pleatsskirt | ナノ
 夜になると私たちはご飯を済ませ、並んでソファに腰を掛けた。
今日もまた特に見たい番組がないのにテレビを付けて、特に面白いわけでもないのにテレビを見つめる。画面の向こうでは番組のゲストである俳優やら女優やらお笑い芸人やらがそれなりに面白いトークをぺちゃくちゃと喋り続けていた。彼らのそれは私にはない才能だ。
(あ、そういえば)

「ねえ星原君」
「何だ?」
「星原君の仲間って、どんな人なの?」
「!…仲間、か」

私は少しでも星原君のことを知りたいと思いそんな質問を投げかける。星原君は少し考えるように黙り込んだ後、落ち着いた口調で答えた。

「アラタは真っ直ぐで…後先考えずに無茶をする奴だ」
「へえ、アラタっていうんだ」
「ああ」
「星原君は、そのアラタ君と仲良いの?」
「…べつに仲が良いわけじゃない。仲間だから背中を預けるし、どうしてもという時は助けたり頼ったりするだけだ」
「アラタ君のこと、信頼してるんだね」
「!」

星原君の話を聞いていて素直にそう思った私は、薄く微笑みながらそう言った。しかし星原君は驚いたように私を見つめてから、すぐに目を逸らす。そんな星原君に、私は続けて言った。

「一緒に戦う仲間がいるなんて、羨ましいな」
「……君には、いないのか?」
「うーん。仲の良い友達ならたくさんいるよ。でも、一緒に戦うことができるかって言われたら、わかんない」
「…そうか」
「戦えないかもしれない」
「……僕も最初は、分からなかった」
「え?」

星原君は何か懐かしいことを思い出すかのように柔らかい表情を浮かべて、続ける。

「僕も、信じられるのは仲間じゃなくて自分だけだと思ってたよ」
「…自分、だけ…?」
「でもアラタ達が教えてくれたんだ。仲間を信じるということを」
「!」

そう言った星原君の瞳は、すごくすごく優しく見えた。アラタ君を心から信じて信頼するその目に、私は心が温かくなる。思わず笑みが零れた。私もいつか、そんな仲間が欲しい。心から信頼し合える存在が。
(そして、それが…)

「星原君は、その大切な仲間をちゃんと大切にしないとね」
「…そうだな。君の言う通りだ」

(星原君だったら良いのに、なんて)
今の私は自分が心のどこかでそんなことを考えていることに気付かずにいた。



 20140123