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▼ 合法だから、いいんです


※真性ショタ(アツシ萌え)の氷室さんが紫赤が出来てて肉体関係もあるって知って紫赤の少年愛萌えにシフトチェンジする話。




***


オレは、所謂ショタコンだ。
少年時代のタイガにときめき、彼が成長して帰国して可愛くてセクシーな金髪ハニーをゲットして男になったと知った途端に熱が冷めた。
しかしその時オレの前に現れたアツシは、外見も実年齢もそこそこ成長しているが、仕草や言動が非常に幼いangelだった。
考えてもみてくれ。
見た目は大人、中身は少年。Wonderful!素晴らしいじゃないか。
そう、アツシは合法ショタだ。完全なる抜け道だ。

アツシに出会い、脱法ハーブとはこのことを言うのかと思い知らされたよ。



「室ちん、ばかじゃないの?間違ってるよ、色々と」
「どこが間違っているというんだい?」
「日本語…?脱法ハーブってそういうのじゃないっていうか、その名称もう別のに変わってるっていうか、そもそもオレ植物じゃねーし。あと、言うほど幼くもないよ」
「オレも、アツシが植物だなんて思っていないよ。これは日本語で言う比喩表現というものだ。情緒が溢れていていいよね、オレは好きだな」
「…オレの話聞いてる?」

今日も今日とて、アツシは可愛い。
拗ねたように尖らせた唇も。呆れてため息をつきながらも、スナック菓子の袋に手を突っ込むことをやめないその頑なさも。
微おこで居つつも、好きな物を手放さない。本能的欲求に忠実なアツシは、見事にオレのハートを狙って打ち抜いてくる。

「So Cute…。アツシ、君は最高だよ」
「意味わかんない、キモイ、福ちん、この人どっかやって」
「悪ぃな、紫原。それ無理」
「なんで〜?福ちん三年生でしょ?」
「主将に頼めよ。あいつも無理だと思うけど」
「あいつこそ本能に忠実な野生のゴリラアル。氷室、どうアルか?」
「うーん…、オレはアツシに満たされているから、充分だよ」
「劉ちんのが素直で可愛くない?福ちんのウソ、頭からぜんぶ信じ込んじゃってさ。室ちん、劉ちんにしなよ」
「ウソ…?ウソって何アルか?!福井、ワタシに何のウソを教えたアルか?!」
「お、教えてねぇよ…、オイ紫原、いつまでも菓子食ってねぇで、そろそろ練習再開すっぞ」

アツシ以上にオレのハートを揺さぶる存在はいないのに、いつもアツシはオレの関心を他人に向けさせようとする。恥ずかしがり屋さんだね、そんなところも可愛いよ。
福井先輩にお菓子の袋を奪われて、不機嫌そうに目を細めるその顔も可愛い。
まだ食べてる途中なのに、と不服を訴えながらも、立ち上がって練習に戻れば結構まじめに没頭する天邪鬼なところも可愛い。
もう何していても、何を言っても、アツシがアツシならすべてが愛おしく思える今日この頃。


「そーだ、室ちん。オレ幼くないって証拠教えてあげよっか」
「何だい?!アツシのことなら何でも知りたいよ!」
練習後、タオルで汗を拭いながら休憩時の話題を自ら蒸し返してきたアツシに嬉々として聞き返す。そんなオレの勢いにアツシはやや引いたような素振りを見せ、それでも、教えてくれた。

「オレ、童貞じゃないから」
「……What?」
「中学ん時、同じ人としょっちゅうエロいことしてたし。だから室ちん、もうオレのこと変な目で見んのやめてよね」
「……」


これは、聞き捨てならない。
アツシに、恋人が?そんなことは初耳だ。
現在のアツシに、特定の恋人が存在する気配は一切なかった。
高身長・バスケ部エース・成績もそこそこ優秀のアツシが女性に持て囃されないなんてことはなく、アツシ目当てに練習試合を観戦しに来る女性も大勢いることは知っている。
アツシ自身、女性が苦手ということもなく、差し入れのお菓子を貰うときは「ありがと〜」と天使のようにまろやかな笑顔で受け取るし、彼女たちを邪険に扱う様子も目撃したことはない。

特にアツシは年上の女性からの人気が絶大で、主将や福井先輩を通してアツシの連絡先を入手しようとする3年生は後を絶たないのだと聞いたことがある。
主将はよく、「何で紫原ばかりモテるんじゃ〜!」と泣いていたが、無理はない。アツシののんびりとした口調やお菓子を頬張る仕草の愛くるしさは、彼女たちの母性本能をくすぐる特大要素であり、見ているだけでも荒んだハートが癒される。さらに試合中のアツシには気迫溢れるワイルドな魅力が備わるから、女性の支持が高まるのはごく自然なことなのだ。

