AIkurushii | ナノ
あれから皆帆と2人で食堂に向かい夕食を済ませ、軽いミーティングをした後に皆はぞろぞろといつものようにお風呂へ向かった。私も皆がお風呂を出るのを待ちながら、スケッチブックを取り出して鉛筆を持つ。この前空野さんに貰った造花を早速使おうと思った。

とても女の子らしい可愛い造花だ。空野さんはセンスが良い。
「よし」
私は小さく気合いを入れて、スケッチブックに鉛筆を滑らせた。

しかし、しばらくすると一番最初にお風呂に入った神童が食堂に戻ってきて私に気付く。
「ああ、そういえば森乃は皆の後に入るんだったな」
「うん。皆、まだもう少し掛かりそうか?」
「そうだな…多分そんなに掛からないだろう」
「そっか」

短い会話を終えて私がまた手を動かすと、神童は興味ありげに私の絵を覗いた。そして私の絵を見ると同時に「すごいな…」と小さく声を漏らす。

「あ、ありがとう」
神童に褒められるとどこか照れ臭い。すると神童は何やら思い出し笑いをしながら言った。

「昔、幼馴染と一緒に絵を描いたことがあったんだ」
「! …神童は、幼馴染がいるのか?」
「ああ。そいつはすごく絵が下手なんだよ」

あまりに可笑しそうに笑いを堪える神童を見て、私も釣られて笑ってしまう。

「その幼馴染が描いた絵、見てみたいな」
そう言うと神童も「是非見せてやりたい」と言って笑った。
(そういえば、神童の幼馴染ってどんな人なんだろう…)
そんなことを考えながら、頭の中で勝手に幼馴染を想像していたのだが、神童は意外なことを言いだす。

「そいつは、外見は女みたいなのに中身はやけに男前なんだ」
「えっ…!」

自分の中で作った幼馴染のイメージがガラガラと崩れていく。(が、外見が女みたいって…)一体どういう人なのかよく分からなくなってしまったが、神童の「でも、芯が通っていてすごく良い奴だ」という言葉で、とにかく良い人だということが分かった。

「何か、ちょっと神童に似てるな」
「そ、そうか?」
「うん。あ、いや外見の話じゃなくて……その、神童も、芯が通っててすごく良い奴だから。ほら!類は友を呼ぶって言うだろ?」
「!……はは、やっぱり森乃は面白いな」

神童の笑顔はどこか珍しく、私は思わず驚いてしまう。
(今日の神童は、よく笑うなぁ…)

「それを言うならお前も、すごく良い奴だ」
「そ、そんなことはないと思うけど…ありがとう、神童」

しばらくそんな風に会話が続き、神童がぽつりと「久しぶりに幼馴染に会いたくなったな」とつぶやいた時だった。ぞろぞろと皆がお風呂から戻ってきて、私は慌ててスケッチブックをしまう。(早く私もお風呂に入らなきゃ…)私は神童にお礼を言った後、すぐにお風呂に向かった。


 20140117