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※性描写有り




 ふたつ上の先輩と付き合って、半年の記念日が近づいていた。
もともとなまえ先輩は俺ではなく巻島さんと付き合っていて、だけど俺はその時からずっとなまえ先輩のことが好きで。しかし、ある日巻島さんとなまえ先輩が別れたと聞いて、それからは毎日のように俺達の練習を見に来ていたなまえ先輩がぱったりと来なくなったのだ。皆心配していたけれど、巻島さんにしつこく別れた理由を聞いたりはしなかった。
二人が別れてからしばらく経ったある日の昼休み、たまたま屋上に行ったらなまえ先輩が一人でベンチに座ってたから俺は無言でその隣に座った。なまえ先輩は何も言わずにただ俯くだけだったけれど、少しずつ俺に心を開いてくれて、ついに口走ってしまった俺の気持ちにも答えてくれたのだ。
 こうして俺達は付き合うことになったのだが、付き合ってから三ヶ月がたつまでずっと部活の皆にも付き合っていることを秘密にしていて、だから恋人らしいことなんてほとんどしてこなかった。手は繋いだけれど、その回数は片手で数えきれるほど。なまえ先輩も俺もそこまで恋愛慣れしていなかったせいか、キスだってまともにしたことがない。よく半年も続いたな、と色んな奴に言われるがそれは俺達が本当に好き同士でいる証拠でもあった。

そんなこんなで俺達の半年の記念日が近づいているわけなのだが、最近やけに巻島さんがなまえ先輩のことを目で追っている気がした。
なまえ先輩はまた俺達の練習を見に来るようになったけど、(本人からも聞いたが)やはり巻島さんとは別れてから気まずいままらしく、練習に来ても巻島さんの姿を見るたびに辛そうな顔をしているなまえ先輩を、俺はもう両手じゃ数えきれないほど見てきた。
しかしそんななまえ先輩とは裏腹に、巻島さんはよくなまえ先輩を目で追い、気にしているようだった。二人が別れた理由は誰も知らない。俺にも、聞く勇気などなかった。

 練習が終わるとなまえ先輩は珍しく校門で待っていて、時間が遅いんだから帰っていても良かったのに、と彼女を心配してそう言うと今日は一緒に帰りたかったの、と返ってきた。

「珍しいですね」
「そ、そうかな?」

控えめに笑う彼女を見て、俺は唇を噛み締めた。
(俺じゃ、なまえ先輩を思いきり笑わせてやることもできない、のか)
たとえば今彼女の隣にいるのが俺ではなく巻島さんだったら、とか。そうだとしたら彼女は控えめな笑みじゃなくて満面の笑みを見せるのだろうか、とか。そんなことばかり考えてしまう。そんなことを考えているせいで少し苛々している俺を心配したのか、なまえ先輩が口を開く。

「今日も、速かったね」
「え?」
「自転車」
「ああ…、ありがとうございます」

そうしてすぐにやって来る沈黙。べつに喧嘩などしたわけでもないのに、この気まずい空気。自分が嫌になった。
なまえ先輩はなにか焦ったような顔で考えごとをしていたから俺もあえて口を開かなかったけれど、しばらくしてからなまえ先輩は立ち止まって俺の腕を掴んだ。その行動に吃驚した俺も立ち止り、なまえ先輩を見つめる。

「…何、ですか?」
「あのさ…わ、私、何かしたかな?」
「、」
「今泉くん、さっきからずっと怒ってて…」

最後まで言い切る前に不安そうな顔を見せて俯いたなまえ先輩に、思わず手が動いた。
掴まれた腕を強引に振り払って、そのままなまえ先輩の肩を掴む。苛々していて加減ができず、痛そうに顔を歪めたなまえ先輩を見て焦ったがそれでも手の力が弱まることはなかった。

「分かってんじゃないですか……」
溜めこんだ不満が、口からこぼれ出す。
「そう思ってんなら、っ…巻島さんなんか、見ないで下さいよ」
「え…?」
焦ったように顔を上げたなまえ先輩の顔を両手で包みこみ、強引にキスをした。
ガチンと歯が当たる音。はじめてなまえ先輩とキスをした。それなのに何とも思わない無感情な自分がいて、怖くなる。力無く俺の胸を叩いたなまえ先輩の小さな手は、かすかに震えていた。
よくわからないままなまえ先輩の口の中に舌を突っ込んでみれば、吃驚したのかなまえ先輩の肩が大きく震えた。

「っい、まいずみく、!?」
明らかに震えた声だった。俺はそれに気付いていたのに、彼女を労わることすらできずに、そのままぐいぐいと彼女の口内を犯していく。
ぐちゅぐちゅと生々しい感覚が舌を襲う。思っていた何倍も温かい彼女の口内が、やけに卑猥だった。高校生なんて大人かと思えばまだまだガキで、キスひとつにここまで反応してしまう下半身。自分で自分に呆れた。しかし彼女に対する怒りは大きくなっていくばかりで、俺はそのまま近くの壁に彼女を押しつけた。

