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※夢主は皆帆と付き合ってます。瞬木がだいぶブラック。性描写有りです。




 明日も練習があるというのに、変な時間に目が覚めてしまった。
時計を見ると深夜の三時で、思わず「うわ」と顔を引きつらせてしまう。すると急に寒気がしてトイレに行きたくなったため部屋を出てトイレへと向かった。

 トイレを済ませ、部屋に戻る前に水を飲んでおこうと思い食堂に行くといつも皆とご飯を食べている場所とは思えない空気だった。真っ暗だから電気を付ければいつもにぎやかなはずのテーブルには何も置いてないし椅子には誰も座ってない。少しだけ怖かったがすぐに棚からコップを取り水を入れた。
 水を飲み干してコップを洗おうと水道の蛇口に、手を伸ばすと
「なまえ…?」
といきなり誰かの声がして驚きのあまり声にならない声を上げてしまう。
コップが手から滑り落ちそうになったのを慌てて阻止し食堂の出入口へ視線を向けるとそこには瞬木君が立っていた。
「っま、瞬木君…!」
どうやら私の反応に彼も相当驚いたようで、すぐさま「大丈夫?」と駆け寄ってくる彼に何だか申し訳なくなる。

「い、いきなり声かけてごめん」
「ううん…だ、大丈夫だよ」
「そっか、良かった…」
お互いに落ち着いてから私は蛇口をひねってコップを洗い始めた。すると瞬木君は今度は少し小さな声で私に問いかける。
「水飲んでたんだ?」
「あ、うん。何か変な時間に喉乾いちゃって」
「ああたまにあるよね。俺もさっきトイレに起きたら食堂の明かり付いてたから何かと思って寄ってみたんだ」
そしたらまさかなまえがいるなんてな、と笑いながら話す瞬木君に少しだけ安心した。さっきまでは一人ぼっちだったから誰かが隣にいるだけで心強い。
 すると私がコップを洗剤で洗おうとした途端に瞬木君が「あ、ちょっと待って」と私の腕を止めてコップを奪う。

「ど、どうしたの?」
「俺も喉乾いちゃったからさ、コップ貸して」
「えっでもそれまだちゃんと洗ってないから新しいの出した方が、」
「良いの良いの」

そう言った瞬木君は濡れたコップに水を注いで飲み始めた。そんな瞬木君を見て、ああこれは間接キスなんじゃないか、と思い顔に熱が溜まる。しかし私には付き合っている彼氏がいるわけで、その彼氏以外の男の子と間接キスするだなんて浮気に入ったりしないだろうか。彼氏である和人の顔が浮かんで私は思わずコップに口を付けている瞬木君の腕を掴んだ。

「っ、え」
焦ったせいで力の加減を忘れてしまい、強めに掴んだ衝撃でコップから水が零れる。その水が瞬木君のTシャツと床を濡らしてしまったため私は慌てて手を離した。
「ご、ごめんなさい…!」
「あ、いや大丈夫だけど…あれ、顔赤いよ?」
「っちが、これはその…」
まさかこのタイミングで顔の赤さを指摘されるとは思っておらず、非常に不自然な形で顔を隠せば瞬木君が薄く笑って「もしかして、」と口を開く。

「間接キス、意識した?」
「ッ、!!」

ぼん。顔がさっきの倍くらい赤くなるのが自分でも分かった。(ま、瞬木君って、そういうの普通に言っちゃう人だったんだ…!?)あまりに衝撃すぎて否定することすら忘れてしまった私を見て、瞬木君は面白そうに笑う。

「はは、なまえってすごい分かりやすいね。焦りすぎ」
「っあ、」
なぜか今度は私が瞬木君に腕を掴まれた。その意味が分からなくてチラリと瞬木君を見れば目が合って、瞬木君は私の腕を掴んだのとは反対の手に持っていたコップを流し台に置く。そしてそのまま私の両腕を掴んだ。
「何でなまえがそんなに間接キスを意識したのか当ててあげるよ」
「!」
ぐい。少し強い力で引き寄せられたかと思いきやそのまま近くの壁に押し付けられる。
「ま、たたぎく…っなに、」
「なまえさ、皆帆と付き合ってるよね?」
「っえ、あ」

こういう質問をされると本当に困る。いかにも「はい」という答えしか受け付けていないと言わんばかりの瞬木君の顔が視界いっぱいに映って、私は否定できずに頷いた。すると瞬木君は笑う。それはいつもの笑顔とは打って変わった、真っ黒い笑顔。悪巧みしているとしか思えないその笑顔に恐怖すら感じた。
「そうだな、付き合ってまだそんなに経ってない。普段は練習尽くしで皆帆のそばには常にと言って良いほど真名部がいるからなかなか二人きりになれないし、キスもできなければデートすらできないって感じかな?」
「っ、そ、それは…」
まさに私と和人の現状を当てられてしまい視線を逸らすと瞬木君は「皆帆ほどじゃないけど、俺にだって推理はできるよ」と冗談っぽく笑う。

