AIkurushii | ナノ
 それは私がお風呂に入ろうとした時のことだった。
着替えとタオルを持って脱衣所への扉を開けたと同時に後ろから瞬木の声がして振り向けば瞬木はいきなりとんでもないことを言いだしたのだ。

「ねえ森乃ってちんこ小さそうだよな」
「…な、なに言ってんのお前…」

さすがの私もドン引きだぞ。思わず持っていた物を床に落としそうになった。しかし瞬木はあっけらかんとした顔で続ける。
「だって森乃、いつも俺たちとは別で風呂入ってるだろ?ちんこ小さいから恥ずかしいのかなって思ってたんだけど」
「違うよ馬鹿!」
「でも他に考えられないだろ?そんな恥ずかしがることないしきっとキャプテンの方が小さいから大丈夫大丈夫」
そう言ってなぜか私の手をぐいぐいと引っ張る瞬木。
そんな瞬木にびっくりして抵抗するも、これが男女の差というやつなのか瞬木の手はビクともしない。それどころか脱衣所へと私を引っ張ろうとする瞬木に本気で顔が青ざめた。(ま、まさか一緒に入る気なんじゃ…)
「ほ、ほんと違っ…」
するとその瞬間、誰かの手が伸びてきて瞬木の腕を掴んだ。

「君たち何やってるの」
「皆帆…!」
その時の皆帆はかなり救世主に見えて、何となく自分の都合だけで皆帆を苦手意識していた自分を本気で殴りたくなった。
皆帆が現れたことにより少しばかり不機嫌そうな顔になった瞬木は「何しにきたの?」と冷たく言う。

「別に何となく君たちの話し声が聞こえたから来てみたんだ。ほら瞬木君、彼は嫌がってるみたいだし離してあげたら?」
「…へえ…何となく、ねえ」
まるで皆帆に敵意丸出しのように見える瞬木は私から離れて「森乃、無理矢理引っ張ったりしてごめん」と言い申しわけなさそうに笑う。どうにも皆帆に対する態度と私に対する態度の違いに疑問を感じた。

「い、いや大丈夫だよ」
「それなら良かった」
「じゃあ俺、風呂行ってくる!」
「うん行ってらっしゃい」

私は瞬木との会話を終わらせて皆帆に視線をやった。目が合って皆帆が笑う。私も皆帆に笑い返して脱衣所へと入っていく。もう皆帆を苦手意識するのはやめよう。それと、後でちゃんとお礼も言わないと。そんなことを考えながら入る風呂はいつもより気持ち良かった。



 20130917