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▼ 虹村提督の嫁艦、赤司



艦これパロで、虹村提督とケッコンカッコカリした後の艦娘赤ちんの話。赤ちんは戦力強化のため提督に他のキセキ艦とケッコンカッコカリして貰いたいのだけど、虹村提督は単婚主義なので嫌がって夫婦喧嘩するけどすぐ仲直りします。戦闘時に軽量化を求めて制服は着るけど下着はつけないネタは艶漢の羅ら子(可愛い)のパクりです。虹村艦隊の制服は帝光鎮守府の乙女の証!純白のブレザーです。



*****




「提督、艦隊が母港に帰投しました。出撃結果を報告します」
「おう、お疲れさん」

その夜、平時のように提督執務室のドアを叩いた赤司は、上官に敬礼し、すらすらと報告事項を口にした。
机に片肘をつき、じっと赤司の顔を見据えたままそれを聞く虹村は、「以上です」と締め括られた直後にぽつりと呟く。

「なぁ赤司、お前、ちょっと焼けた?」
「え?」
「最近暑ぃ日が続いてるからな。ちょっとこっち来てみろ」

出撃結果や艦隊の整備状況よりも先にそんな指摘を受け、赤司は面食らいながらも虹村の指示通り彼の側へ歩み寄る。
「よし、見せてみろ」
数日前に新調した執務椅子を90度回転させ、隣に立たせた赤司の右腕を軽く引き、手首まで覆う衣服の袖を捲り上げた虹村は、目を細めてまじまじとその肌の色を確認した。
真剣な様子につられるように、赤司も剥き出しになった自身の腕へ視線を落とす。
武装を解除し、提督指定の制服のみを纏った赤司は、執務室を訪問する際は常にきちんとした身なりでいる。だが、出撃時にはどうしても身軽さを求めてブレザーを脱ぎ、シャツ一枚、さらには袖を二の腕あたりまで捲り上げて応戦することが間々ある。
その赤司の腕は、虹村の指摘どおり。肘上を境目として真っ白な部分と、やや小麦色がかった部分の二色に分かれていた。

「おー、マジで焼けてんな。つうか、お前本当はこんなに白かったんだな」
「……気付きませんでした」
「オレも。青峰とか見てると、他の奴らはみんな温室育ちみてぇに見えるし」
「彼の肌色は健康的で、快活な印象がありますね。……あの、提督?」
「んー?」
「……その、…そろそろ袖を戻しても良いでしょうか」

会話を交わしながら、赤司は虹村の手が捲りあげた袖の近くまで這い上がってくることに焦燥を感じた。
いつか、袖をめくって肌の感触を確かめても良いかと問われた際は、自ら「これ以上触ったらセクハラで訴えられる」と行動を中断した。だが、今は。

「何照れてんだよ?べつにいいだろ、腕触るくらい」
「いえ、あの、提督はまだ執務中なのでは……」
「ちょっとくらい休憩させろよ。なぁ赤司、もうちょいこっち寄れ」
「え……?っ!!」

すでにかなり近い距離にいると言うのに、更なる接近を要求する虹村に戸惑った瞬間。
ぐいっと二の腕を強く引かれ、バランスを崩した赤司はそのまま椅子に座る虹村の上に倒れ込む。

「…っ、提督!失礼しまし、」
「……謝るのはこっちだっつーの」
「え?……あ、」

不可抗力とは言え、虹村に体重を掛けてしまったことを詫びながら身を起こそうとした赤司は、しかし背中と腰に回された相手の両腕の拘束力により身動きが取れなくなる。
「て、提督……」
「ワリィな、赤司。限界だ。……よく無傷で還って来てくれたな、赤司。一週間もお前に触れなくて、こっちはかなりキツかったぜ?仕事してても、お前のことばっか考えちまった」
ぎゅう、とさらに強く抱き締められ、赤司はすぐさま抵抗の意思を放棄する。
少し拗ねたような虹村の声が、嘘偽りない本音であることを、彼は知っていた。

