AIkurushii | ナノ
 和人が食堂を出て行ってしまってから、私はどうもさくらと楽しく話をする気分じゃなくなってしまった。
まるで一人ぽつんと残されたような孤独感に襲われる。和人は明らかに怒っているように見えた。でもどうして怒ったのかがよく分からない。もしかして私がさくらと楽しく話していたことに嫉妬したのだろうか。(うーん、でもなぁ…)それは何だか和人らしくないと思った。
私はとりあえず和人を追うため食堂を出る。しかしそれはたまたま食堂に入ってきた人物とぶつかってしまったことにより中断された。

「!!ま、瞬木…」
目の前には瞬木が立っていて、私は思わず驚いた顔をしてしまう。すると瞬木は首を傾げながら言った。

「ここに来る途中、皆帆を見かけたんだけど…」
「! う、うん」
「何かスゲー機嫌悪そうだったぞ。森乃、何か知ってる?」
「……知ってるっちゃ…知ってるん、だけど…」
「?」

私の言葉に瞬木はますます不可解な顔をする。しかしここで瞬木を巻き込むわけにもいかないので私はへらへらと笑顔を浮かべて「何でもない!」とその場から立ち去った。






 あれから私は自分の部屋に戻り、ずっとベッドの上で悩み込んでいた。結局、夕飯の時間も過ぎてしまったし楽しみにしていたハンバーグは食べれそうにない。私は深い溜め息を吐いた。何とかして和人が怒っていた理由を探しだそうとしても、何も心当たりがない。
(昨日まではあんなに笑い合えてたのになぁ…)
そんなことを考えながら、私は両親の写真を見つめる。

「…お父さん、お母さん……」

二人は、恋がこんなにも難しいものだとは教えてくれなかった。私はそんな的外れなことを心の中で呟く。何だかすごく和人に会いたい。会いたいのに、会いに行けない。恋はすごく辛いものだ。

 もうすぐお風呂に行く時間だが、和人と話すことはできないだろうか。どうにかして仲直り(?)がしたい。また和人と話したい。会いたい。会って、また、和人の笑顔が見たい。欲望ばかりが膨らんでいった。私はこんなにも和人のことを好きになってしまった。

「……悔しい…」

和人は今何を考えているだろう。私のこと何か考えてないのかもしれない。だとしたらすごく悲しいよ。

 ――ねえ、和人。

声にならない声が喉に詰まって、涙が溢れた。



 20140131