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「ねえゆら」
「何ですか?先輩の名前先輩」

 それはある日の部活でのことだった。さっきから隣でずっと真剣な顔で楽譜を眺めていた先輩の名前先輩がふと顔を上げて私を呼ぶ。どこかそわそわしている先輩の名前先輩に気付き、私はギターを弾いていた手を止めて先輩の名前先輩を見つめた。

「この前の…えっと、今泉くんだったかしら」
「! 今泉くんがどうかしましたか?」

何のことだか分からず首を傾げると、先輩の名前先輩は少しだけ頬を赤くして私から目を逸らす。そして、
「あの子、本当に格好良いのね」
だなんて言うものだから私はちょっと吃驚しつつ先輩の名前先輩を弄るようにして言った。

「もしかして先輩の名前先輩、今泉くんのこと気になるんですか?」
「えっ、う ううん!そういうんじゃないのよ、でも何て言うか…」
「?」
「…やっぱり少し、気になるのかも」

そんな先輩の名前先輩の言葉に私は目を輝かせて「いつからですか!?」やら「まだ"好き"ではないんですか!?」なんてまるでお年頃の中学生みたいな質問攻めをしてしまった。だって、そりゃあ、テンションが上がるに決まってる。大好きで尊敬してる先輩が、私と同じクラスでとても優しい今泉くんのことが気になっているだなんて!想像しただけでこっちまでドキドキしてしまった。

(先輩の名前先輩と今泉くんかぁ…!)
先輩の名前先輩はすらっとしていて美人で大人っぽくて、今泉くんは背が高くて格好良くて人気があって。そんな二人が恋人同士になったらきっとすごくお似合いなんだろうな。そんなことばかりを考えていた私に、先輩の名前先輩はますます顔を赤くしながら言った。

「で、でもまだ確信したわけじゃないし、その…いいなぁって程度だから!」

少し必死になっている先輩の名前先輩が可愛くて私は笑顔で「分かりました!このことは私と先輩だけの秘密ですね」と返す。

「私、応援しますよ」
「ありがとう…ゆらも好きな人ができたら教えてね」
「えっ あ、はい!」

私が大きく頷くと先輩の名前先輩は嬉しそうに笑った。鳴子くんのことは、今はまだ自分の心に秘めておくことにしよう。



 20140318