「よくあんな奴と付き合ってるね」
「!べ…べつに私は、不満なんて無いし、それに瞬木君が気にするようなことじゃ…」
「それが違うんだよね」

瞬木君はそう言うと私の耳元で囁くように言った。

「なまえが良くても、俺が良くないっていうかさ」
「…え…?」

時折耳に当たる瞬木君の唇がくすぐったくて身をよじっても、彼は耳元で喋るのをやめようとしない。それに今瞬木君が言った言葉の意味が全く分からなかった。どうやらそれが顔に出てしまったのか瞬木君は面白そうに「なまえってすごい鈍感」とまるで私を責めるかのように腕を掴む力を強める。

「いっ、」
「皆帆って前から気に入らなかったんだ。何かにつけて人の内側を探ろうとしてくるし、お陰様で俺の裏側も見破られた。君の彼氏って本当にすごいよ。さすがは探偵の息子だね」
「…な、何が言いたいの……?」
震える声でそう聞くと、瞬木君は真っ黒な笑顔を浮かべて吐き捨てるように言った。

「気に入らないし大嫌いだから、そんな大嫌いなあいつの大好きな人をつまみ食いでもしてみようかと思ってたんだよね」
「っ、!?」
壁に押し付けられる力が強くなり、さすがに苦しくて瞬木君の腕を振りほどくようにして暴れてみてもビクともしない。
 つまみ食い。その言葉の意味はこの私にも理解できた。瞬木君が和人のことを嫌っていたなんて知らなかったし、それに私が和人と付き合っているのを知っている人はいないはず。瞬木君から知らされた数々のことが私を混乱させた。そんな私を瞬木君は嘲笑うように見つめる。

「なまえのことずっと可愛いって思ってたんだ。俺達と同じサッカー初心者にしては上達が早かったから最初は凄いなって思って目を付けてた。けどやっぱ俺も男だからさ、尊敬だなんてそんな感情はどうにでも変わっちゃうんだよね」

ぎりぎりと手首を握りしめられて、痛みと恐怖から涙が滲む。それでも瞬木君は同情のひとつすらしない様子だ。

「好きってのは少し違うけど、まあそれに近いかな。なまえのこと結構見てた。だから気付いたんだよ、なまえと皆帆がやけに仲良くなって練習中もお互いがお互いをよく見つめててどっちかが怪我したらどっちかはすごい心配してどっちかが自分以外の異性と話してたらどっちかが何か悔しそうにそれ見てんの。
何て言うかさ、馬鹿みたいだよな。なまえと話してる時の皆帆の楽しそうな顔ときたら…心の底からなまえのこと横取りしてやろうかと思った。そろそろ思うだけじゃなくて行動に移そうかなって思ってたんだよ。そしたらホラ、ちょうど良いタイミングで二人きりになれた訳だし」
「っは、離して…」
「ねえこれって運命みたいじゃん?」
「違う…!」

私が涙ぐみながら否定した瞬間、バン!と大きな音が耳元で聞こえた。
瞬木君の右手が私の顔のすぐ真横の壁を思いきり叩いたのだ。

「べつに良いだろ。あんな奴捨てちゃえば」
「――!!」

握られていた左腕が解放されたことで、やっと右手の指先まで血液が巡回する。じんじんと左手首が熱くなって、痛みは消えた。しかし片腕が解放されものの未だに掴まれている右腕は痛んだままだ。
 もはや感情なんて感じられない笑顔を見せられて、恐怖に足がすくむ。瞬木君の右手は私の顔の真横にあるわけだから、私は左手だけでも抵抗できるはずなのにそれができない。ついには冷や汗が滲んだ。

「そんなに皆帆が大切?」
「っ…!」
その問いに黙って頷けば、瞬木君は楽しそうに笑って「良いよ。その方が盛り上がるしね」と呟き私の首筋を舐め上げた。
「ンうっ、ひぁ!」
思わず口から零れた甲高い声に瞬木君がニヤリと口角を上げた気がした。次の瞬間、瞬木君が私の首元に唇を寄せて肌を強く吸い上げたため私は吃驚して片手で思いきり瞬木君の胸を押した。すると少しだけ右腕を掴む力が弱まったから私は全力で瞬木君を振りほどき食堂の出入口へと走る。

「ッ――逃がすかっての!!」
必死に出入口へと近づいたその瞬間、怒鳴り声と同時に瞬木君に後ろから思いきり抱きしめられてお互いの足が絡まり派手に転んでしまった。
ドタンと大きな音を立てて転んだと同時に床に押し付けられて逃げられなくなってしまう。

「っはな、し、っやだ、離して!!」
どんなに拒絶しても離してくれない瞬木君を強く睨めば、ドスの効いた低い声で言われた。

「あんまり騒ぐようなら妊娠させるよ?」
「!?」

あまりに生々しいその脅しに何も言えなくなってしまい黙りこめば瞬木君は愉快そうに笑って私の服に手を入れた。
「ひっ、ぁあ」
「はは…良い声じゃん」
厭らしくそう言った瞬木君の言葉に顔が真っ赤になる。
「そういう顔されると、本気で妊娠させたくなるんだけどな…まあ良いや」
「っ、――んん!?」
恐ろしい台詞を零したかと思いきや突然キスされて目を見開けばヌルリと生温かい舌が唇を割って入りこんできたため吃驚して顔を逸らせば両頬を包むように掴まれて顔を固定されてしまう。
ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てながら口内を犯されて涙が零れた。ぼろぼろと止まることの知らない私の涙を見た瞬木君がキスをやめて少しだけ顔を歪める。しかし瞬木君が私のズボンを脱がせて次に自分のズボンに手を掛けた途端、私は顔を青くさせて抵抗した。

