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※がっつり裏ではないですがネタ的にも注意。レズ表現はあまり入っていないと思いますが滝さんが酷い男です。



 幼馴染のなまえは、最近よく同じクラスの女子と一緒にいる。今までは男子とも平等に接していたなまえがめっきり男子と話さなくなった。どうしてかとなまえに聞いてもなまえは気のせいだと誤魔化す。なまえと同じクラスである宍戸に相談したら考えすぎだろと言われた。そうなのかもしれない。だって俺はなまえのことが好きだから。

「そういえば滝先輩とも話さなくなりましたよね、なまえ先輩」
「日吉はどう思う?」
「どうって?」
「なまえ、俺が思うには絶対おかしいよ」
「確かにおかしいとは俺も思いますけど、別にそこまで気にする事じゃない気もします」
「そうなのかな」
「あくまで俺の考えですけどね」

日吉は意外と勘が良い。それになまえともよく話していたくらいだから日吉もなまえの変化には気づいていた。だけど結局は日吉も宍戸と同じ意見。確かに俺がなまえを好きだから考えすぎなのかもしれないけど。それでも本当に変だった。

「そんなに気になるなら直接問いただしてみたらどうです?」
日吉はそんな風に言うけど、何て問いただせばいいのかよく分からない。前だって気のせいだと誤魔化されたし。

「こういうのって案外難しいよね」
「そんなに気になるんですか?」
「まあね。だって幼馴染だし、ずっと前からなまえと一緒だったから」
「何か自慢にも聞こえますね」
「日吉はなまえのこと好きなの?」
「違いますよ」

 それからしばらく日吉に相談に乗ってもらって、下校時刻になった。俺は教室までなまえを迎えに行こうと思い部室を出る。
なまえとは今でも下校を共にしていて、いつもテニス部の練習が終わるのを教室で待ってくれている。だいたい教室に迎えに行くとスマホを弄っていたり寝ていたり、俺達はそんな普通の幼馴染だった。俺がなまえに想いを寄せるまでは。

「…はあ」
なまえに問いただす言葉を探していたら自然とため息がこぼれた。
問いただすって言っても、何て切り出せばいいのか分からない。たぶん、どう聞いたってまた誤魔化されるだろうし。
 教室に着いて、ガラリとドアを開ける。と、そこで俺の頭は真っ白になった。

「え…?」
視界に飛び込んできたのは、女子同士でキスをしているなまえとその友達。あれは確か、いつもなまえと一緒にいた子だ。なまえとその子は俺に気付き、咄嗟に距離を取る。なまえが小さな声で「萩之介…」と俺の名前を口にした。

「なまえ、何やってんの…?」
「先に帰ってってメール送ったの、見てない?」
「え?あ…」

見てない。
慌てて携帯を取り出して確認した。新着メール一件。ああ本当だ。気付かなかった。

「ごめん、なんか」

気まずくて目を逸らすと、なまえの友達は慌てて鞄を握りしめた。そしてなまえに何か耳打ちして、俺の横を通り過ぎて帰っていく。残された俺となまえの間に長い沈黙が訪れる。するとしばらく黙っていたなまえが口を開いた。

「…前に私が男子と話さないのは何でって聞いてきたよね、萩之介」
「え、ああ…」
「それね、私がレズだからだよ」
「……それ本気で言ってるの?」
「あんなの見といて冗談だって思う?」
「、」

"あんなの"っていうのは、たぶんさっきのキスのことを言ってるんだろうな。俺は携帯をまたポケットにしまってなまえを見る。曇った顔のなまえと目が合った。

「…なまえは、それで良いの?」
「価値観は人それぞれだよ」
「なまえ、」

俺は本気で言ってるんだよ。そう呟いて、なまえに近づいた。安っぽい上履きの音が教室に響く。なまえは俺と目を合わせようとしなかった。俺達の"終わり"が近づいてる気がした。