実際にアツシが女性から愛の告白を受けている場面を目撃したことが何度かある。
その時、アツシは躊躇なく彼女たちに平等な回答をしていた。
ごめん、オレいまそういうの興味ないから。と。
それは、恋愛以上にバスケが楽しいといういかにも性に目覚める前の少年らしく愛らしい理由なのだとばかり思っていた。
だが、もしかしたら、アツシは。

「…その子のことが、今でも好きなのかい?」
「は?…べつに、そういうわけじゃねーし。ただ、オレは室ちんが思ってるほどガキじゃないって…」
「だけど、その子以外の女の子と恋愛する気はないんだね?だったら、アツシは…」
「違ぇし!べつに、オレ、赤ちんのことなんて今はそんなに、……あ」
「……赤ちん?」

はからずも、アツシの中学時代の、そして本人は否定しているがおそらく現在も進行形で想い続けている相手のことを知ることになった。
また、その名を口走った際の、アツシの表情が。
今まで目にしたこともない、憂いと切なさを含んだ、哀切漂う可憐なものだったので、オレの「赤ちん」への興味は多大に膨れ上がった。





「赤ちん?あー、あれだろ、帝光中の元主将。紫原のチームメイトだった奴」
「チームメイト…。ということは、「赤ちん」は男の子…なんですね?」
「そりゃそーだ。…ほら、これ。この赤司征十郎ってやつだよ」

その日の晩、オレは福井先輩の部屋へ足を向け、アツシの恋愛相手についての情報収集を行った。
幸い、福井先輩の部屋には月バスのバックナンバーが揃っていて、その中から帝光中特集記事が掲載された雑誌を渡される。
開かれたページには、帝光中の制服を着用してインタビューを受ける品の良さそうな少年の写真があった。

「この子が、赤司くんか…」
「こいつスゲェんだぜ?インタビューで趣味が乗馬とか言ってんだよ」
「乗馬…」
「金持ちのボンボンみてぇだな。それに比べて、見ろよこれ」
「…!!!Oh my God…!!な、なんだこれはっ!?」
「お、おい、食いつき過ぎだって…」

福井先輩がページを捲って示したところに突如現れたangel画像に、オレは思わず我を忘れて取り乱す。
そこには赤司くんと同じ制服を着用したangelが大量のお菓子を抱え、そのひとつを頬張るMiracleShotがあった。やはり、中学時代のアツシも今と変わらずSo Cute!

「おい、氷室…、お前、赤司征十郎について知りたかったんじゃねーの?」
「は…っ!す、すいません、あまりにもアツシがキュートだったもので…。…それで、赤司くんはどこの高校へ進学したんですか?」
「京都の洛山っつーとこ。何回も全国優勝してる、超強豪校だぜ」
「京都…、それはまた、ずいぶんと…」

昼間、アツシが垣間見せた切なげな表情を思いだす。
そうか、現在彼らは遠距離恋愛に身を置いている。
中学時代は毎日欠かさず顔を合わせていたのに、離れ離れになったいまは会いたいと願っても簡単には叶えることが出来ない。

いくら、想い続けていたとしても。
もう、諦めなければいけないと、アツシも割り切ろうとしていたのかもしれない。

「アツシ…」
「で、何だよ?この赤司がどーしたっての?」
何も知らない福井先輩に問われ、アツシの切ない心境を思い遣りながらも答える。
「彼は、純粋無垢な少年だったアツシに男としての快楽をレクチャーした、First Loveの相手です」
「……ハァ?」
「とろけるように甘く、狂おしいほど激しく、未成熟な幼い心身を欲望と愛情で満たし、悦楽に溺れる甘美で不確かな日々を共有した…、アツシの、初めての、」
「お、オイちょっと待て!何言ってんだよ、紫原って赤司とデキてたの?!」
「下衆な言い方はやめてください。彼らの恋はそんなcheapなものではなく…、性に目覚めたばかりの少年同士による、限りなく尊い、至上の交わりなんです!!!」


強く拳を握り締め、力説する。
目を閉じれば、帝光中の制服を身に纏ったまだあどけなさの残るアツシと赤司くんが身を寄せ合い、お互いを慈しむ笑みを浮かべながら手を繋ぐシーンがいとも容易くオレの脳裏に浮かんだ。

それは放課後の、夕陽が差し込む教室で。
グラウンドからは部活に励む生徒たちの声が聞こえる。その微かなBGMを背に、彼らは無言で見詰め合う。
(敦…、僕たちも、もうすぐ卒業だね)
中学生のわりに落ち着いた、耳障りの良い声で赤司くんがぽつりと呟く。
(卒業したら、僕たちは離れ離れになってしまう。だから、その前に、…思い出が、欲しいんだ)
(赤ちん…?)
(……僕を、抱いてくれないか?)

