AIkurushii | ナノ
「全部、すっきりしたね」

 あれから皆と色んな話をした私は、和人の部屋に来ていた。
気付けばもう十一時になっていて、かなり長い時間皆と話していたことに少し驚く。
(…本当に、これからもここに居れるんだ…)
皆との時間はすごく楽しくて温かい。覚悟を決めたなんて自分に言い聞かせていたけど、本当は心のどこかで恐怖を感じてた。こんなに大切な仲間を失うのは、何よりも怖かった。

「…ありがとう、和人、本当にありがとう」

そっと和人の手に自分の手を重ねて、そう呟く。すると和人は私の顔を覗き込んで
「もう目の腫れは治まったかな」
なんて言った。まるですごく高価な貴重品を触るみたいな優しい手つきで頬を撫でられて肩が強張る。

「っ、和人…」
「何だい?」
「くすぐったいよ…」
「はは、ごめんごめん」

和人は笑いながら私から手を離す。フッと離れていった温度に少しだけ悲しくなった。すると、まるでそんな私の気持ちに気付いたかのように和人が私にキスをする。すぐに離れていった和人の顔を唖然と見つめたまま、私は頬が熱くなるのを感じた。

「…か、和人は、ずるいよ…」
「そうかな…僕は、ゆうはもずるいと思うけど」
「それはっ、! んう、う」
まるで私の反論を飲み込むように深いキスをされて、思わず和人の首に腕を回す。ぎゅう、優しく抱きつけば和人の腕が私の腰に回った。体がぴたりとくっついて、鼓動が加速していく。どきどきと、心臓が小さく音を立てていた。

「…ねえ、ゆうは」
「な…なに?」
「好き、だよ」
「っ…し、知ってる、よ」
「ゆうは」
「!」
和人は私の手をすくい取り、手の甲に小さなキスをする。それに吃驚して「ひ、」と小さく声を漏らした私に視線を向けて、和人は真剣な顔で言った。


「あと五年して、僕がもっとちゃんとした男になったら、」
「、」
「僕と結婚して欲しい」


目に映る全てが、とてもきらきら輝いている。
何度も何度も嫌になって、泣きたくなって、あんなに苦しかったのに。今はすごく幸せで、和人が傍にいてくれて。初めて私は誰かにこんなに愛された。和人が、私をこんなに愛してくれた。それが嬉しくて、少しだけくすぐったくて。

「はい。喜んで」

 乾いたはずの涙が、また溢れ出した。


 20140410