sekirara | ナノ
 今日は、図書室に寄るのをやめた。
今朝のことがすごく気がかりで、図書室に行くとまたキルア君に会ってしまう気もして、だからと言って他の場所で時間を潰すのもクロロに会ってしまわないか不安で、結局すぐ帰宅することにした。
 昇降口に着くと、不安からくるものなのか足取りが不安定になり、誰かとぶつかってしまう。

「いてっ」
聞こえた声は妙に子供らしい声だった。それと同時にツンツンした黒髪が視界に映って、私は少し視線を落としてその子に謝る。
「あ、ご、ごめんね」
「ううん平気!俺の方こそよく前見てなくて…って、あれ?」
「ん?」
「あ!やっぱりそうだ!」
彼は私をびしっと指差して明るく笑った。そして、
「この前キルアと一緒にいた先輩!」
そう言う。ああもしかしてこの前キルア君が言ってた「ゴン」って……

「きみもしかして、ゴン君?」
「えっ!なんで俺の名前知ってるの?」
「キルア君が前にゴンって言ってたんだよ。だから君かなって思って」
「そっか!ねえキルア見てない?いっつも一緒に帰ってるんだけど、今日は珍しく先に帰っててって言われたから何かあったのかなって思って待ってるんだけどなかなか来なくて…」
やっぱり先に帰ってた方が良いのかなぁ、と独り言を言いだしたゴン君に私は「キルア君は今日見てないよ」と伝えた。それを聞いたゴン君は「そっかー」と肩を落とす。

「キルア君と仲良いんだね」
「うん!!」
あ、良いお返事。ゴン君は嬉しそうに笑った。

「そういえばキルアね、最近ムカつく奴が図書室にいるって言ってよく図書室に行ってるんだよ」
「え?」
「おかしいよね。ムカつく人が図書室にいるなら自分は行かなきゃいいのに」
「……、そ、そうだよね!あはは」

やっぱり私はキルア君に嫌われてるんだ…。
そう分かった半面、私がいるから図書室に来てることを知って何だか不思議な気持ちになった。またキルア君と話したいなあ、とは思うけど今朝のことを思い出してしまって、やっぱ気まずいなーとため息を零す。
するとゴン君が思いだしたように叫んだ。

「あっ!サトツ先生に呼ばれてたんだった!」
「、サトツ先生って国語の…?」
「そう!おれ国語苦手だからさ…前のテストで赤点とっちゃって」
「そうなんだ…もしかして呼ばれてた、って」
「うん、居残りでテスト直ししろって言われてたんだった」
「なら早く行かなきゃ!」
私がそう言うとゴン君は面倒そうな顔で「そうだね…」と頷いた。ゴン君は急ぎ足で階段を登っていく。

「じゃーね!名前先輩!」
「うん、ばいばい…ってあれ?」
その姿を見送ってから、私は首をかしげた。私、ゴン君に名前教えてないよね…?


(キルアが言ってたんだよ!っての言い忘れちゃったけど…まあいっか!)
(何で私の名前知ってるんだろう…)


 20130328
一応ゴンとも絡ませたいなー!と思って(笑)