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※ドキサバパロ。何故か木更津が居て、夢主は亮と付き合ってる設定です。


 よく分からない無人島に漂流してしまってから何日くらい経ったんだろう。
 私は六角テニス部のマネージャーであり、そして木更津亮の恋人。六角の一部のメンバーが強化合宿的なものに呼ばれた時、マネージャーである私も参加することになってしまった。いや別にそれは構わないのだけれどまさか遭難?してしまうなんて。しかも無人島に。何だかドラマみたいだ。

 夜のミーティングが終わってから、亮はわざわざ私の居る管理小屋まで「おやすみ」と言いに来た。亮は律儀な方だと思っていたけれど、いつもより冷える夜の中私のロッジまで来てくれるなんて嬉しくて嬉しくて。私達はしばらく話し込んでいた。そうしたら亮がいきなりロッジ裏まで私を引っ張って行って、そのままロッジ独特の木製の壁に押し付ける。何が起きたか分からなくて焦る中、亮の言葉はしっかりと耳に入った。

「いけない事でもしてみようか?」
ハッキリしすぎるくらいストレートな質問に私は思わず顔を真っ赤にして抵抗した。

「り、亮、何言って…!」
「駄目?」
「っ!」

顔の両側に手を置かれて、逃げ場を失う。これでもかというくらい冷える夜なのに、私の体だけが熱く火照っているようだった。それに気付くと同時にすごく恥ずかしくなってきて、俯く。亮は厭らしい手つきで私の頬を撫で上げた。

「…なまえ、こっち見ろよ」
「亮…やっぱり、駄目、」
「駄目じゃないよね」
「え?」

顔を上げたと同時に、口が塞がれた。亮の唇で。

「待っ…、んっ、う」
「なまえ、なまえ…」
「は、っ亮…りょ、う、待って、っん」

冷え切った亮の手が私の服の中に入ってきた途端、羞恥から来るものなのか生理的な涙が溢れた。それを見た亮は珍しく目を丸くて唇と手を離す。

「なまえ、ご、ごめん」
「っだ、大丈夫……」
「嫌だった?」
「ちが、違くて…」
恥ずかしかった、なんて。そう言うのさえも恥ずかしい。
しばらく俯いていると亮が何かを悟ったように笑って、私を抱きしめた。

「…そっか、なまえごめんね。恥ずかしい思いさせて」
亮は子供をあやすようにして私の頭を優しく撫でる。そんな亮の体温がじんわりと伝わってきて、私は涙を拭いて笑う。亮も笑った。

「なまえ、もう大丈夫か?」
「うん」
「じゃあ改めて、おやすみ」
「うん。おやすみ、亮」

亮が小さく足音を立てながら去って行くのを見届けて、私も管理小屋へと戻る。さっきの亮との行為が忘れられなくて、なかなか寝付けなかった。



「なまえって体力ないね」
 翌日の朝、食堂まで走ってきただけで疲れている私を見てクスクスと笑う淳に「うるさい」と反論した。ポーカーフェイスな淳は何を考えているかよく分からなくて、亮とは全然似ていない。だけどそれはきっと私が亮と付き合っているからであって、もしそれが淳だったら逆に亮の考えてることが分からなかったのかな。亮と淳は双子だけど、違う。もちろん二人の仲が良い事に変わりはないのだけれど、いくら顔が似ていても、声が似ていても、行動が似ていても、亮と淳は全然違う。

「今日は亮と一緒じゃないんだ?」
「いつもあんまり一緒じゃないよ」
「クスクス、嘘付け」
「う、嘘じゃないって…」
「昨日の夜さ」
「っ、え…」
「ロッジ裏で亮と何してたの?」

ぴしりと体が固まって動かなくなった。引きつっているであろう私の顔を見て、淳はまた無表情で笑う。

「何で知ってるかは、もちろん見てたからだよ」
「っな、何それ…!」
「クスクス、顔真っ赤だよなまえ」
「あ、赤くなんて…!」
「なってる」
「、…!」

必死に顔を隠そうとする私の腕を掴んで、淳は亮みたいに優しく笑った。そんな淳の顔を見て、私は一瞬目の前にいるのが亮だと錯覚する。だけどすぐにそれは淳だと気付いて顔を逸らした。

「…なまえ?」
「な、なに」
「……今、僕にドキドキしてるでしょ」
「そっそんなわけないでしょ!」
「今の僕、そんなに亮に似てた?」
「…え、?」

淳はまた亮みたいに笑う。淳のその笑顔は好きじゃない。だけど、何故か上手く言葉が出てこなくて黙りこんでいたら後ろから聞きなれた声がした。

「淳、なまえに何してんの」
「あ、亮」
淳のその声と同時に私は勢いよく振り向いた。するとそこには少しばかり不機嫌そうな亮の顔。淳は何もなかったかのように私の腕を離した。だけど今度は亮がその腕を掴んで私を引き寄せる。

「ちょっとなまえをからかってただけだよ」
「人の彼女にちょっかい掛けるなって前にも言っただろ」
「クスクス、ごめんって」

亮は渋々と淳を許して、そのまま私を引っ張るようにしてその場を離れた。亮はさっきから一度も私と目を合わせてくれなくて、それどころか苛々しているように見える。というか、苛々してる。

「り、亮…?」
「あのさ」
「は、はい」
「お前、誰の彼女なんだよ?」
「え?り、亮のだけど…」
「なら淳に構うなよ」
「で、でも別に淳はそういうんじゃなくて、」
「良いから淳と仲良くするな」

亮はそう言い切って私を抱きしめた。亮の香りがいっぱいに広がって、それに包まれて、すごく安心する。だけど亮はいつもより少し怖くて、私は亮の顔を覗き込む。悔しそうな目をした亮が視界一杯に映った。

「亮…」
「淳ばっかり、ずるいだろ…」
「!」

ああ亮は私と淳が話してるのを見てやきもち焼いたんだ。そう分かったと同時に亮は一層強く抱きしめて、そのまま私のスカートを握った。

「散々俺に嫉妬させたんだから、お仕置きが必要だよね」
「待っ、り、亮!朝から、そ、そんな、駄目だってば…!」

そんな私の言葉を聞いて、してやったりみたいな笑顔を浮かべた亮は、自慢げに言った。

「じゃあ夜なら良いんだ?」
「!?」

 ああもう、亮にはかなわない。
なんだかんだ言って亮を溺愛してしまっているでろう自分が恥ずかしくてたまらなかった。

「もう勝手にして…!」
真っ赤になってそう言ってやれば、亮はすごく嬉しそうに笑って私の頬にキスをした。
亮の馬鹿、変態。

「大好きだよ、なまえ」


 20121203
木更津好きすぎて文章おかしくなりました