恥ずかしそうに睫毛を伏せた赤司くんの頬が、彼の髪と同様の朱色に染まっているのは、夕陽のせいだけじゃない。
震えた指で、赤司くんは自分の制服に手を掛ける。
その健気な誘惑に、アツシの鼓動は急速に波打ち。
シャツのボタンを一つずつ外す赤司くんの手に、自身の手を重ね合わせ、再び見詰め合った二人はどちらからともなく唇を重ね合わせた。



「そして露になった赤司くんの白い肌へぎこちない愛撫を施し、ゆっくりとアツシの右手が赤司くんの下腹部へ…」
「もっ、もういい!!やめろ!!変な想像しちまうだろ?!」
「いえ、これは実際にあった出来事なんです。よく聞いて下さい、福井先輩。アツシに触れられた赤司くんは、秀麗な眉を僅かに寄せ、「ん…ッ」と微かな嬌声を、」
「やめろ!!マジやめて!!」

半泣きになって耳を塞ぐ福井先輩には、この至上の交わりが理解できないのだろうか。
これほどまでに美しく、刹那的で愛おしい。どんな官能小説よりも濃厚な愛の交歓を。

アツシはすでに知っている。
あの幼いアツシが。My Sweet angelが!

「…氷室、変な気起こすんじゃねぇぞ?」
「はい?」
恍惚とした気分に浸っていると、両手を耳から外した福井先輩が不穏な目つきでオレを睨みながら言ってきた。
「だから、紫原がその、他の奴とヤったことがあるからって…、何つーの?自分も、とか、そういうのは…」
「Ha!!何を言ってるんですか福井先輩」
「何って…、お前、いかにも暴走しそうな顔してたぞ今」
「オレがあのangelに手を出す?そんなこと、出来るわけないでしょう?…アツシは、今も彼を愛しているのですから」
「いや、なんかお前、それとこれとは別とか言ってやらかしそう…」
「オレが萌えているのは赤司くんの体を知りながらも決して損なわれる事の無いアツシのイノセンスです。それを汚す人間がいるならば、オレは全力でKill You」
「?!」
「アツシの貞操は守ってみせますよ」

晴れやかな気持ちでそう宣言し、オレのスピーチに言葉もなく震えながら心底感銘する福井先輩が何か言う前に例の月バスのバックナンバーを懐に仕舞いこんでそこから退室する。
そう。オレの使命は、アツシの穢れなき純粋な恋心を肉欲にまみれた不純な輩から守り抜くことだ。
アツシによこしまな想いを抱く者が現れたのならば、即訴訟。いや、殺す。
そうして心身共に清く一途なままのアツシを、赤司くんの元へ送り出すんだ。
3年に及ぶ遠距離恋愛を経ても尚色褪せることのないアツシの無垢で熱い想いのすべてを、赤司くんの決して大柄とは言えない体になみなみと注ぎ込み。

二人は、晴れて再び結ばれることとなる。







「…なんでそんな話になってんの…」

翌日の部活前に部室で福井先輩からオレとの会話の一部始終を聞かされたらしいアツシは、愕然としながらそう呟いた。
「信じらんない、勝手に変な妄想しないでよ…。っていうか、途中のエピソード、何あれ?オレら、そんな恥ずかしいことしてないし、赤ちんも震えたりとか絶対しねーし」
「そ、そうなのかい?!だったらどんな風にしてたんだ?!アツシ、kwsk!!」
「べつに、普通だし…。…っていうか、何で福ちんに喋んの?室ちんサイアク」
「それはすまないと思ってるよ。つい、気持ちが高ぶって…。反省している」
「分かればいいけど。…でもホント、オレも赤ちんも、そんな本気じゃなかったから」

アツシの機嫌を損ねてしまった自覚はあるので、部室にストックしてあったいくつかのお菓子をお詫びとして差し出すと、わりとすんなり許してくれたアツシはそれらのお菓子を早速貪りながら赤司くんとの初体験について教えてくれた。

「部室で他の人たちと普通にエロ話してたら赤ちんが入ってきて、よせばいいのに話してた奴の一人が赤ちんに、お前経験あんの?って聞くじゃん。で、赤ちんが経験者のはずねーじゃんって思ってたら、あっさりあるよって言うのあの人。だからオレ気になって、後で赤ちんと二人のときに確かめてみたら嘘だよって白状してさ。でも試してみたいとは思ってるって言ってて、オレもしてみたかったし、ちょっとずつ触り合ったりしてるうちに、だんだん、赤ちんとなら、出来そうって思ってしたんだよね。ほんと、全然軽い気持ちでやっただけだし。赤ちん度胸あるからさー、最後までしてもいい?って聞いたら、来るなら来いって、平然としてんの。ほんと、怖いものナシで可愛くない人なんだよね。……ただ、」

