koiNOtasatutai | ナノ
 翌日の朝。
教室に着くと美都先生が、今日のウォータイムは第五小隊のみの出陣だから今のうちに攻略が有利になるよう作戦を立てておいてくれと頼んできた。私ではなくカイトに言うべきではないかとおも思ったが、あいにく教室にいたのが私だけだったため仕方ないかとも思う。私は分かりましたと返事をすると、美都先生は教室から出ていった。
 しばらくすると教室にタダシが入ってきて、私は悩んだ末、美都先生に言われたことをタダシに伝えようを声を掛ける。
(何も考えるな、自分…!)

「タダシ」
「!」
「あのね、さっき美都先生が…」
「名前」
「え、」

タダシは少し戸惑いながら周りを見渡した。しかしすぐに私に視線を戻して、小さな声で、けれどハッキリと言う。

「もう、話しかけないでくれ」

ぴしり。遂に、私の心にヒビが入った。完全に、心を折られてしまった。
(話し…かけるな、って……)
昨日のことが頭に浮かぶ。二人きりで話しているタダシとあの子の姿、カイトの態度、ブンタの言葉。全てが頭の中でぐちゃぐちゃに混ざり合って、何も考えられなくなる。私が唖然と立ち尽くすと、タダシは逃げるようにどこかへ行ってしまった。
朝からこんなダメージを食らうとは思ってもいなかったため、あまりに驚きすぎて涙すら出てこない。

『っきっと、タダシには理由があるんだ!』

(理由って…何だろう)
理由?それはつまり、私を振った理由のこと?それとも、あの子と二人きりで話していた理由?あれ、理由って何だろう。ブンタは何のことを言ってたのだろう。どれのことを言ってたのだろう。駄目だ、頭がうまく働かない。冷静に考えることすらできない。

 これで三回も、タダシに振られてしまった。


 20140506