やや強張った身体の力を抜き、額を虹村の肩に落とし。
彼に身を委ねた状態で、赤司は小さく笑いながら。

「オレも、航海中はあなたのことばかり考えていました。行く手を遮る敵艦を一隻でも多く沈め、一刻も早く此処へ還れるようにと」

尊敬する上官の腕の中で、すぅ、と息を吐き。
強い安心感に包まれながら、彼は呟く。

「オレは、あなたの秘書艦ですから」


執務室は限りなく甘い空気に満たされた。





虹村艦隊には有能な艦が複数所属している。
極めて稀少な建造率を誇る、かつて「キセキの世代」と呼ばれた艦隊に名を連ねた艦たちが一同に介したこの艦隊の挙げる戦果は非常に高く。どれほど難易度の高い海域でも易々と完全勝利を掴み、全戦全勝を貫く虹村艦隊の知名度は世界中に轟いていた。

その虹村艦隊において、唯一提督とケッコンカッコカリ契約を結んだ秘書艦である赤司は、資源庫で一人秀麗な顔を顰めていた。

「……資源の調達が間に合ってないな」

新造艦の建造や、現存艦の修復や改修。そして、各艦の原動力となる燃油や砲撃用の弾薬は、日々の遠征にて調達し、保存しておくものだ。遠征の指示は無駄のないよう、適確に行っている。
だが、どうしても虹村艦隊の資源は不足しがちになってしまう。その理由は、ひとえに。

「あ!いたいた、赤ち〜ん!補給係の人が探してたよ〜。資源足りないから補充してだって〜」
「紫原…、帰ったのか」
「さっき帰ったところ。オレも燃料弾薬すっからかんだから、早く補給させてね。あ、もうすぐ峰ちんの艦隊も帰投するって言ってたよ〜。なんか軽く砲撃受けたっぽいから、入渠ドッグ予約しといてだって。……赤ちん?」

能天気とも取れる紫原の発言を聞きながら、赤司の表情がみるみるうちに強張る。その変化を感じ取り、紫原は首を傾げて赤司の顔を覗き込み。
「……怒ってる?」
「いや。……困っているだけだ」


大型で高性能な艦は、得てして燃費が悪いものである。
虹村艦隊の主力艦は、一般的な艦に比べ圧倒的な馬力と速力を有しているが、その分資源の消費も莫大であり。ひとたび出撃するごとに、この資源庫から大量の資源が消失してしまうのは、どうしても避けられない。
だが、ここまで補充が間に合わないとなると、艦隊にとって由々しき問題だ。

そろそろ何かしら手を打たねばならない。
だが、主力艦に出撃を控えさせると言うのは、彼らの性格上不可能だろう。
赤司は僚艦である彼らのことを良く知っていた。戦場へ出撃し、華々しい戦果を挙げることこそが自分たちの使命であり、また自由に暴れられることに何よりも愉悦を得る血気盛んな艦たちだ。
口では出撃を面倒だと渋る紫原も、一見安穏とした平和主義者のように見える黒子も、鎮守府に留まり内勤に従事するよりも大海原に出航して艦としての役割を果たすことのほうが活力を得られる。彼らの出撃を制限したならば、間違いなく性根を腐らせてしまうことになるだろう。

かと言って、資源調達の遠征艦隊を増やすわけにもいかない。
保有可能な艦隊数は規定によって決められている。その中で効率的な遠征計画を掲げ、指示を繰り出すことは提督の手腕に掛かっているため、燃費の悪い艦が揃っているからと言って艦隊の保有数を増やすことは出来ない。
虹村は可能な限り燃料消費の少ない艦を遠征任務に送り出し、節約を重んじている。それでも。主力艦の消費分が調達分をはるかに上回る状態は回避出来ないのだ。


残る手はただひとつ。
赤司は、自身の左手に光る装飾品へ視線を落とし、静かに嘆息した。

「……紫原、お前の練度は上限に達していたな」
「んー?まぁ、こんだけ出撃させられてたらね。峰ちんやミドちんもとっくにカンストしてると思うよ〜」
「そうか、…だったら、」

規則に縛られていても、抜け道はきちんと用意されている。
それは微細な変化ではある。だが、このまま資源を食い潰されるよりはよほど有効な手段だ。

「……もう一度、提督に進言してみるよ」


艦隊の誰よりも早くに練度上限に達し、虹村とケッコンカッコカリ契約を結んだ赤司は、そのシステムの恩恵を身を持って知っていた。
規定を超える練度を積めるようになるばかりではない。あらゆる能力が向上し、ささやかながら必要燃料が低下するというメリットがある。
日頃、自身の補給を行っている際に赤司は考えていた。このシステムは、本来は紫原や青峰のような多大な燃料を必要とする大型艦にこそ有益なものなのではないかと。

