として、私はメロンパンの隣にあったジャムパンを手に取る。
すると頭の上から聞き覚えのある声が聞こえた。
「あれっ」
(!!)
 私が驚いて顔を上げると、そこにはやっぱり、青島君の姿があった。

「お前さっきの…」
「っあ、青島君!」
「!」

私は思わず彼の名前を呼んでしまう。青島君は少し驚いたような顔をしたけど、「俺の名前知ってたのか」と言って笑った。さっき見た笑顔と重なって、記憶の中の青島君の笑顔が濃くなる。(やっぱり、優しい笑い方だ…)私も青島君の笑顔に釣られて笑顔になってしまった。

「メロンパン取ろうとしてたのお前だったのか」
「! あっ、それ…」
青島君は持っていたメロンパンを見せつけるようにして顔の横にやった。それを見て私は目を丸くする。どうやらさっきの手は青島君のものだったらしい。

「じゃあこれ、やるよ」
「え?」
「食いたかったんだろ?メロンパン」
「で、でも、それもう青島君が買ったんじゃ…」
「良いって良いって。お前にやるよ」

そう言って青島君は無邪気に笑う。それでも私が「悪いよ」と断ろうとすると青島君は無理矢理私の手を取って、メロンパンを握らせた。私はメロンパンと青島君を何回か交互に見て、しばらく悩んだあと「ありがとう青島君」とお礼を言う。
青島君に何かを渡されるのは、これで二回目だ。

「私も何かお礼したいんだけど…」
「お礼?別に良いよ、気にしなくて」
「でも…」
「じゃあ」
「!」

ふと青島君が楽しそうな笑顔で私を見つめたから、何かと思い私も青島君を見つめ返す。すると青島君は少しだけ照れくさそうに声を小さくして言った。

「お前の名前」
「え?」
「教えてくんね?」

思わぬ質問に少し驚いたけど、すぐに「みょうじなまえだよ」と答える。と、青島君は「みょうじか!」と嬉しそうに何度か私の名前を呼んだ。
「じゃあ、よろしくなっ みょうじ!」
「う、うん!よろしく、青島君」

そうして青島君が購買を去った後、友達が会計を済ませて戻ってきた。

「今の、青島だよね?」
「あ、うん、そうだよ」
「なんか良い感じだったじゃん。仲良くなるの早いねぇ」

けらけらと笑ってそう言う友達に私は少し戸惑いながら、手に持っているメロンパンを見つめて頬を緩ませる。
「青島君、すごく、良い人だから…」

今日のお昼ご飯は、いつもより美味しく食べれそうだ。



 20140108
書いてて気付いたのですが何歳設定だとか中学生なのかそれとも高校生なのかとかそういうの全く考えてませんでした…ご想像にお任せします。
続きます。

タイトルサンクス 花畑心中