アツシは、過去の体験を思い出して切なげなため息をつくわけでもなく、また照れている素振りも一切見せずに赤裸々にそれを語る。
だけどこの時、一瞬言葉を詰まらせたアツシが次に小声で呟いた内容が。

「…してる時、ときどきヤな気分になったことはあったよ。赤ちんって、オレ以外にもこんな簡単にやらせたりしてんのかなって。気持ちいーには気持ちいーけど、その時の気分思いだすとやっぱ、あんまいい思い出じゃないなって思うし」
「あ、アツシ!それって…」
「…違ぇし。べつに、赤ちんのこと好きなわけじゃねーし。ほんとだよ。…福ちんには言わないでよ」

唇を尖らせながらやや不機嫌そうにそう言うアツシが意地を張っているのは、アツシ萌えのオレでなくても照れているのだと一目瞭然だろう。
オレが想像した二人の関係も、あながち大きく外れているわけではない。その確信を得たオレは。

「誰にも言わないよ。だからアツシ、約束してくれ」
「は?なに?」
「諦めるな!!死ぬ気で挑めばどうにかなる!!考えるな、感じろ!!!きっと赤司くんも、再びアツシと触れ合える日を心待ちにしているに違いない!!だから、それまで…」
「…室ちん、ほんと、頼むからオレの話ちゃんと聞いてよ…」

うんざりとした表情で髪を掻き上げながらそうぼやいたアツシは、だけどその直後。
「…ほんとにそうならいいけどね」
自嘲めいた笑みを一瞬だけ浮かべたアツシに、少年から大人へと移り変わるその瞬間を垣間見せられた気がして、オレはまた悶えた。アツシ is Great!!











タイミングが良いのか悪いのか、その夜、紫原の携帯に渦中の人物から一本の着信が入った。
「げ、」と苦い表情を浮かべながらも、着信音は比較的長く鳴り続いている。ひと呼吸置いて通話ボタンを押した紫原の耳に、懐かしい声が届いた。

「こんな時間にすまない、敦。休んでいたのか?」
「…まだ寝てないけど。…どーしたの、急に」
「大した用事は無いけれど、…調子はどうかと思ってね」
「……なにそれ。電話代の無駄遣いじゃん。…べつに、普通だよ。赤ちんは?」

昼間、氷室からとてつもなく脚色された自分たちの過去話を聞かされた紫原は、複雑な気持ちで現在の赤司の生活を聞く。目を閉じれば、中学時代に毎日見ていた赤司の顔が、脳裏にありありと浮かんできた。
電話越しの声はその当時と同じく、落ち着いて淡々としている。直接対面しながら会話をしていても感情の見え難い赤司との電話越しの会話は、紫原の胸にかすかな不安を与えた。

「…ねぇ、赤ちん」
「何だ?」
「あのさ、オレ、中学ん時、赤ちんのこと…」

芽生えた不安が、焦りに変わる。
中学時代、体を重ねる体験を果たした二人ではあったが、いわゆる交際の約束を交わした記憶は紫原にはない。当然、好意を伝える言葉も。
いまさら、こんなことを伝えても仕方がないと紫原は首を振る。そして、「やっぱいい」と繋げた直後。紫原の言葉を聞くために黙っていた赤司が、その声を発した。

「僕は今でも、お前以外の人間に対して情欲を感じたことはないよ」

上品で、清廉で。性的な要素を見出すことに罪悪感すら覚えさせる赤司が、言葉を濁すこともなくはっきりと自身の性嗜好を紫原に示す。
純粋な好意に等しいものと錯覚してしまいそうな、その本心を。

「お前も、僕と同じ気持ちであれば良いと思ってしまう」
「……ふぅん、そぉ」
「…長くなってしまったね。そろそろ休んだほうがいい。…おやすみ、敦」
「……うん、おやすみ。……あのさ、赤ちん」

声を、もう少し聞いていたかった。
その切迫した想いから紫原は必死に話題を探す。
「あの、オレ、」
「…また後で聞かせてくれないか?」
「え?」
「時間が空いたときにでも、連絡してくれ。僕はいつでもお前からの連絡を待ってるよ」



おやすみ、ともう一度囁かれ、通話が終了する。
しばらく携帯を耳に当てたまま身動げずにいた紫原は、それから。

「…室ちんの言ってたとおりかも」

不本意ながら、アメリカ帰りのおかしな先輩の誇大妄想も捨てたものではないと感じてしまった。





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