「待っ、今泉くん、っ」
「そんなに、巻島さんが良いんですか」
「っちが、」
「俺じゃ…駄目なんですか…!!」
「、」

彼女の肩を、壊れてしまうほどに強く握りしめて俺は叫ぶ。
ただ、愛してほしかった。彼女がもう終わった男を気にしていることが、悔しかっただけなんだ。今彼女の隣にいるのは俺なのに、巻島さんじゃない、俺なのに。彼女が俺を完全に愛してくれていないことが、辛かった。
「っ好き、です…なまえ先輩、好きです…」
「今泉、くん…」
「俺のことだけ見て下さい…巻島さんじゃない、俺を…!」
「す…好き、好きだよ…」
「!」
弱弱しく俺を抱きしめた彼女に、思わず息が止まる。その震えた手先が、優しくあやすように俺の背中を撫でた。
「ごめんね…不安にさせて。私はちゃんと、今泉くんを好きだよ」
涙声でそう言った彼女の声が俺の頭に痛いくらい響く。(ああ、こんなにも、)俺は彼女を溺れるほどに愛していた。

 だんだんと落ち着いてきた彼女の吐息。俺は彼女を抱きしめたまま、欲情し反り立った下半身を彼女の腰に押し付けた。
「っ、あ、」
びくりと反応する彼女はまさに期待通りの反応で、俺は嬉しくなって彼女の首筋にキスをした。
「…い、今泉く…」
「すみません、なまえ先輩」
「えっ、?」
ぎゅうっと彼女の片手を握り締めて、もう一度深いキスをする。苦しそうに頬を真っ赤に染めた彼女が俺のキスに答えて、もう理性は崩壊寸前だった。どちらにせよ、理性が崩壊するなんて目に見えているけれど。
「ン、はぁっ」
彼女の苦しそうな厭らしい吐息が頬にかかる。それさえもまるで性欲剤のように俺の性欲を高ぶらせた。彼女の手を握っていない方の手で、そっと彼女の服の中を弄る。
「っひぁあ、あ!」
ぎゅっと目を瞑って快感に耐えるその姿が、高校生の俺にはあまりにも刺激的で頭がおかしくなりそうだ。(やば、い)自分でも我慢しているつもりなのに我慢しきれず、彼女の手から荒々しく自分の手を離してそのままスカートの中に滑り込ませた。
先ほどよりもだいぶ苛立ちは消えたけれど、なんだかこのまま彼女を許してしまうのも勿体ない気がして俺は薄く笑いながら彼女を責める。

「ッ巻島さんとも、してたんですか?こういうこと」
「ぁっち、ちがっ…!してな、っ」
下着をどけて割れ目に触れればぬるぬるとした液が溢れ出てきた。それにすら興奮して、割れ目に指を一本だけ入れてみれば呂律の回らない彼女がだらしない声で「だめ」と喘ぐ。だけどそんなの、抵抗にすらなってない。

「巻島さん…ッ上手かった、ですか?俺とするより、気持ち、良かったですか…っ?」
「っふぁ、あっんンンっやぁ、あ、いま、いずみく…っ!」
「、ははッ…なに、言ってるか分かんないですよ、っなまえ先輩」
「んっー!!ッぁああっ、はぁっあ!」
ぐちゅぐちゅと膣内をかき回しながら二本三本と指を増やしていく。その度にぎゅうぎゅう絞めつけてくるなまえ先輩も、真っ赤になって喘ぎまくるなまえ先輩も、死ぬほど可愛くて愛おしくて。(こんなの、こんな顔、巻島さんにも見せてた、とか)そんなことを考えるだけで自分でも怖いくらいの嫉妬心が芽生える。
キツい膣内から指を引き抜いて少し上の陰核に触れれば彼女の体が固まった。あまりの快楽と衝撃に、呼吸すら止まってしまったようだ。

「ここ、ッきもち、いいんですか…?」
「やっ!や、ぁあッんんうっあんっ、や、やめ、ッ」
「やめてほしいならやめますよ」
「ッ、あ」

するりとなまえ先輩の身体から離れて、頭を撫でる。
真っ赤に染まった苦しそうな顔。これも全部、俺がやった。ただそれが嬉しくて、優越感を感じて、どうしようもなく興奮する。(っエロすぎ、)
 肩で呼吸をしながら物足りなさそうな目で俺を見つめてくるなまえ先輩に、今すぐ突っ込んでやりたかった。もっともっと、喘がせたい。乱れさせたい。そんな男なら誰でも持っているであろう欲求が高まって、今すぐにでも、と思ったがそれはそれで勿体ないから少しだけなまえ先輩をいじめることにした。

