pleatsskirt | ナノ
 平日は長いのに休日は呆気なく終わってしまう。
だからこそ休日が楽しみだとも思うが、それにしてもせめてもう少し休みたい。そんな誰にでもあるような願望を思い浮かべながら、私は制服に着替えていた。

「はぁ……」

 ヒカル君がここに来て一週間くらい経っただろうか。私とヒカル君の距離は縮まったといえば縮まったし、遠のいたといえば遠のいた。やはり中学二年生の男の子と私では価値観というか考え方が思いきり違う上にヒカル君は少し気難しい性格らしい。

身支度を終えてリビングへ行くと、ヒカル君がソファに座って本を読んでいた。

「おはよう、ヒカル君」
「…ああ」

少し素っ気ないなと思いながらも、男の子は皆こんなものなのだろうと一人で勝手に解釈する。朝食をゆっくり食べる時間もないから今日は食パンだけにしよう。そう思いながら食パンの入った袋を探している時だった。

「スカート」
「え?」

いきなり声を掛けられたことに少し吃驚して振り返ると、何とも言えない表情で私のスカートを見つめるヒカル君の視線。何か、変だろうか。
「な、なに?」
「短すぎないか、それ」
「…スカート?」
「だからそうだって言ってる」
「………」
少し間を開けて、私は思わず笑いを零してしまった。
「あはは、何それ、なんかヒカル君お父さんみたいだよ」

しかし笑い飛ばしたのがいけなかったのかヒカル君はたちまち不機嫌そうな顔をする。さすがの私も笑顔の消えた顔でヒカル君を見つめた。

「僕は冗談で言ってるんじゃない」
「え、」
「…君は女だっていう自覚が足りないんじゃないのか」

ヒカル君はそういうと何事もなかったかのように本に視線を戻す。しかし眉間には皺が寄ったままだ。どうして怒っているのか分からないし、何でスカートの丈をヒカル君に指摘されなきゃいけないのかも分からない。

「ヒカル君、何で怒ってるの」
「もう良い。なんでもない」
「……分かった」

私はこれ以上ヒカル君を怒らせないように無言で鞄を握り締め、廊下へと繋がるドアノブを回した。そしてヒカル君の顔には一切目を向けず、一言だけ声を掛ける。

「学校行ってくるね」

返事は帰って来なかったから、もしかしたらヒカル君は相当怒っているのかもしれない。
 私は折っていたスカートを少しだけ元に戻し、家を出た。



 20140721