ケッコンカッコカリを行うために必要な条件は二つある。
ひとつは、艦の練度が規則で定められた上限に到達していること。
そしてもうひとつは。提督のみが取得する事の出来る指輪と書類一式を用意し、書類へのサインを行い、指輪を嵌めることなのだが。




「……だから、前も言っただろ?オレは他の奴とケッコンカッコカリするつもりはねぇって」
「提督、この資源庫の惨状をよく見てください。このままでは保有資源は完全に枯渇し、有事に主力艦が出撃出来ないという最悪なケースが予想されます。一刻も早く、主力艦とのケッコンカッコカリを果たしてください」

その夜、赤司は早速提督の執務室にて提言した。
この提案を突きつけたのは初めてではない。まだ主力艦の練度が上限に達していない時分から、ゆくゆくはすべての主力艦とケッコンカッコカリを行い、艦隊全体の戦力の底上げをして欲しいと伝えたことがあった。
その時は、今ほど保有資源の消費が切迫していたわけではなかったため、提督の「オレはお前一筋なんだよな」の一言で有耶無耶にされてしまったが、今回は赤司も簡単には引き下がれない。

「提督、あなたがオレをとても大切に想って下さっていることは充分に理解しています。ですが、それとこれとは……」
「お前にとってはそうでも、オレにとっては違ぇんだ。赤司、オレがお前に指輪を渡したのは、艦隊の戦力強化のためだけじゃねぇ。結果的にお前は強くなったし、戦果も面白いように獲得出来るようになった。だけどな、赤司、そんなもんは……」
「……そんなもの?」

それまで無言で虹村の言葉を聞いていた赤司が、ひとつの単語を聞き留めてすっと目を細める。
聞き捨てならない。そんな様相で、赤司は虹村に詰め寄った。

「「そんなもの」、とはどういうことですか?提督、我々は戦闘兵器です。敵を殲滅することで獲る戦果は、オレたちにとって何よりもの栄光です。それを、「そんなもの」と言われては、オレたちの存在意義を否定されたも同然でしょう」
「んなことは一言も言ってねぇだろ?それに、オレはお前をそんな風には見ていないってのは前にも言ったはずだ。お前だって、…それを知った上で、オレのプロポーズに応えたんだろうが」
「……重々承知です。しかし提督、オレたちは、」
「オレ「たち」、じゃねぇ。お前一人の話をしてんだよ」

艦として。兵器としてこの世に生を受けた赤司にとっては、虹村と交わした契約はあくまで性能向上の手段でしかない。
左手の薬指に指輪を通すことが、人間社会で言う夫婦の契りと言うことは認識している。虹村が、自分を特別な存在として愛情を注いでくれている。その事実もきちんと理解はしていた。

その上で、赤司は自分以外の艦にも同様の契約を結んで欲しいと切望する。
決して虹村の愛情を軽んじているつもりはない。これはむしろ、虹村を想うゆえの願望だ。

「……オレは、貴方に……、苦心をして欲しくない」
「赤司……?」
「貴方を、艦隊資源を満足に管理出来ない司令官にしたくはない。貴方は、オレの……」


言葉を詰まらせ、目蓋を下ろす。
虹村は、自分のこの感情をただの自己満足だときっぱり切り捨てるかもしれない。
それでも。ひと呼吸つき、赤司は結んだ唇を開く。

「オレの愛する人が、誰からも一目置かれる有能な司令官でいて欲しいと願うのは、間違いですか?」
「……へっ?!」
「オレは貴方とケッコンカッコカリを行った。貴方は、この契約を単なるシステム上のものではなく、人間社会に置ける契約と同様……オレに対する愛情表現だと言ってくれた。つまり、オレは貴方の……妻、のようなものだと認識しています」
「あ、赤司……」
「……妻が、夫の社会的地位向上を願うことは、おかしいことでしょうか」

目尻を釣り上げ、叱責するような表情を浮かべている。
だが、赤司のその白い頬はほのかに赤味が差しており。自らの主張に、羞恥心を感じていることは一目瞭然だった。
本当はこのようなことは言いたくない。言わなくても、分かって欲しかった。
それでも、赤司は虹村の頑固な性質をよく理解していた。だから、意を決して自らの立場を、虹村に愛されているただ一人の存在という状況を、彼の説得に用いる。