「…巻島さん、どんな風にしてくれました?」
「っ…そ、そんなこと…」
「答えてくださいよ」

ドンと彼女の両サイドの壁に手をついて、顔を近づける。自分の中にある知識全てを使い、彼女を責め立てた。薄く笑ってみせればなまえ先輩は何かを言いたそうに口を開けたり閉じたりして、じれったい。だけどそんななまえ先輩も可愛くて仕方がなくなる。
ゆっくりと頬を撫で上げると、ぴくぴくと睫毛が震えた。(…可愛い)
まるで熱でもあるかのように熱いなまえ先輩の頬をしばらく撫で続けると、ようやくなまえ先輩が口を開く。

「わ、私はっ…」
「なんですか?」
「今泉くんが、一番だし…そ、それにっ巻島くんとは、もう…終わった、から」
「終わった…ねェ…」

俺は薄くため息を吐き、なまえ先輩の耳元に顔をもっていく。
「その"終わった人"を今になっても引きずってるの、さすがの俺にも分かりますよ」
「ッ…!そ、それはっ…」
明らかに図星をつかれたような顔を見せたなまえ先輩に、また苛立ちが湧きあがる。(やっぱ、俺が一番だなんて、嘘なんだろうな)そんな思考さえも生まれた。

「…ま、巻島くんに…復縁したいって、言われて…」
「、え…?」
「で、でも私が好きなのは、今泉くんだから…!!だからっ、――っひぁ!」
俺はなまえ先輩の耳を口に含み、そのまま言ってやった。

「その話、オーケーしたら許しませんから」
「っ…今泉くん、」
俺の名前を小さく呼んだなまえ先輩の手が俺の下半身をそっと触った。それに吃驚した俺は思わずなまえ先輩の耳から離れて顔を歪める。(まずい、って、)もうすでに崩壊寸前な理性が、なまえ先輩にこんなことをされて、余計に、やばい。
「あたりまえ、だよ…っもう、今泉くんしか、見ないから…私が好きなのは今泉くんだからっ…!!だから、おねがい…っ」
「っなまえせんぱ、い」
「すき、好きっ…大好き、俊輔くん、」
「、」

(なまえ先輩、すみません)
心の中で懺悔して、その小さな身体をもう一度壁に押しつけた。
痛そうに顔を歪めながら、それでも俺を受け入れようとする彼女があまりに可愛くて大切で、俺はズボンのチャックを下ろしなまえ先輩にキスをする。
「っん、う」
「はぁっ…なまえ先輩、いい、ですか…?」
「っいい、よ…」
「俺も、大好きです」
目一杯甘い声でそう言うと、なまえ先輩がぶるりと震えて俺の首に腕を回した。そのままぎゅっと抱きしめられて、俺は彼女の膣内に自身を入れていく。

「ッい…っ、あ!」
痛そうに唇をかみしめるなまえ先輩の顔を見て、俺はハッとする。
「すみま、せっ…」
膣内に押し込む力を弱め、柔らかい髪をなでる。たくさん汗をかいたなまえ先輩の身体が、卑猥な匂いがして俺をそそった。そんなことにすら反応しながら、俺は小さな声でなまえ先輩に問う。
「ッもしかして、…処女、ですか…?」
「っ、ん…」
一度だけ小さく頷いた彼女に、俺は死ぬほど嬉しくなった。
(俺が、一番)
その優越感がまさに絶頂期に達して、俺はそのままゆっくりと彼女の膣内を犯していった。
全部入るまでがすごく大変だったけど、「全部入りましたよ」と告げると柔らかく嬉しそうに笑って「嬉しい」なんて言うものだから俺の理性も完全に壊れてしまって、そのままガツガツと奥まで突き上げた。

「ひぁッあっんんうッ、ぁふああぁッん!!」
「っすみませ、っ出、します…!」
「しゅ、すけくっ…俊輔、くん…!」
ぎゅうっと俺を強く抱きしめてぼろぼろと生理的な涙をこぼすなまえ先輩の頭を掴み、俺はキスをしながら膣内に射精した。
 ゆっくりと自身を引き抜くと白いのと透明な液が混ざってなんとも厭らしくて。なまえ先輩に「顔、真っ赤ですね」と言うと笑いながら「俊輔くんも」と返された。

「…すみません、はじめてなのに、無理させて…」
「大丈夫、だよ…それに、」

俺の手に優しく触れたなまえ先輩の手を強く握ると、嬉しそうにまた笑う。

「俊輔くんも、同じ初めてだったから」
「!……、嬉しいです」
「うん。大好き」
「なまえ先輩、」
「え?っ――きゃっ!」

握った手を強く引っ張ってなまえ先輩を抱き寄せれば、吃驚したように顔を上げて「ばか」と俺を叱ったなまえ先輩にキスを落とした。

「愛してますよ」


さまよう星を捕まえて
(決して離したりなどしない)


 20130720