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※原作の世界観無視です



 愛しい恋人であるなまえは、僕が勉強をしている時に限って声を掛けてくる。

「ヒカル構って」
初めの頃はどんなにしつこくても返事をしてやっていたが、最近は返事をすると調子に乗ることが分かり僕は無視を決め込んでいるのだ。しかしなまえはそんなのお構い無しに僕の服の裾を引っ張った。その仕草に不覚にも心臓が跳ねる。

「…なまえ、いつも言ってるだろ」
「うん」
「僕は勉強してるんだ」
「知ってる」
「……隣の部屋でアラタ達がゲームしてるぞ」
「知ってる」
「…なまえも行ってきたらどうだ」
「やだ行かない」
「じゃあ静かにしててくれ」
「やだ構って」
(…!)呆れた。なまえのわがままは嫌いじゃないから許してきたが、それでも僕はそこまで気が長いわけじゃあない。その証拠に僕は、なまえをこらしめてやろうと思いなまえの腕を乱暴に引っ張りそのまま床に組み敷いた。
なまえの目が見開かれ、何だこれありえないとでも言いたげな顔をする。そんな顔が僕の加虐心に火を付けた。
(全部…なまえが悪いんだ)僕は悪くない。

「ひ、ヒカル、何してるの」
「構って欲しいんだろ?」

耳元でそう言ってやると、なまえの顔が一気に赤くなる。僕は口角が上がりそうになるのを抑え、なまえの服の中に手を入れるフリをした。

「っひか、る、!?」
「どうした?顔、赤いぞ」
「だ、だってそれは……!」
「僕のせいとでも言いたいのか?」
「!そっ、そうだ、よ!!ばか!ヒカルのばか!」

耳まで真っ赤になって震えながら怒鳴るなまえを、死ぬほど可愛いと思った。僕とは正反対のさらさらなストレートの髪が床に広がってすごく綺麗だ。僕はなまえの髪に触れ、言ってやる。

「触って欲しそうな顔、してるぞ」
そうして僕が勝ち誇るように口角を上げると、今度はなまえが僕のネクタイを引っ張り言った。

「そ、そっちがその気なら、相手してあげても…っい、いい、けど!」
「!」

僕は思わず驚いて体を固める。なまえが嫌だやめろと泣くのを待っていたのに予想外の言葉に一瞬どうして良いか分からなくなったが、理性はいとも簡単に壊れてしまうものだ。僕はネクタイを掴んでいるなまえの手に自分の手を重ねて、笑う。

「後悔しても知らないからな」

 羞恥で今にも泣きそうな顔をしたなまえに、心臓がこれでもかというくらい飛び跳ねた。どくんどくんと体の奥底から響く心臓の音がなまえに聞こえてしまわないかと思ったがどうやらその心配はないらしい。なまえにそんな余裕はなかった。

今度はフリじゃなく、なまえの服の中に手を入れ優しく肌を撫でる。

「ッや、あ!」
いつもより少し高いなまえの声に、こっちまで恥ずかしくなった。しかし手は止まることを知らず、スルスルとわざと力を入れずに小ぶりな膨らみへと手を掛ける。くすぐったそうに身をよじらせたなまえが、か細く「ヒカル」と僕を呼んだ。それさえも僕の気持ちを高ぶらせる。

「ひ、ひか、っんあ、!?あぁやだぁそこ、っひぁ!」
「っ声、抑えないとアラタ達に聞こえるぞ…」
「!? ッ…!」

僕は隣の部屋でゲームをしているアラタ達のことを思い出しなまえにそう言った。するとどうやらなまえもアラタ達のことを忘れていたらしく、思い出したように片手で口を塞ぐ。

「良い子だ」

まるで高熱を出したかのように熱くなったなまえの額にキスを落とし、シャツの中に入れていた手をなまえのズボンに移動させ、柔らかい太股をなぞった。
その瞬間びくりと体を強張らせるなまえ。なまえは普段からだらしなく足を開くことが多いから少し前にハルキに叱られスカートではなくズボンを履くようになったのだ。なまえがズボンを履くようになり残念がっていた輩もいたが。

「ッひ、ひか、る…!」
さっきよりも小さな声で僕の名を呼ぶなまえを心から愛しく思い、その唇に噛み付いた。
「ん!っは、あぁ」
鼻にかかった声がとても卑猥で、こんななまえが見れるのは僕だけだという優越感に浸る。
なまえの口内に舌を入れ、そのままねっとりとかき回した。時折零れるなまえの吐息が頬にかかり、心臓が破裂してしまいそうになる。なまえのせいで僕の頬まで熱くなった。
 そのままキスを続けながら下着の中に手を滑らせようとしたが、やはりスカートとは違いズボンだとどうもやりにくい。いっそのこと脱がしてしまおうかと思いなまえのズボンに指を掛けた時だった。




「ヒカル」
「「!!」」

 コンコンと控えめにドアを叩く音とハルキの声に僕たちは固まる。僕はドアの向こうにいるハルキを睨むようにドアを見つめ、なまえから離れた。ゆっくりと立ち上がると自分の体にまとわりつく熱気に頭が痛くなる。
なまえの服を簡単に整えてから「何だ、ハルキ」とハルキに問いかけた。

「アラタが"ヒカルとなまえも一緒にゲームしよう"とうるさいんだ」

半分呆れたようなハルキの声に、僕はなまえの姿が見えないようにして少しだけドアを開ける。平然とした顔でドアの前に立っていたハルキを見て、思わず睨みつけてやりたくなったが渋々「なまえに勉強を教えてるんだ。だから今は…」と言いかけた時、ハルキが僕だけに聞こえる声で「さっきのは嘘だ」と遮った。

「壁の近くにいたのが俺だけで良かったな」

その意味が分からず眉をしかめると、ハルキは呆れた顔をする。

「聞こえてたぞ」
「!?っ、な…!!」
「そういうわけで、アラタが呼んでたというのは嘘だが続けるなら声を抑えて布団の中にでも潜ってやれ」
「!!!は、ハルキ…!」

言いたいことだけ言って去って行こうとするハルキを慌てて呼び止めると、少しだけ振り返ったハルキの呆れ顔は少しだけ赤くなっていた。何だか申し訳なくなってきて、「あ…ありがとな…それと、このことは誰にも…」と言おうとしたら、ハルキは察したように頷く。

「大丈夫だ。お前たちが付き合っていることは随分前から知っていたから俺は別に気にしてはいない」
「!?」

「そうじゃなくて!!」と叫んでやりたかったが、早く部屋の中にいるなまえに構ってやりたい気持ちで一杯だったため、僕は諦めて肩を落とす。
ハルキはいつの間にか隣の部屋へと入ってしまっていたため、結局、口止めができずに僕はまた部屋へと戻った。



(ヒカル、ハルキは何て言ってたの?)
(何でもない…何でもないからな!)
(?)


 20140104