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「鳴子のこと好きな奴って、お前の友達じゃなくて、お前だろ」


 チャイムが鳴って授業が終わるとクラスメイトが一斉に騒ぎだす。ガタガタと椅子から立ち上がる音が飛び交い、高校生にもなって教室内で追いかけっこをしだす者もいた。
しかし私は、動けない。

「…え、あ……な、何で…?」

あまりにも不自然な口調でそう問いかければ、今泉くんは教科書やらノートやらを片づけながら答えた。

「何となくだ」

クールすぎる今泉くんに対し、私は焦りまくってしまい今泉くんの言葉を理解するのにすら時間がかかってしまう。あたふたと、必死に否定の言葉を考えたのだが何も浮かんでこない。最終的に出てきた言葉は、

「だ、だれにも…誰にも言わないで!」

だなんて、あっさりと認めてしまった。






 二時間目が始まった途端に私は机に顔を伏せる。
――最悪だ。

(やってしまった、やってしまった…!!)
まさかあんなにもあっさりと肯定してしまうなんて。それに今泉くんは鳴子くんと同じ自転車部だ。きっと二人で話す機会もたくさんあるんだろうし、別に今泉くんを信じていないわけではないが、いつバラされるか分からない。
今泉くんは口が堅そうに見えるし恋バナとかもしなさそうだから大丈夫なんだろうけど、それにしても何だか気まずい。(席、隣だし…)

 ちらりを今泉くんに視線をやってみたが、今泉くんは何ら変わらない態度で授業を受けている。
きっと今泉くんにとってはどうでも良いことなのかもしれない。いや、多分そうだろう。恋愛とか興味なさそうだし。
 そんなことを考えていると今泉くんが小声で「おい」と私に声を掛けてきた。それにびっくりして体を起こせば、こちらをガン見している今泉くんと目が合う。

「! なっ、なに?」
「あ、いや。さっきの話だが…」
「え」

さっきの話。それはつまり私が鳴子くんを好きという話だろう。せっかく落ち着いてきた心臓がまた騒ぎ出す。(ああ、あんまり触れないでほしいのに…!)
 一体何を言われるのかとびくびくしながら今泉くんの言葉を待つ。

「お前、鳴子のこと好きなら一応教えとく」
「?」
「あいつはああ見えて結構女子に人気あるから、モタモタしてるとすぐ誰かに取られるぞ」
「、えっ…」
「それだけだ」

思わぬ言葉に私が唖然としていると、今泉くんはさらに小さな声で続けた。

「協力くらいなら、してやるよ」
「!! あっ、ありがとう!」


(今泉くんは、本当に優しくて良い人だ)


 20131107
短いですごめんなさい