pleatsskirt | ナノ
 目が覚めるともう外は明るくて、手にはコントローラーが握られていて、しかも隣では私と同じようにコントローラーを握ったヒカル君が静かに眠っていた。

――もしかして。
そう思いバッと時計を見れば、いつもならもうとっくに起きている時間。やっぱりそうだ。ゲームをしたまま寝落ちしてしまったらしい。私が慌てて起き上がった音のせいで目を覚ましたヒカル君が「名前…?」と掠れた声で私を呼ぶ。しかし私は、

「ち、遅刻…!!!」

そう叫んでリビングを飛び出した。









(眠い……眠すぎる…)
やっとの思いで学校に着き、そのまま机にうつ伏せる。ずっしりとした疲れが体に纏っているようだ。長時間ゲームをしていたせいで目も肩も疲れきっている。久しぶりにゲームをする時は短時間にするべきだと学んだ。

「あれ、名字、寝不足か?」
「!」

しばらく一人でうな垂れていると、横から長宮君の声がして私は少し体を起こす。

「うん…ちょっとゲームやりすぎちゃって」
「ゲーム?」
「久しぶりにやってみたんだけど、これが意外と面白くてね、ついつい遅くまでやっちゃってたの」
「へえ…名字がゲームで寝不足なんて、すげー想像つかないな」

長宮君は笑いながらそう言い、私の肩を軽く叩いた。そして何か思い付いたような顔で「一人でやってたのか?」と問い掛けてくる。それに対し私が軽く首を横に振ると、彼はぎこちなく顔を逸らした。

「…じゃあ、あいつと?」
「あいつ?」
「ほら、この前会った…親戚の」
「あ、うん。そうだよ」
「……ふーん」

私が笑顔で頷くと、長宮君はとても面白くなさそうな顔をする。どうして長宮君がそんな顔をするのか分からずに私は少し首を傾げた。

「どうしたの?」
「別に、何でもない」
「…?」

謎は深まるばかりだ。
しかしすぐに長宮君は私に視線を戻して机に手を置く。ずい、と体ごと私に近づいた長宮君は、さっきよりも大きな声で言った。

「ていうかさ!名字今日の放課後空いてるか?」
「え?うん、空いてるけど…」
「じゃあ、ちょっと買い物付き合ってくれよ!」
「買い物…?」

たちまち笑顔になった長宮君を見つめながら、頭にぼんやりとヒカル君のことが浮かぶ。(…ヒカル君、一人でも大丈夫かな……いや、大丈夫か) 幼い子供じゃあるまいし、それに遅くならないように帰れば大丈夫だろうと思い私は快く頷いた。

「うん、いいよ」
「まじ!?サンキュー!」

長宮君の機嫌も戻ったみたいで、満面の笑みを浮かべている。買い物に付き合う相手が私で良いのか疑問に思ったが、長宮君とは最近仲良くなったばかりでまだまだ話したいこともたくさんあるから放課後が楽しみだ。


 20141207