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 名前の苦しそうな息が頬にかかる。熱くて火傷してしまいそうなその吐息さえ、ひどく愛おしく感じた。
名前の真っ白な肌にひとつふたつと赤く小さな内出血が増えていく。名前は真っ赤になって目に涙を浮かべていた。それでも俺がこの行為をやめないのは、そもそもの原因が名前にあるからだ。

「む、ムラク、首はっ、人に見られるよ…!」
「見られなきゃ意味がないだろう」

名前は人当たりが良く誰にでも笑顔を見せるから、こうでもしないと他の男はいくらでも寄って来てしまう。俺の考えすぎなどではなく、実際に、名前は他の仮想国の何人かから告白を受けていた。だから、名前に恋人がいないとでも思い込んでいる愚かな男達に教えてやらなければいけない。名前は俺だけのものであって、決してお前達のものではない。名前の笑顔は、俺だけのものだと。

またひとつ、名前の首筋に俺の愛を刻んだ。
しかし未だに俺の胸を押し返そうと必死になる名前に呆れた俺は、今度は唇にキスをする。ぬるりと舌を入れてやれば名前はどうやら諦めたらしく俺の背中に手を回して優しく抱きしめた。

「ムラ、ク、」
「っ…お前は、俺だけのものだ」
「わ、かって、るよ…っ」
「分かってるなら、もう、他の男に近づくな…!」

チームワークが重要なこの生活の中で、それは不可能だと俺自身が一番よく分かっている。それでも無理なことを強いようとするのは、俺が嫉妬深いからなのだろう。
名前の全てを俺に注いでほしい。名前の愛も、笑顔も、涙も、怒りだって俺が一つ残らず受け止めてみせる。だから名前にも、同じであってほしかった。俺の全てを受け止めてほしかった。

「好き、だよ、だから…大丈夫、だから、ムラク…っ」

まるで俺の気持ちを全て分かっているかのようなその言葉に、俺は一気に理性をなくす。名前は世界で一番だ。他の誰よりも可愛らしく、そして俺を愛してくれる。そんな名前を俺は強く抱きしめて、今度は制服によって隠された名前の肌にこの行き場のないくらい溢れる愛を全て刻み込んだ。



 20140129
法条ムラク*愛を刻む




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