あれから何日かが経ったが、私とカイトが言葉を交わすことは全くと言っていい程なかった。
カイトは初めて会った時からああなんだ。誰かが困っていても助けようとしない。自分のことは全て自分でやっているカイトは、まさに自分に厳しく他人にも厳しく、な人間で。例えばブンタがメンテナンス費用に困っていてもカイトは何もしないから、私とタダシが何とか支えるしかなかった。今までそうやって私たち第五小隊は成り立ってきたというのに。
(こんなんじゃ、私たちは……)
授業が終わると同時に私は机に顔を伏せた。タダシと別れて多分もう二週間は経っただろう。そしてカイトと恋人という形になってから、二週間。こうして冷静に考えてみるといかに自分が馬鹿で下らないことをしているかが実感できる。
「名前?大丈夫か?」
「! …あ…ブンタ」
「最近ずっとそんな調子だけど……」
ブンタはその続きを言いかけて、少し俯いた。しかしすぐに私を見て、何やら言いにくそうに口を開いた。
「…タダシとのこと、やっぱ、辛い…よな」
「、」
別に、辛いというほどではない、と思う。第五小隊の雰囲気が悪くなっているとはいえ学校には休まず通っていたしウォータイムに支障がでるようなことはなかった。ただやっぱり隣にタダシがいないというのは寂しくて悲しくて、どうしてフラれたのかだって分からないままだし、ああ、やっぱりちょっとだけ、
「…少しだけ……つらいよ」
ブンタは何も言わない代わりに、分厚い唇を噛み締めて私から視線を逸らす。(ああ、もう、最低だ)つくづく自分に呆れてしまった。ブンタにまで暗い顔を見せて、きっと気を遣わせてしまっただろう。
「……ごめん、ブンタ」
「えっ?」
「今の…忘れて良いから」
「、…名前……」
悲しそうな顔のブンタに顔を向けて、私は無理に笑顔を作る。ブンタには迷惑を掛けたくない。ブンタだってメンテナンスのこととかで色々大変で、この前だってシルバークレジットが足りないと悩んでたんだ。これ以上、悩ませたくないしブンタは大切な仲間なんだから笑っていてほしい。これはカイトやタダシにも言えることだけれど。
私が小さく「ブンタ、ありがとね」と言うとブンタは唖然と私を見つめた。
「……ブンタ?」
どうしたのだろうと心配になりブンタにまた声を掛けると、両手をぎゅっと握り締めて顔を上げたブンタと目が合う。何だかとても、辛そうな顔だった。私はますます心配して「ブンタ、大丈夫?」と言おうと口を開く。それと同時にブンタは大きな声で私に言った。
「タ、タダシは…っ…!!」
「、」
タダシ。その名前に私は思わず反応して目を見開く。しかしブンタはその続きを口にせず、固く口を閉じた。
「……ッ、い…いや…何でもない…」
「ぶ、ブン
「それより名前!次、移動だからっ、ほら行くぞ!」
「………う、うん…」
ブンタはそれだけ言うとくるりと私に背を向けて歩き出す。私は、ブンタが言おうとした言葉の続きが気になって仕方なかった。
(タダシ、は………)
タダシがどうかしたのだろうか。"何でもない"と口を閉じたブンタは、ひどく焦っているようにも見えた。考えれば考えるほど謎は深まっていくばかり。私はそんなもやもやを心に残したまま、ブンタと一緒に教室を出た。
20140328
カイトは初めて会った時からああなんだ。誰かが困っていても助けようとしない。自分のことは全て自分でやっているカイトは、まさに自分に厳しく他人にも厳しく、な人間で。例えばブンタがメンテナンス費用に困っていてもカイトは何もしないから、私とタダシが何とか支えるしかなかった。今までそうやって私たち第五小隊は成り立ってきたというのに。
(こんなんじゃ、私たちは……)
授業が終わると同時に私は机に顔を伏せた。タダシと別れて多分もう二週間は経っただろう。そしてカイトと恋人という形になってから、二週間。こうして冷静に考えてみるといかに自分が馬鹿で下らないことをしているかが実感できる。
「名前?大丈夫か?」
「! …あ…ブンタ」
「最近ずっとそんな調子だけど……」
ブンタはその続きを言いかけて、少し俯いた。しかしすぐに私を見て、何やら言いにくそうに口を開いた。
「…タダシとのこと、やっぱ、辛い…よな」
「、」
別に、辛いというほどではない、と思う。第五小隊の雰囲気が悪くなっているとはいえ学校には休まず通っていたしウォータイムに支障がでるようなことはなかった。ただやっぱり隣にタダシがいないというのは寂しくて悲しくて、どうしてフラれたのかだって分からないままだし、ああ、やっぱりちょっとだけ、
「…少しだけ……つらいよ」
ブンタは何も言わない代わりに、分厚い唇を噛み締めて私から視線を逸らす。(ああ、もう、最低だ)つくづく自分に呆れてしまった。ブンタにまで暗い顔を見せて、きっと気を遣わせてしまっただろう。
「……ごめん、ブンタ」
「えっ?」
「今の…忘れて良いから」
「、…名前……」
悲しそうな顔のブンタに顔を向けて、私は無理に笑顔を作る。ブンタには迷惑を掛けたくない。ブンタだってメンテナンスのこととかで色々大変で、この前だってシルバークレジットが足りないと悩んでたんだ。これ以上、悩ませたくないしブンタは大切な仲間なんだから笑っていてほしい。これはカイトやタダシにも言えることだけれど。
私が小さく「ブンタ、ありがとね」と言うとブンタは唖然と私を見つめた。
「……ブンタ?」
どうしたのだろうと心配になりブンタにまた声を掛けると、両手をぎゅっと握り締めて顔を上げたブンタと目が合う。何だかとても、辛そうな顔だった。私はますます心配して「ブンタ、大丈夫?」と言おうと口を開く。それと同時にブンタは大きな声で私に言った。
「タ、タダシは…っ…!!」
「、」
タダシ。その名前に私は思わず反応して目を見開く。しかしブンタはその続きを口にせず、固く口を閉じた。
「……ッ、い…いや…何でもない…」
「ぶ、ブン
「それより名前!次、移動だからっ、ほら行くぞ!」
「………う、うん…」
ブンタはそれだけ言うとくるりと私に背を向けて歩き出す。私は、ブンタが言おうとした言葉の続きが気になって仕方なかった。
(タダシ、は………)
タダシがどうかしたのだろうか。"何でもない"と口を閉じたブンタは、ひどく焦っているようにも見えた。考えれば考えるほど謎は深まっていくばかり。私はそんなもやもやを心に残したまま、ブンタと一緒に教室を出た。
20140328