「…それに、僚艦が自分と同じこの指輪を身につけていても、オレは何とも思いません。貴方が彼らにそれを与えたところで、そこに戦力強化以外の目的が混じっているなんて少しも感じませんから」
「そ、そりゃ……、そう、だけど」
「……戦闘兵器でもなく、秘書艦でもない。貴方にとってのオレが、それ以外の特別で、不可欠な存在であることを示してくれるのは、こんな貴金属の有無よりも、」

左手を虹村の頬に伸ばし、彼の眼を真っ直ぐに見上げながら。
穏やかに微笑んだ赤司は、伝える。

「こうして貴方の肌に触れ、ぬくもりを与えてくれる。それだけでオレは、誰よりも貴方に愛されている実感を得ることが出来るのです」


旗艦として戦場で指示を送り、自らも緊迫した様相で砲撃を行い数多の敵艦を沈めてきた赤司の姿は、まさに海上の鬼神といった評判は世界中に轟いている。
だが、いま。虹村の前に立ち、触れる相手を慈しむようなやわらかい眼差しを注ぐ赤司と向き合えば、その評判が嘘のようにしか思えない。

虹村だけが知る、赤司の顔。
それに触れることが許されるのも、ただひとり。


「……クソッ、…敵わねぇな」
「……虹村さん?」
「分かったよ……。お前の言うとおり、練度が上限に達した奴から片っ端にケッコンカッコカリしてやる。指輪と書類の用意が出来たら声掛けるから、奴ら連れて来い」
「提督……、ありがとうございます」
「……その代わり、オレの我侭も聞けよ」
「オレに出来ることであれば、何なりと」
「言ったな?そんじゃ……、お前、他の奴に肌見せんのやめろ」

頬に触れたままの赤司の手を取り、その身を抱き寄せ。赤司の耳元で虹村が囁いたのは、思わぬ要求だった。

「肌……ですか?」
「……そりゃ海上で闘ってたら暑ぃだろうけど、出来る限り腕捲るな。シャツのボタンも外すな。お前の肌、……むちゃくちゃ色っぽいんだよ」
「虹村さん……」

そう感じるのは、おそらく虹村以外にはいないだろう。
戦場では味方である僚艦も、敵艦も、目の前の相手を沈めようと躍起になりそれどころではない。
戦闘中でなくても、赤司の肌に性的な印象を持つのは、その肌の質感を知る虹村だけなのだが。

「……分かりました。それでは、戦闘時においてもオレは提督からいただいたこの制服を乱すことなく、勝利を収めて参ります」
「いいの?」
「はい。提督以外の何者にも制服の下を見せないと、誓います。……ただ、ご存知の通り、速力を上げるとこの体は熱を持ち易く、放出する手段は確保しなければなりませんので……、代案を申し上げても?」
「何だよ?」
「下着の着用を放棄することで、通気性確保と軽量化を求めたいのですが」


さらりと出されたその言葉に、赤司の腰に回った虹村の手がピクリと硬直する。
きっちりと着込んだ制服は、折り目一つなく。ボタンもすべて留められ、一寸の隙もない清廉とした佇まいの赤司の姿は、易々とイメージすることが出来る。
だが、その卒のない外装をひと皮捲った瞬間に、自分の眼に触れるであろう清楚とは真逆の光景を思い浮かべ。

「……許す」


ともすれば、提督である虹村以上に提督らしい器を持った赤司は、時に虹村が思い付きもしない奇想天外で大胆な発案をすることがある。
赤司自身はいたって真面目であり、決して虹村の情欲を煽る目的でこうしているわけではないのだが。

「…オレ、お前のそういうとこ、好きだわ」

品行方正な外見、それに適した理知的な性格。
反して、虹村の前でのみ露呈する無垢な思考と、無意識に醸し出される淫靡さ。
ギャップだらけの赤司を、ひどく愛しく思いながら。
欲求を思い出した手を赤司の背中に添わせ、支給した制服の中へ差し入れながら虹村は呟く。

「そんじゃ、今日限りお前の下着は全部没収するからな」
「はい。貴方の手で、脱がせてください」
「誰にも言うなよ?」
「……貴方とオレの、秘密です、ね?」

秘密、という言葉を用いるのが嬉しいと言わんばかりにはにかむ赤司の幼い表情に、虹村の意識は揺さぶられ。
赤司が提示した特有の愛情表現で、愛妻の体を満たし尽くした。










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