koiNOtasatutai | ナノ
 一日が流れていくのと同時進行で、私とタダシが別れたという話がジェノックのほぼ全員に流れたらしい。女子の皆は私を心配して声を掛けてくれたが、男子は男子でタダシに問いただしたりしたのかな。そんな疑問が浮かんだが、とにかく今はタダシのことよりカイトのことだ。

「結構待ったんだけど」
「……カ、カイト…」

私が学校を出るとそこにはカイトが立っていた。カイトは私を見るなり不機嫌そうに眉間に皺を寄せる。私が何をしたというんだ。まさか私と一緒に帰るためにずっと待っていたのだろうか。

「…待ってたの?」
「ああそうだよ」

だって恋人だろ、と無表情で言われてときめきなんかこれっぽっちも感じなかった。カイトは一体何がしたいんだと考えてるうちにカイトは私の腕を掴んでそのまま歩き始める。こ、こんなの、もはや嫌がらせだ。(何で私がカイトとこんな…)
このままでは私はカイトのことが嫌いになってしまうかもしれない。いや、嫌いになりかけてる。告白といえないような告白、むしろあれは告白だったのか?まあ仮に告白だとして、オーケーしてしまった私も悪いけれど、それにしても今日のカイトは色々とぶっ飛んでいる。掴まれた腕を見て余計に心配になった。

「あ、あの、カイト」
「何?」
「……タダシ、何か言われてた?」
「!」

するとカイトはピタリと足を止めて、私に背を向けたまま聞き返す。

「何か、って?」
「わ…私と別れたこと、とか…」
「………別に何も」
「、……そっか」

カイトの声がさっきの何倍も不機嫌になったような気がした。タダシよりも少し大きい背中を見つめて、私は何だか切ない気持ちになる。
(…タダシは、もっと…)
タダシとカイトを比べたところで何の意味があるのだという感じだが、それでもやはりそう簡単にタダシは私の頭から消えてくれない。きっと私の目の前にいるのがカイトじゃなくても、タダシと比べてしまっていただろう。

タダシに会いたい。


「…タダシのこと、まだ好きなのかい」
「! え……」

カイトが少しだけ振り向いた。しかし目が合うことはない。居心地の悪い空気に包まれながら私は小さく頷いた。

「そうか」

興味が無さそうにそう返したカイトは、また私の腕を引っ張って歩き出す。気のせいだろうか、さっきよりも歩くペースが遅くなって歩きやすいように感じた。


 20140307