「や、だ…嫌、だっ、!!」
ズボンを脱ぐということがどういうことなのか、中学生が一番敏感な年頃だろう。例えそうじゃなくても分かる。今瞬木君がしたことがどんな意味を持つのか。それを考えるだけで恐ろしく怖くて、和人の笑顔が頭に浮かんでは心の中で彼に助けを求めた。しかし男女の力の差もあり抵抗を続けることすらできずに、下半身は下着だけという状態になってしまう。

「そうそう、その顔が見たかったんだよね」
ぎゅっと目を瞑って少しでも恐怖から逃げようとしていたら、パシャっという聞き慣れた機械音が聞こえてハッと目を開けると楽しそうに携帯を操作する瞬木君の姿が目に入る。
(まさか…、)
私の悪い勘はよく当たる方だ。私の絶望に染まる顔をよそに、瞬木君は良い笑顔で
「早く大好きで大切な彼の目に届くと良いね。君の"助けて"って顔」
そう言った。

その言葉は、今の写真を和人の携帯に送信したということを意味するだろう。私が焦って瞬木君の携帯を奪おうとすると私の手を軽快にかわした瞬木君が「俺の携帯を奪うよりも先に、することあるんじゃないの?」と言って私の腰を掴んで引き寄せる。それにすら必死に抵抗するものの瞬木君の手はビクともしない。あまりの悔しさに腹が立ってきて、涙は量を増した。
すると下着を脱いで自身を取り出した瞬木君が私の下着をずらして秘所に自身を擦り付けた。

「っひぃ、ッ!!」
「嫌がる割には随分濡れてるじゃん。なにに興奮した?キス?それとも皆帆に自分の絶望に染まった顔みられたと思って興奮したの?だとしたらなまえって救いようのないド変態だね」
「ちっ、ちが、ぁああ!や、やだ…!!」

先端が膣内に入り込んで、そのまま奥へと突き進む。瞬木君が「狭い」と文句を言っていたけれどそんなの気にもならず、ただ自分に襲いかかる快感に必死に耐えた。

「ッは、気持ち良い、だろ」
ゆっくりと腰を揺らして私にじわじわと快感を与える瞬木君を憎く思った。和人以外の人とこんなことをしている罪悪感と、自分への怒り。それが全部ぐちゃぐちゃに混ざり合って、もう涙と喘ぎ声しか出てこない。

「んン、う、!っひゃ、ぁっあ!!」
「…っホラ、もっとさ…ッ聞かせてよ、」
子宮口の辺りを思いきり擦られてびくんと身体が反応する。と、瞬木君は「へえ…ここが良いんだ、」と真っ黒な笑みを浮かべてその一点ばかりを集中的に責めた。
「あぁあっ!んや、やっやだ…!か、ずッ和人…!!」
「、」

私が和人の名前を呼ぶと、ぴたりと止まった瞬木君の動き。それを不思議に思い瞬木君を見ると、瞬木君は悔しそうに目元を歪めて私を睨んだ。
「っ…なんで…」
「!」
「何で、皆帆なんだよ……!!」
「、え……?」
「俺はこんなに、っなまえのことが好きなのに…!」
ぎゅっと私の肩を強く掴んでそう言った瞬木君を見つめて、私はただ驚きを隠せないでいた。あまりに悲しそうな顔をしている瞬木君に、思わず手が伸びる。ゆっくりと瞬木君の手を握れば、次の瞬間ズンッと思いきり奥を突かれてだらしない声が漏れた。

「ッひぃっあ!!」
「はっ…はは!どう?騙されただろ?なまえって本当にお人好しだよな…だから俺みたいな奴に目付けられるんだよ」
ぐちゅぐちゅと痛いくらいに自身を出し入れされて、意識が遠のいた。視界がだんだんとぼやけてくるのに、瞬木君の罵りはしっかりと耳に入る。ああ、和人に会いたい。抱きしめてほしい。キスだって、和人としたかった。今すぐ和人に助けに来てほしいよ、だけど、(きっと和人は…)

「っ、なまえ、」
「あッ、ぁあっ、や、何…!?」
「ごめ、んっ、でる…!」
「ッ――!!」

(和人は、こんなになってしまった私を見て、)

膣内に射精された感覚だけを残して、私の意識はぷつんと途絶えた。
 完全に意識を失う寸前に、瞬木君が薄く笑って「ごめんな」と言ったのがうっすらと聞こえた気がしたけど、そのごめんの意味なんて分かるはずもなく私はそのまま真っ暗な絶望の闇の中へと沈んでいく。

(きっと、傷つくのだろう)


あいつ捨てたってべつに構いやしないさ
(それでも私は和人から離れたくなんてない)



 20130824