翌日の昼休み。
いつものように友達をお弁当を広げる前に、ジュースを買いたくて私は自動販売機が置いてある場所まで来ていた。お気に入りのピーチティーを買うためにお財布から120円を出そうとしたのだが、そこであることに気付き唖然と手を止める。
なんと、財布の中に95円しか入っていないのだ。
いつの間にお札を使ってしまったのだろうと首を捻らせてみれば、昨日の夜、財布を整理した時お札を机の上に置きっぱなしにしたことを思い出して思わず肩を落とした。
(95円じゃ何も買えないしなぁ……)
仕方ない、今日はピーチティーを諦めるしかないらしい。私は何とも悔しい思いで一杯になりながらも自販機から目を逸らす。
と、その時だった。
「買わないのか?」
「えっ」
突然後ろから声を掛けられて振り向けば、そこには如月君が立っていた。
「…あ…」
いつから後ろにいたのだろう。というか、偶然会っのもたびっくりだし、彼の方から話しかけてくれたのもびっくりで何も言えずにいると如月君は首を傾げながら自分のお財布を開く。
「あっ、ごめんね、先どうぞ」
「…名字は買わないのか?」
「う、うん。お金足りなくて…」
あはは、と苦笑いを浮かべながらそう言うと如月君は少し間をあけてから
「何を買おうとしてたんだ?」
と聞いてきた。私はその質問の意味をよく理解せずに「ピーチティーだよ」と答えたのだが、その後すぐに聞こえたガコンという音を聞いてやっとその意味を理解する。
「ほら、ピーチティー」
ずい、と無表情でピーチティーを差し出してきた如月君に戸惑いを隠せず私は首を横に振った。
「そんなつもりで言ったんじゃ…」
「でも飲みたかったんだろう?」
「…そうだけど…でも」
「昨日の礼だ」
「れ、礼って……」
少し考えてから、おそらく昨日の女子の先輩とのことを言っているのだろうと納得する。(そんな気にしなくて良いのに…)悪いよと言ってピーチティーをつき返そうと思ったのだが、せっかく買ってくれたのにここで受け取らないと逆に如月君に悪いと思い、私はそっとピーチティーを受け取った。
「あ…ありがとう」
少しだけ近くなった距離に、如月君の手がびくついたのが分かった。
(…如月君、女子苦手なのに) 声を掛けてくれたこととか、わざわざ買ってくれたこととか。何だかそれが嬉しくて、笑ってしまう。
「今日も、委員会頑張ろうね」
「…ああ」
「それじゃあまた、放課後」
私はぎこちなく距離を取り、如月君に手を振った。如月君は小さくだけど頷いてくれたから、初日よりは仲良くなれたのかななんて浮かれてしまう。気付けばあんなに嫌だったはずの仕事が楽しみになっているのだ。予想外すぎて自分でもびっくりした。
その後、ピーチティーを大事に握り締めて教室に戻れば友達が「遅いよー」と頬を膨らませていたため私は慌てて席に座る。他愛もない話をしながらお弁当を食べ、ピーチティーを口に含めば何だか幸せが喉を通って私の中に入ってくるようだった。
20150111
いつものように友達をお弁当を広げる前に、ジュースを買いたくて私は自動販売機が置いてある場所まで来ていた。お気に入りのピーチティーを買うためにお財布から120円を出そうとしたのだが、そこであることに気付き唖然と手を止める。
なんと、財布の中に95円しか入っていないのだ。
いつの間にお札を使ってしまったのだろうと首を捻らせてみれば、昨日の夜、財布を整理した時お札を机の上に置きっぱなしにしたことを思い出して思わず肩を落とした。
(95円じゃ何も買えないしなぁ……)
仕方ない、今日はピーチティーを諦めるしかないらしい。私は何とも悔しい思いで一杯になりながらも自販機から目を逸らす。
と、その時だった。
「買わないのか?」
「えっ」
突然後ろから声を掛けられて振り向けば、そこには如月君が立っていた。
「…あ…」
いつから後ろにいたのだろう。というか、偶然会っのもたびっくりだし、彼の方から話しかけてくれたのもびっくりで何も言えずにいると如月君は首を傾げながら自分のお財布を開く。
「あっ、ごめんね、先どうぞ」
「…名字は買わないのか?」
「う、うん。お金足りなくて…」
あはは、と苦笑いを浮かべながらそう言うと如月君は少し間をあけてから
「何を買おうとしてたんだ?」
と聞いてきた。私はその質問の意味をよく理解せずに「ピーチティーだよ」と答えたのだが、その後すぐに聞こえたガコンという音を聞いてやっとその意味を理解する。
「ほら、ピーチティー」
ずい、と無表情でピーチティーを差し出してきた如月君に戸惑いを隠せず私は首を横に振った。
「そんなつもりで言ったんじゃ…」
「でも飲みたかったんだろう?」
「…そうだけど…でも」
「昨日の礼だ」
「れ、礼って……」
少し考えてから、おそらく昨日の女子の先輩とのことを言っているのだろうと納得する。(そんな気にしなくて良いのに…)悪いよと言ってピーチティーをつき返そうと思ったのだが、せっかく買ってくれたのにここで受け取らないと逆に如月君に悪いと思い、私はそっとピーチティーを受け取った。
「あ…ありがとう」
少しだけ近くなった距離に、如月君の手がびくついたのが分かった。
(…如月君、女子苦手なのに) 声を掛けてくれたこととか、わざわざ買ってくれたこととか。何だかそれが嬉しくて、笑ってしまう。
「今日も、委員会頑張ろうね」
「…ああ」
「それじゃあまた、放課後」
私はぎこちなく距離を取り、如月君に手を振った。如月君は小さくだけど頷いてくれたから、初日よりは仲良くなれたのかななんて浮かれてしまう。気付けばあんなに嫌だったはずの仕事が楽しみになっているのだ。予想外すぎて自分でもびっくりした。
その後、ピーチティーを大事に握り締めて教室に戻れば友達が「遅いよー」と頬を膨らませていたため私は慌てて席に座る。他愛もない話をしながらお弁当を食べ、ピーチティーを口に含めば何だか幸せが喉を通って私の中に入ってくるようだった。
20150111