pleatsskirt | ナノ
 私は誰かに特別扱いさえることにあまり慣れていなかった。むしろ、あまり好きではないのだ。私だって他の皆と同じ人間なのに、親が海外にいて一人暮らしをしている身だからと周りの大人たちは私に特別優しくするのだ。そりゃあ親切は嫌なものではない。でも時々、何だか惨めな気分になってしまう。

そんな私は今日もいつものように学校へ行く準備をしていた。トースターにパンを突っ込んで、パンが焼けるのを待つ間に制服に着替える。そうここまではいつも通りだった。そこそこ綺麗なアパートの一室に私は一人で住んでいて、テレビやら時計やら外の騒音だけがリビングに響いている。しかしそこに、いきなりもうひとつの音が加わったのだ。



ドン!



その音はどうやら私の部屋から聞こえたらしく、恐怖を感じた。泥棒だろうか。それとも聞き間違え……いや、それはない。確かに大きな音が聞こえた。
私は焼きあがったパンを置き去りにしてリビングを出る。ひんやりとした廊下を進んでドアノブに手を伸ばす。怖い人じゃありませんようにと願いを込めて、そのまま勢いよくドアを開けた。

「………えっ」

部屋は特に変わりなく、ただの見慣れた部屋。しかしそのど真ん中に、私はあり得ないものを見た。
 それは、おかしな制服らしきものに身を包んだ金髪の少年。少年と言っても私より少しくらい背が高いだろうか。私は声になっていない悲鳴を上げて、一歩二歩と後ろに下がる。(な、なんで、なんで!?)いつの間に私の部屋に、というか私の家に入ったのだろう。状況が理解できない。すると呆気とした顔で黙ったまま私を見つめていた少年が、小さく口を開いた。



「ここは…どこだ?」



私の部屋、ですけど。




 20140119