「幼馴染として、そんななまえは受け入れられない」
「じゃあ受け入れなきゃ良いんじゃないかな」

なまえが乾いた笑いを零す。目が笑っていなかった。

「萩之介もホモになってみれば分かるよ私の気持ち全部」
「……なまえ、俺のこと見て」
「やだ」
「なまえ、」
「合わす顔ないよ」
「、」

こんななまえは見たくなかった。なまえは苦しそうに顔を歪める。それでも俺を見ようとはしなかった。俺はそんななまえに苛立って、なまえの肩を乱暴に掴む。なまえの顔が微かに歪んだ。俺が、乱暴にしたから。

「いっ、痛い、萩ノ介」
「こっち見ろよ」
「、!」
いつもよりも乱暴な口調に驚いたのかなまえがこちらを見る。その隙を見て俺はなまえの唇に自分の唇を押しつけた。と同時になまえの手が俺の胸を必死に押す。それが悔しくて、なまえの後頭部を掴み無理矢理舌を突っ込んだ。

「っんン、はぁっ」
こぼれたなまえの吐息はこれでもかってくらい色っぽかった。俺は自然と口角が上がる。そっと唇を離せば苦しそうに呼吸をして俺を睨むなまえと目が合う。
「さっきの子は良いのに俺は駄目なんだ」
「…さい、てい…」
「、最低?」
吐き捨てるようにぶつけられたその言葉に眉を寄せる。なまえはもう俺を見ようとせずにただ床を睨みつけて黙り込んだ。俺はそんななまえの顎を掬うようにして掴み、無理矢理視線を合わせた。なまえの目が嫌そうに歪む。そんなに俺が嫌いになったのか。

「あの子とは…何回くらいキスしたの?」
「…萩ノ介には関係ないでしょ」
「へぇ、教えてくれないんだ」
「……さっきのが三回目」

――素直に答えるなまえは本当に馬鹿だよね。

「なまえ」
「…なによ」
「好きだよ、ずっと前から」
「!……は?何、言ってんの…」
なまえの瞳が揺れる。動揺、してるんだよね。
 綺麗な髪を解くように撫でれば、また嫌そうに距離を取られる。しかしその距離を無くすようにしてなまえの腕を掴んで引き寄せた。そのまま抱きしめたら、どうなるんだろう。きっと拒絶されるに決まっているけれど。

「…男の俺じゃ、駄目なの?」
「、やめて」
「そんなに女が好き?」
「…関係ない、離して…もう帰ってよ、あんたなんか…!」
なまえが俺の腕を振り払おうとする。そんななまえの体を強く抱きしめた。
「っ!!や、やっやだ…!!離して…いや、離して!!」
そんなに叫んで喉が潰れたらどうするんだ。俺は叫び続けるなまえの口を塞ぐようにしてまたキスをする。なまえの瞳からついに涙が溢れてきた。俺はそんな涙を冷めた目で見つめ、何度も角度を変えて口付ける。

「んっ、んう、っふ…はぁ」
「なまえ…かわいい、よ…」
「や、だ…っん…」
そっと、胸の膨らみに触れてみた。この先どうなろうが、もうきっと俺達は"終わり"だ。それが分かっていれば抵抗なんてない。ただひたすらに、俺はなまえを求める。
 胸に触れた途端、なまえの体がびくん!と面白いくらいに反応した。ぷるぷると震えた肩。恐怖から逃げるようにして必死に首を振っている。そんななまえの姿を見て俺は下半身に熱が溜まるのを感じた。俺、らしくない。だけど全部なまえが悪いんだ。すべてをなまえのせいにして、俺はなまえの服に手を滑り込ませる。

「っひぁ!ん、やっ、やめ…!!」
「静かにしないと人来るよ」
ちょうどお臍のあたりを撫でまわせば簡単に大人しくなる。なまえは大粒の涙をためながら口を塞いだ。まあそんな事しても、出る時は出ちゃうんだよね、声ってのは。

「ん、んっ…は、萩ノ、すけ…っ」
「なまえ、なまえっ…」
小さな体をきつく抱きしめて、俺は微笑み。ふとなまえと目が合えば、笑顔を崩さずに俺はこう言った。

「君に、男を教えてあげる。その女しか感じられない体に、男を染み付けてあげるから」
その時の絶望的ななまえの顔ったら、笑ってしまうくらい興奮した。

(全部、なまえが悪いんだからね)


 20130219